過去のオピニオン・エッセイ
エッセイ
同盟国」である日米とは異なる「同志国」という枠組みです。すでにオーストラリアやイギリス、フランスと国内演習場を使い訓練を実施してきました。
さて、本連載でも触れた「ダルマ・ガーディアン」という訓練を覚えていらっしゃるでしょうか。これは日印間による共同訓練です。
きっかけとなったのが、2016年8月にアフリカ開発会議(ケニア)にて、安倍晋三内閣総理大臣が提唱した「自由で開かれたインド太平洋戦略」です。これ以降、2017年より日本やインド、ASEAN諸国、さらにはNATO加盟国もこの言葉を用いるようになりました。
日本とインドは、これを機に防衛交流を深めていくことを決め、2018年にインド国内にて第1回目となる「ダルマ・ガーディアン18」が開催されました。
翌2019年にもインドで開催され、私は現地へと赴き取材を行いました。順調な滑り出しのよう見えましたが、新型コロナウイルスの影響を受け、2020年は中止に。翌年になんとか3回目が開催されましたが、報道公開はありませんでした。
そして、西暦上は2023年となってしまいましたが、2月17日から3月2日に渡り、饗庭野演習場(滋賀県)において、4回目となる「ダルマ・ガーディアン22」が行わました。年をまたいでしまいましたが、22年度計画訓練ということで、“22”という数字を残しました
陸幕からの公式発表を見ても、インド陸軍が来日してくるなど、この目で見るまで信じられませんでした。
日本側から第3師団第36普通科連隊(伊丹駐屯地)の190人、インド側から第5歩兵大隊の約40人が参加しました。
2月28日、待望の報道公開日を迎えました。「ダルマ・ガーディアン」は、第1回目から変わらず「対テロに係る各種事態」を想定した内容となっています。今回饗庭野演習場が選ばれたのも同地にある市街地戦闘訓練場を使うためです。
この日の想定は、テロリストが潜伏する街の制圧でした。無人の街の上空をUH―1Jが偵察のため低空で飛びぬけていきます。
まずはインド陸軍が姿を現しました。建物の壁に寄り添いながら慎重に歩みを進めます。そして扉を開け、一気に室内へと突入。空包射撃の音がこだまします。
陸自側も別の建物へと突入していきます。こうして日印それぞれ指定された建物を制圧していきます。双方の隊員たちの体には交戦装置バトラーが装着されていました。銃撃戦の末被弾したかどうかが明確に示されます。その結果負傷や死亡といった判定が下されるなど、実戦的な訓練を行うことができます。
1時間にも満たない公開でしたが、想像以上に日印間の連携がとれていたのに驚きました。
目標は毎年実施していくこと。ならば、今年の秋頃にいきなり「ダルマ・ガーディアン23」の開催が告げられるかもしれません。
日印の信頼関係の構築、戦術技量の向上は確実に図られているようです。