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過去のオピニオン・エッセイ

エッセイ

空自と印空軍との戦闘機共同訓練「ビィーア・ガーディアン23」 軍事フォトジャーナリスト 菊池雅之氏
2023-07-01
防衛協会会報第163号(5.7.1)掲載

2023年1発目の大きな取材となったのが、航空自衛隊とインド空軍による共同訓練「ヴィーア・ガーディアン23」でした。私はこの訓練を待ち焦がれていました。なぜならば、インド空軍のSu―MKIが来日するからです。

 遡ると、2019年にデリーで行われた「第1回日印外務・防衛閣僚会合2+2」にて、同訓練の実施が決まりました。それも日本国内で行われるとあって大きな話題となりました。SNS上では、「どんな機体が来日するのだろう?」と早くも大きな賑わいを見せていましたが、新型コロナウイルス感染症が世界を襲い、日印共同訓練は延期となってしまいました。そこからしばし、この話は途絶えますが、2022年末、空幕は、「翌年実施する」と発表しました。訓練期間は1月16日から26日まで、場所は百里基地となりました。

 来日するのは、西部航空コマンド第220飛行隊の4機のSu―30です。私はこれまで同機をインドで取材したことはありましたが、日本国内で見られるとなれば話は別。信じられない思いと早く見たいとの思いで期待に心踊りました。

 年が明け、1月10日、いよいよSu―30が日本に到着することに。その様子を取材すべく私は百里基地にいました。これまでの期待とは裏腹に少しがっかりした気持ちでエプロンに立っていました。というのも、百里基地の滑走路は、北北東から南南西に向けて斜めに走り、基地施設はその東側にあります。ということは、午後から夕方にかけて基地側から滑走路を見ると、完全に逆光となってしまうのです。滑走路の西側に位置する茨城空港側からであれば、到着するSu―30を順光で撮影できます。ですから、取材申請をせず、そちらに行こうか迷いましたが、パイロットたちにも一目会いたい。悩みに悩んだ末、私は逆光側に立つことを決めました。

 インド空軍御一行は、タイとフィリピンを経由しました。最初に、整備員や資機材、荷物を搭載したC―17が着陸しました。空中給油機IⅬ―78も一緒に行動していましたが、こちらは那覇基地に降りました。

ちょうど14時を回る頃、ランウェイ03目掛けて、着陸態勢に入ったSu―30が見えてきました。想像通り逆光で機体は真っ黒でした。1機目が、ドラッグシュートを放ち着陸すると、すぐに後続機も見えてきました。こうして等間隔で次々と着陸し、出迎えの隊員たちが待つエプロン地区へとゆっくりとやって来ました。消防車による放水アーチをくぐり、その巨体が目の前に。コックピットの位置が高いので、後席からの眺めはよさそうです。整列する出迎えの空自隊員らも「大きいなぁ」と驚いていました。

4機は定められた場所に駐機すると、機体からパイロットたちが次々と降りてきました。ロシア製の戦闘機が日本の地を踏むのはこれが初めてとなります。1976年9月6日に函館空港へと亡命のためにとやって来たソ連防空軍のMIG―25を除けば…。

こうして訓練は始まりました。私も数日間百里基地へと通い、外柵沿いから訓練のために離着陸する日印戦闘機を撮影しました。順光で撮影するならば、やはり基地の外がベストポイントです。航空機マニアの砲列に混ざり、私も夢中でSu―30を追いかけました。

第7航空団司令の石村尚久空将補(当時:右)とインド空軍展開部隊指揮官のロヒト・カピール空軍大佐
   エプロン地区で印空軍機を出迎える自衛隊員
    共同訓練中のF―2(左下)とSu―30MKI
             ロシア製Su―30MKIの雄姿
                   インド初の女性戦闘機パイロット
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