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過去のオピニオン・エッセイ

エッセイ

環太平洋合同演習「リムパック」の取材  軍事フォトジャーナリスト 菊池雅之氏
2022-01-01
                            防衛協会会報第157号(4.1.1)
 私は、1996年より、毎回取材している演習があります。それが環太平洋合同演習「リムパック」です。一番最近実施されたのが2020年に開催された「リムパック」となりますが、コロナ禍の中、日本を出ることが出来ず、初めて泣く泣く取材を諦めました。

 取材する目的はたくさんあります。やはり、日米の動きだけでなく、オーストラリアや韓国、最近では欧州や東南アジアからの参加国もあり、世界の海 軍情勢を勉強するにはまたとない貴重な機会であるのが大きな理由です。

 もう一つ、それが、演習期間中に行われる実弾射撃訓練を撮影するためです。

 日本人観光客が多く訪れるオアフ島の北にカウアイ島があります。この島の西岸のバーキングサンズから海側一帯に、太平洋ミサイル射場があります。英語表記では、Pacific Missile Range Facilityとなり、そ

れぞれの頭文字を取りPMRFと略して呼びます。ここでは対空・対水上、対潜とありとあらゆるミサイル等の射撃が出来ます。ただ撃つだけでなく、評価が出来るように、海中をはじめ、上空にもセンサーが張り巡らされており、訓練終了後、貴重なデータを得ることが出来ます。

 そもそも日本近海では、ロングレンジでのミサイル射撃は行えないので、海自にとって、PMRFで射撃を行うことは非常に重要です。

 私は、カメラマンとして、ここでの射撃を撮影することも重要であり、これも取材理由の一つです。

 毎回、護衛艦に乗艦取材し、PMRFを目指します。パールハーバーから一緒に出港する時もあれば、ヘリですでにPMRFにいる護衛艦へと渡る方法などマチマチです。ただ、ヘリの場合、気を付けなければならないのは、射撃直前に空域が封鎖されてしまうのです。

 それは2010年の事。ヒッカム基地からオーストラリア海軍のヘリで、護衛艦「あけぼの」へと行き、随伴する護衛艦「あたご」による対空ミサイルSM―2の射撃を取材する手はずとなっていました。です

が、いくら待っても、オーストラリア海軍のヘリが来ません…。結局1時間遅れ。何とか離陸し、まもなくPMRF到着というタイミングで、航空管制より、「射撃が始まるので入れない」とのお達しがありました。結局、私が「あけぼの」に降り立った時には、「あたご」の射撃は終了しており、何をしに、ここまで来たのか…とむなしい気分となりました。

 そんなこともありましたが、毎回迫力のある写真が撮れるので、欠かさず行くことになるのです。ただ

し、ミサイルは1発、良くて2発撃つか撃たないか。撃ったとしても、1~2秒には蒼空に消えてしまうので、シャッターチャンスも2、3カット。かなり分の悪い勝負です。です

が、このギャンブル性が楽しくもあります。幸運なことに、今のところ大失敗はありません。そして、たどり着けなかった悪夢も2010年以来ありません。

2022年のリムパックでもしっかりと写真に収めてきたいと思います!

             リムパック2004【護衛艦「あさかぜ」対空ミサイルSM-1射撃】
                 リムパック2006【護衛艦「ひえい」短SAM射撃】
            リムパック2014【護衛艦「きりしま」54口径127ミリ速射砲射撃】
                2016リムパック【護衛艦「ひゅうが」ESSM射撃】
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