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エッセイ
ring Civic Action Prograamの頭文字を取ったもので、直訳すると、“工兵による民生支援プログラム”となります。
紛争やテロなどで、崩壊された街を再建するため、各国から派遣されてきた工兵が、家を作り、道路を整備し、再び人が住める街とする活動です。
毎年タイで行われている多国間軍事演習「コブラゴールド」では、なんとENCAPを訓練として実施しています。訓練でありながら、タイの地方都市に学校や公共施設を作る活動を行っているのです。実は各国工兵たちにとっても、建物一棟をまるごと作る機会はそうそうありません。作ってもらった自治体等も新しい建物が手に入るわけですから、非常に喜ばしいこと。まさに両者がWin—Winなわけです。
2016年2月9日から19日の間に実施された「コブラゴールド16」では、陸上自衛隊の施設科もこのENCAPに参加しました。派遣されたのは、北部方面施設隊第105施設器材隊特殊器材中隊から選ばれた小隊長、建設監督、木工、営繕、測量の5名のスペシャリストでした。米海兵隊及びタイ軍と協力し、タイ中部ナヨーン県にあるバンチャンコー小学校に講堂を作ることになりました。
北部方面施設隊は、この訓練の直後となる2016年5月より、UNMISS(国際連合南スーダン派遣団)の第10次隊として、南スーダンへと派遣され、実働でENCAP活動を行うことになっていたのです。まさに予行演習です。
着工したのは1月17日。演習期間中に落成式を迎えるために逆算し、演習開始前からスタートを切った形
です。
私は、まもなく完成というタイミングとなる2月13日に訪問しました。すでに講堂の外観は完成しており、内装工事を主に行っていました。
小隊長自らご案内頂き、工事の状況を見せてもらいました。「ブロックを積み上げ、セメントを塗り付けていくという今の日本ではまずやらない工法で、私は初体験でした」と語る。なお、彼は、この後、南スーダンでも小隊長として建設指揮をとることになります。
講堂に続く階段には、自衛官がネジの先端を使って小さく「JAPAN」の文字を刻んでいました。
取材中、よれよれのTシャツ短パン姿の現地中年男性が私に歩み寄ってきました。聞けば、なんと校長先生でした。終始ニコニコしながら「非常にありがたいです。日本には感謝しています。講堂の前には日本の国旗を掲げる予定です」と話してくれました。
2月18日,落成式が行われました。私ももちろん参加しました。学校関係者や生徒、父兄、町の人が見守る中盛大に行われました。現地メディアの姿もありました。この日の校長先生は、ビシッとカーキ色の制服を着ていました。タイでは公務員にも制服が支給されるのだそうです。私が「おめでとうござます」と声をかけると、「日本には感謝しています、ありがとう」と私の手をぎゅっと握ってきました。
小隊長は、喜ぶ子供たちの前で「工兵は、破壊する事が主たる任務である軍隊の中で、唯一モノを作り出すのが任務です。そこに私はやりがいを感じています」と満面の笑顔を浮かべ、誇らしそうに語りました。