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しかし、北朝鮮の朝鮮労働党機関紙、労働新聞(2021年1月9日付)に掲載された「朝鮮労働党第8回大会における、敬愛する金正恩同志の報告について」という記事において、北朝鮮は「原子力潜水艦の設計研究が終わって最終審査段階にある」ことや「中長距離巡航ミサイルをはじめとする先進的な核戦術兵器も相次いで開発」等といった記述の他に、「新型弾道ロケット(ミサイル)に適用する極超音速滑空飛行戦闘部をはじめとする各種の戦闘的使命の弾頭開発研究を終え試作に入るための準備をしている」「近く、極超音速滑空飛行戦闘部を開発導入するという課題」と「極超音速滑空戦闘部」についての言及が2度もあり、新型弾道ミサイル用に「試作に入る」と記述していた。
極超音速とは、前述のようにマッハ5を超える速度のことだ。
弾道ミサイルの再突入体/弾頭は、ロケット・ブースターから切り離された後、弾道軌道(=楕円軌道)を描いて飛ぶのに対し、極超音速滑空体は、ロケット・ブースターから切り離された後、マッハ5以上の極超音速で、弾道ミサイルの再突入体/弾頭より、低く、機動しながら飛ぶ。米政府会計検査院資料(GAO、SCIENCE & TECH SPOTLIGHT:HYPERSONIC WEAPONS 2019年9月版)によれば、「飛翔高度は約40~96キロメートルと予想される」ことになる。
これによって、西側の弾道ミサイルを躱すことをめざす。一般論だが、極超音速滑空体は滑空するので、弾道ミサイルと同じブースターを使っているなら、弾道ミサイルの再突入体/弾頭より、水平距離では遠くに届くことになる。
北朝鮮が実際に、「極超音速滑空戦闘部」を搭載する「新型弾道ミサイル」を試作するかどうかは、この原稿を書いている時点では不明だが、それが実現するなら、日本の安全保障上も無視できることではないだろう。
そして、北朝鮮の「新型弾道ロケット(ミサイル)」という観点から、無視できないことがあった。
2021年1月14日夜、朝鮮労働党大会を記念するパレードが平壌で開かれ
た。このパレードでは、例えば、日本の自衛隊の軽装甲機動車にそっくりな四輪駆動車や、米国のM1128ストライカーMGSに似た装輪自走砲、米軍のM1戦車に似た戦車などが披露されたが、このパレードでさらに目を引いたのは、各種のミサイルだった。
今回のパレードでも、不規則軌道で飛翔できるKN―23ミサイル・システムも登場した。KN―23の移動式発射機は、ミサイルを2発搭載し、片側4輪だ。しかし、パレードでは、KN―23の他に、片側5輪で、明らかにKN―23の移動式発射機より、大きな移動式発射機があった。この移動式発射機には、KN―23を大型化したようなミサイル2発が搭載されていた(以下、新型ミサイル、と記述)。KN―23は、四枚の翼に可動部があり、噴射口には4枚のベーンが突き出していて、発射直後にも機動し、また、噴射終了後も、ミサイルが滑空する中で、翼の可動部を使って機動すると見られ、2019年7月には、到達高度50キロメートルで、飛距離600キロメートルを記録した不規則軌道ミサイルである。2021年1月のパレードで登場した、この“新型ミサイル”もKN―23のように機動する不規則機動ミサイルかもしれない。
今後、試射が行われるなら、ミサイルの回転、機動の観測を目的にしているのか、このミサイルの前端部は、白黒に塗り分けられていた。
ミサイルが大型化していれば、➀ミサイルのペイロードの大型化・重量化、②射程延長の可能性も考えられるだろう。
射程が700キロメートルよりさらに長くなるならば、日本に届く“不規則機動ミサイル”となる可能性があるかもしれない。
また、北朝鮮は、4連装のキャニスターを搭載したミサイル・システムも披露したが、これが、地対空ミサイル・システムなのか、それとも、ロシアのイスカンデル複合体で使用される9M728巡航ミサイルに似た巡航ミサイルなのかは、筆者には不明だ。