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過去のオピニオン・エッセイ

エッセイ

画期的な日米共同統合訓練 菊池雅之氏(軍事フォトジャーナリスト) 
2019-10-01
 遡る事6年前。2013年6月10日から26日の間、「米国における統合訓練」を実施します、とのリリースが統合幕僚監部報道官室より出されました。
後に水陸機動団となる西部方面普通科連隊(以下、西普連)を主力とした西部方面隊と海上自衛隊の護衛艦「ひゅうが」「あたご」、輸送艦「しもきた」が、カリフォルニア州にあるキャンプ・ペンデルトン及びその周辺海域にて訓練を行うという内容でした。陸海空自衛隊が米国で米統合軍と訓練を行うのはこれが初めてのことです。
何よりも魅力を感じたのは、訓練のコードネームでした。その名は「ドーン・ブリッツ」。日本語に訳すと「夜明けの電撃戦」となる、シビれる程カッコいいネーミングです。これは取材に行かない理由が見つかりません。もちろん、訓練の中身も名前負けしない実戦的で濃厚なもので、非常に魅力的でした。
中でも度肝を抜かれたのが、「ひゅうが」に初めて米海兵隊のMV―22Bオスプレイが着艦した事でした。後に陸上自衛隊でもオスプレイ購入を決める事になりますが、その布石となったと言っても過言ではないでしょう。
驚くべき訓練はまだ続きます。陸自隊員の誘導に従い、「あたご」が米軍管理のサンクレメンテ島という無人島目掛けて艦砲射撃を行いました。この攻撃で沿岸エリアの敵を見事制圧。LCACに乗り込んだ西普連の隊員たちが続々と着上陸していきました。その間、陸自のAH―64Dアパッチ・ロングボーが睨みを利かせ続けます。
上陸後は、米海兵隊と合流し、訓練は続きます。国内で見る日米隊員の姿とは違って見えました。それは、この時の西普連の隊員たちが、海兵隊のように見えたからでしょう。
これらの作戦は、「ひゅうが」艦内にある多目的区画に設けられた統合指揮所から陸海空カラーの違う迷彩服の幹部たちにより指揮されました。
私は日本を遠く離れた米国にて、自衛隊が次なるステップへと進んだことを目の当たりにし、心から感動しました。自衛隊の統合運用は完成しつつあると実感したからです。
 取材を終えて帰国し、数日後に防衛省へ行くと、廊下ですれ違ったある幹部から「“ドンブリ”の取材お疲れさまでした」と声をかけられました。「丼ぶり?」と戸惑う私。満面の笑みからこの発言に一切の迷いがないことは明らかでした。そう、防衛省では、「ドーン・ブリッツ」を「ドンブリ」と略して呼んでいたのです。
統合運用化に磨きをかけている自衛隊ですが、次に磨かなければならないのは、ネーミングセンスのようです。ちなみに今もまだ「ドンブリ」と呼ばれています…。
「ひゅうが」に着艦する米海兵隊のオスプレイ
着上陸訓練の陸自隊員と米海兵隊員
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