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過去のオピニオン・エッセイ

オピニオン

「綿裏包針」能勢伸之氏 フジテレビジョン報道局上席解説担当役兼LIVE NEWS it日曜 「日曜安全保障」MC」
2020-07-01
                           防衛協会会報第151号(2.7.1)掲載
 令和2年の日本周辺の海は安寧と言えるのだろうか。4月11日と28日、中国海軍の空母、遼寧を中心とする艦隊が沖縄本島と宮古島間を、いうなれば、沖縄県を縦断するように通過。さらに、5月8日、尖閣諸島沖で、中国海警局の船が、日本の領海に侵入し、付近で操業していた日本の漁船に接近、追い回した。 日本政府は、中国側に抗議したが、中国外務部は、漁船は中国の領海で違法に操業していたものだ、と日本側を批判した。
 こうした中、4月27日、『安平』という名前の公船が、台湾で進水した。安平(CG601)が所属するのは、台湾・海巡署。日本で言えば、海上保安庁、米国の沿岸警備隊にあたる組織だ。安平は、海巡署の600トン型巡視船の一番船。台湾・海巡には、3000トン級や2000トン級、1800トン級も保有する海巡の中で、600トン級は、際立つ大きさというわけではない。ただ、安平をはじめとする600トン型は、海巡としては、初のカタマラン船型を採用。波の高さが6~9mの相当荒れた状態でも航海でき、35ノットでの巡航も可能と報じられている。
 また、海巡の600トン型は、台湾海軍で初めてカタマラン船型を採用した沱江級コルベットをベースに開発されたとされている。沱江級コルベットは、満載排水量567トンで、最高速度は、43ノット。武装も76mm砲x1門、20mmバルカン・ファランクスx1門、12.7mm機銃x4丁という銃砲類。しかし、沱江級が注目されるのは、それ以外の武装だ。沱江級は、台湾で開発・生産中の雄風Ⅱ型、及び同Ⅲ型対艦・対地巡航ミサイルを合計16発装備出来る。雄風Ⅱ型ミサイルは、最高速度マッハ0.8、射程150km。GPSではなく、慣性航法装置(INS)を用いて、高度125~250mの間を飛翔。事前に目標とされたエリアに到着すると、レーダーで標的を捜索する。標的がECMを使用していれば、レーダーでは無く赤外線センサーを使用。捕捉した標的のデータは、ミサイルに事前に記録されていたデータと照合され、高度を下げて、標的に接近。高度を維持したまま、または、ダイブして標的に当たる。225kgの高性能爆薬(HE)が詰め込まれた弾頭は、標的に飛び込んでから爆発する遅延信管を使用している。雄風Ⅲ型は、固体推進モーターとラムジェットを使用して、西側の対艦ミサイルでは珍しい超音速ミサイル。最高速度はマッハ2.0~2.3で、巡航高度200m、射程200km。INSで標的のエリアに到着すると、レーダーで標的を捜索。標的捕捉後は、高度20mにまで下がり、最終段階では、さらに高度を下げて飛翔。高性能爆薬(HE)120kgを詰めた弾頭は、標的に突入後、遅延信管で、爆発する。雄風Ⅲ型については、2016年にミサイル艇「錦江」が誤射事件を起こし、約74kmを2分で飛び、航行中の漁船の船体中心部を貫通。爆発すること無く、さらに、約4km飛行して、海中に沈んだ。つまり、雄風Ⅲ型は速いだけで無く、標的の狙ったポイントに命中したということだが、比較的、大型の軍艦を標的として意図して開発されたということかもしれない。さらに、雄風Ⅲ型は、一つの標的に対し、単発でも、連続して双発でも発射できるモードがあると報じられている。つまり、標的の艦に立て続けに打ち込むことが出来るということなのだろう。こうしたことから、雄風Ⅲ型は“空母キラー”とも呼ばれる。では、沱江級をベースにした海巡の600トン型は、雄風Ⅱ型、同Ⅲ型ミサイルについて、何らかの能力を持つのだろうか。台湾のメディアでは、海巡の安平は、雄風Ⅱ型、同Ⅲ型ミサイルを最大16発搭載出来るように設計され、ランチャーや発射制御システムを備えており、2021年に安平は台湾海軍の演習に参加、海軍の雄風Ⅱ型、同 Ⅲ型の試験を行う。また、台湾の法律では、戦闘期間中は、陸・海・空軍以外の武装組織も作戦に組み込むことが出来るとされているが、安平は戦闘命令を受ければ、24時間以内に、台湾海軍から、雄風Ⅱ型と雄風Ⅲ型対艦ミサイルを受領し、装填を完了、戦争の準備を整えると伝えている。
 台湾が、600トン型海巡船を何隻、建造するのか等、海巡の装備強化を図る台湾政府の意図は、筆者には不詳だが、台湾のコーストガードたる海巡が、“空母キラー”船隊を持つ日は、そう遠くないかもしれないということは、日本としても意識すべきことかもしれない。
                   船台上のCG601安平(台湾海巡署公式FB)
進水後のCG601安平(台湾海巡署公式FB)
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