図書紹介
令和6年
心を「道具化」する技術
元陸将・西部方面総監 小川清史著
(全国防衛協会連合会常任理事)
本書は、2016年熊本地震の災害派遣を指揮した元西部方面総監・元陸将、小川清史が教える一生使える心のトレーニング法。
「弱い自分を何とかして変えたい」「どうすれば強い心になれるのだろうか?」その“答え”としてたどり着いたのが、本書のタイトルにある「心を道具化する技術」と著者はいう。「心の道具化」とは「機械のような心の持ち主を目指す」のではなく、「心が“大切な道具”であることを認識し、人生をより良く楽しく生きるために使いこなす技術」。
人間関係や緊張・不安に振り回されない実践的な方法を百戦錬磨の元陸将が分かりやすく解き明かしていく。
■阪神淡路大震災の災害派遣で実践した部下のメンタル管理
■「戦闘未経験」の兵士が戦えるかは「心の準備」次第
など、現役時代の経験に基づく内容は大いに説得力がある。
また、「後悔を先に立たせる」、「すでになっている」の意識、嫌な出来事も「コレクション」すれば“楽”になる、どうせ思い続けるなら「大好きな人」などユニークな項目も目を引く。人に薦めてみたい一冊だ。
発行:㈱ワニブックス
定価:1540円(税込)
影響を受ける側からの問題提起
中国ファクター
アジア・ドミノの政治経済分析
あ
國分 良成 編著
日本経済研究センター 編著
台頭した中国はどのように影響力(パワー)を行使しているのか、インド太平洋の国や地域はどのように認識し、対応しているのか。
インド太平洋地域に対する中国の政治的影響力は、冷戦期においては限定的であった。しかし改革開放以後、経済的影響力が急速に拡大し周辺諸国に深く浸透したが、問題はそれが政治的影響力に転嫁するかである。その解明には受け手側の地域研究が必須である。
本書は、中国政治研究の第一人者である國分良成・慶應義塾大学名誉教授が中心となって、受け手側であるインド太平洋の地域と国家が、中国からの影響を具体的にどのように受容し、思考し、対応しているのかを、現地調査の結果なども踏まえて地域内の葛藤を分析するもの。山口信治、粕谷祐子、外山文子、相澤伸広、石塚二葉、山田周平、伊集院敦、山田剛、五百旗頭薫ら各地域の専門家と外交研究者が一堂に会して、中国の影響力(パワー)の実像に迫る。
発行:日本経済新聞出版
定価:3300円(税込)
財界人は自衛隊とどう向き合ってきたのか?
自衛隊と財界人の戦後史
―支援ネットワークの形成とその意味―
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中原雅人著
本書は、1990年代以降、自衛隊への支持が拡大したという通説に対して、その「前史」を描くことによって、「自衛隊研究」に新たな一面を提示するとともに、「日本人にとって自衛隊とは何か」という戦後日本社会の重要課題を考える材料を提供するものである。
1960年代初頭、全国の駐屯地周辺の地域を中心に、民間の自衛隊支援団体である「防衛協会・自衛隊協力会」が設立され始めた。自衛隊支援と防衛思想の普及を主な目的とするこの団体は、1960年代後半にはすでに全国で1090の協会と約49~60万人の会員を擁するまでに拡大した。
1963年2月に設立された大阪防衛協会では、初代会長の松下幸之助が自衛隊支援を呼びかけ、関西圏において自衛隊支援ネットワークの形成を促した。さらに、1966年3月に設立された東京都防衛協会では、初代会長の桜田武(日経連代表常任理事)が首都圏において支援ネットワークの拡大に尽力し、1969年には全国的にネットワークが形成された。
このように本書は、政界が防衛論議を避け、社会が自衛隊を「日陰者」扱いした1960年代に、積極的に自衛隊を支援し、防衛論議の普及に努め、全国各地で自衛隊支援ネットワークを形成した人々の軌跡をたどる。
2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻以
降、自衛隊への期待は日に日に増している。こうした厳しい安全保障環境の中で私たちは自衛隊とどう向き合うべきなのだろうか。その手がかりを得るためにも本書は必読である。
発行:ミネルヴァ書房
定価:5500円(税込)