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過去のオピニオン・エッセイ

オピニオン

「死灰複燃(しかい ふくねん)」能勢伸之氏 フジテレビジョン報道局上席解説担当役兼LIVE NEWS it日曜 「日曜安全保障」MC」
2024-01-01
防衛協会会報第165号(6.1.1)掲載
   ウクライナにロシアが“特別軍事作戦”と称して侵攻を開始してから、まもなく2年。戦場では、予想外のことが起きる。2023年10月、「ウクライナの

ドローンがロシア軍のT―62戦車を撃破した」(米Forbes2023/11/19付)という。T―62と言えば、1961年頃に旧ソ連で制式化、翌年量産が開始された115ミリ滑腔砲を主砲とする4人乗り戦車であり、あまりに旧式である故か、ミリタリーバランス2022年版では、ロシア軍の現役装備とは記述されていなかった。それが現役に復帰し、ウクライナに投入されていたのである。現在のロシアの主力戦車、T―72、T―64T―80 、T―90が3人乗りで125ミリ滑腔砲を搭載していることを考えると、乗員の配置や主砲弾に、共通性はない。ロシアは、なぜ、時代遅れで、補給面でも問題がある戦車を復帰させ、投入したのか。ロシアはウクライナ侵攻での戦車の損失が1000両を超えたため、T―62数百両を倉庫から引っ張り出して主砲弾などの問題を抱えながら現役復帰させたのだ。ロシアが北朝鮮に接近した一因に、115ミリ砲弾の不足も指摘されている。北朝鮮の天馬号戦車が115ミリ砲なので、115ミリ砲弾も豊富とみられているのだ。一部のT―62は、ほぼ、現役時のまま前線に送られたが、暗視装置を元の型よりは新型1PN96MT―02に換装し、T―62M Obr.2022として現役復帰。さらに、爆発反応装甲を追加したT―62MV Obr.2022というタイプもあった。「T―62 Obr.2022型戦車は…戦線の後方で確認される例が最近増えている」(米Forbes2023/11/19付)という。前線に送られていないとすれば、T―62 Obr.2022をロシア軍はどのように使用しているのだろうか。「T―62の155ミリ主砲をめいっぱい高仰角にすれば、8km先まで射程に入る。それだけ距離が稼げれば、ウクライナ軍の戦車やミサイルによる反撃も避けられるかもしれなかった…が、T―62戦車は、殺到したウクライナのドローンに破壊された」(米Forbes 2023/11/19付)という。そして、2023年9月頃から、ロシア地上軍の映像に1950年代のT―55型戦車が映っていたという(米Forbes 2023/ 9 / 11付)。T―55型戦車は、100ミリ砲のD―10Tを主砲とするが、「映像には、D―10T100ミリ主砲の上部にⅬ―2G赤外線ライトを装備した初期型T―55もあった。…赤外線ライトとそれが照らす目標は、T―55砲手のアクティブ赤外線照準器で数百メートル先からでも見えるが、このライトは赤外線光学機器を備えた敵軍からも見える」(米Forbes 2023/ 9 / 11付)という。つまり、夜間戦闘で、ロシア軍のⅬ―2G赤外線ライト装備のT―55 戦車は、ウクライナ軍から丸見えなのに、パッシブ赤外線センサーを装備したウクライナ軍の車両は、ロシア軍の戦車に見つかりにくい。

 では、敵に見つかりやすく、旧式な主砲を備えたT―55型戦車で、ロシア軍は、どのように戦かうのか。「乗員を1人だけにして、接触線から数マイル後方に配置し、即席の榴弾砲として使用している」(米Forbes 2023/ 9 / 11付)というのだ。乗員が1人だけでは、移動が難しく、主砲弾の装填と発射を実施出来るのか。これも、古い装備による、ある種の戦術開発と言えるのだろうか。英国国防省は、11月19日、「ロシアはソ連時代のM―55 MYSTIC B 高高度偵察機の運航再開を検討しているようだ」と分析した。M―55MYSTIC B 高高度偵察機は1982年に初飛行、「高度7万フィート(21336m)以上の高度で飛行できる」が、1987年に4機で生産を終了。近年では軍用偵察機ではなく「地球科学研究機」として使用されていた。最近、ロシアの軍用偵察ポッドを搭載。ロシア軍は、情報、監視、目標捕捉および偵察 (ISTAR) 能力を確立できていなかったので、英国防省は「M―55 がウクライナに対するロシアのISTAR能力を強化するために最前線に戻るのは現実的だ」と説明。「高高度で作動すれば、センサーはかなりの距離を見通せる。ロシア領空からウクライナに対する任務を遂行できる」というのである。つまり、ロシアは、科学観測という別用途に使われていた高高度偵察機を軍事目的に再使用するかも、というのである。

 もう一方のウクライナ軍も今昔の装備が混じる軍隊だ。対空システムでは、2023年5月にロシアのMIG―31K作戦機から発射された「Kh―47M2キンジャール空中発射極超音速弾道ミサイル」を迎撃した、恐らくはPAC―3MSE迎撃ミサイルを発射したPAC―3地上配備型迎撃システムや、ノルウエーのNASAMS対空システム、ドイツのIRIS―T短距離防空システム、仏伊共同開発のSAMP/T迎撃ミサイル・システムといった西側でも新鋭のシステムを配備している。一方で、ウクライナ軍は、統一前の旧西ドイツで開発さ

れ、1973年から配備されたドイツのゲパルト対空自走砲や米国で1980年代から生産が始まったAN/TWQ―1アヴェンジャー自走対空ミサイル/機関砲を配備している。

 これだけ、複雑、かつゲパルトのように古い装備をも、一元的な防空網に組み込むことは可能なのだろうか。2023年9月、ウクライナ軍は、ロシア軍の夜間自爆ドローン攻撃をゲパルトで迎え撃っている映像を公開した。つまり、半世紀前の対空自走砲が現代のドローンに有効と暗喩したのだ。退役した装備をただ、潰すのではなく、保管し、新たな使い方が生み出されるのは、興味深いところではある。

 


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