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過去のオピニオン・エッセイ

オピニオン

「以人為鑑」能勢伸之氏 フジテレビジョン報道局上席解説担当役兼LIVE NEWS it日曜 「日曜安全保障」MC」
2023-01-01
防衛協会会報第161号(5.1.1)掲載
     い    じん    い      かん   
    以 人 為 艦
   

北朝鮮は、2022年10月31日から11月5日まで実施された米韓合同演習「ビジラント・ストーム」について「黙過して許すことのできない行為…朝鮮人民軍総参謀部は11月2日から5日まで、…対応軍事作戦を断行」(朝鮮中央通信11/7付)として、ミサイル発射や航空機の飛行を実施した。

「作戦2日目(11月3日)、国防科学院の要求に従って敵の作戦指揮体系をまひさせる特殊機能弾頭の動作信頼性検証のための重要な弾道ミサイル試射を行った」(朝鮮中央通信11/7付)として、記事中にミサイルの名称はなかったが、火星15型大陸間弾道ミサイルの先端部(弾頭収納部のカバー)を大型化したミサイルとみられる画像を掲載した。先端部の大型化は、搭載する核弾頭の複数化を意図しているようにも見える。しかし、韓国合同参謀本部は「北朝鮮は3日午前7時40分ごろ、平壌の順安付近から朝鮮半島東の日本海に向けて長距離弾道ミサイル1発を発射。最高高度1920km、飛行距離760km、最高速度マッハ15で、韓国軍はこのミサイルを「火星17型大陸間弾道ミサイル」の「発射失敗」と判断した。そして、7日の画像発表後でも韓国合同参謀本部は「分析結果は変わらない」としたとされる。ただ、火星15型も同17型も戦略「核」ミサイルを意図したものに違いないだろう。北朝鮮メディアが、2022年11月7日に公開した画像には、1991年の湾岸戦争で名を馳せたスカッド弾道ミサイルの発射シーンと思しきモノもあった。浜田防衛相は「少なくとも、ノドン、スカッドERといった我が国を射程に収める弾道ミサイルに核兵器を搭載して…必要な核兵器の小型化、弾頭化をすでに実現しているとみられる」(衆院・安保・外務・拉致問題連合審査会(2022/10/13)との見解を示していた。

 北朝鮮は、自国内での核実験は、2006年、09年、13年、16年1月、16年9月、17年に実施している。しかし、弾道ミサイルに核弾頭を複数搭載するには、核弾頭の小型化を確実に進めなければならないはずだ。スカッドは、直径約88cm、ノドンは、直径約132cmとされているが、北朝鮮が、2022年4月16日に発射試験を行った「新型戦術誘導武器」というミサイルについて、北朝鮮メディアは、「戦術核運用の強化」を目的としていた。この新型戦術誘導武器の直径は、約60cmと推定されている。このミサイルへの搭載が目的なら、ノドンやスカッドに搭載可能な核弾頭より小型化した核弾頭が必要なはずだ。それが実現出来れば、火星1型や火星17型大陸間弾道ミサイルに小型化した複数の核弾頭を搭載する可能性も否定出来ないだろう。

「新型戦術誘導武器」用の小型核弾頭の開発・製造のためには、実際に、小型核弾頭を使用する核実験が必要になる。それに万が一にも成功すれば、2022年1月に発射試験が実施された、「北朝鮮版極超音速ミサイル」にも搭載可能となるかもいれない。このミサイルは、約1000km飛翔したが、約600kmの地点から大きく左に約240kmも蛇行。最高高度は約60kmだったとされている。つまり、現在の弾道ミサイル防衛では迎撃がかなり困難なミサイルとみられ、それが「核」ミサイルとなれば、日本の防衛という観点から無視出来ないものとなるだろう。

 しかし、北朝鮮は、2017年以来、この原稿を書いている時点(2022年11月15日)まで、核実験をしておらず、「新型戦術誘導武器」用小型核弾頭の実験をしていない。

金正恩委員長が、朝鮮労働党第8回大会(2021年1月)で提示した軍事目標(軍事関連)には、➀核技術のさらなる高度化、➁核兵器の小型・軽量化、戦術兵器化のさらなる発展、➂超大型核弾頭の生産の持続的な推進などが並んでいた。核兵器関連技術の発展を重視していたわけだが、なぜ、北朝鮮は、2017年以降、2022年11月現在まで、核実験を行わないのか、ないしは、出来ないのか。

その理由は定かではない。そして、この会報が読者の眼に留まる前に北朝鮮が核実験を実施している可能性も否定できない。

しかし、以前、このコラムで、指摘したように、ロシアのプーチン大統領が、2月7日に核兵器をちらつかせた上で、ウクライナ侵攻(2/24)を開始したことが契機となって、中立国だったスウェーデンとフィンランドがNATO加盟を申請(5/18)。特に、フィンランドは、米議会調査局の資料によれば、B61―12型戦術核爆弾を2個搭載可能になりうるF―35Aブロック4ステルス戦闘機×64機を導入、2026年から国内配備を開始する。フィンランドは、もちろん、NATOの核共有政策に加わると表明しているわけではない。しかし、フィンランドのマリン首相は、2022年11月2日の記者会見で、フィンランド国内への核兵器配備を受け入れるかとの質問に対し「いかなる前提条件も付けるべきではない。何についてであれ未来への扉を閉ざすような事はしない」(AFP通信2022年11月2日付)と含みを持たせた表現を示している。

フィンランドの首都ヘルシンキからモスクワまでは、900km足らず。F―35Aの作戦行動半径は、約1093kmなので、物理的には、上記のような爆弾を内蔵したF-35Aブロック4は、フィンランド国内からモスクワまで往復可能となる。

さらに、ドイツは、核共有政策を維持するために、F―35Aブロック4を導入すると表明。ポーランドやチェコも同型機を導入する見込みであり、既に、導入しているイタリア、オランダ、ノルウェー、デンマーク、ベルギー等のF―35Aもブロック4にアップグレードされるだろう。

見ようによっては、モスクワは、近い将来、北と西からNATOの核共有政策基づく戦術核兵器に迫られる、かもしれない。米国政府は、2022年10月27日に発表した「2022年版核態勢見直し」で、「欧州―大西洋地域の強力で信頼できる核抑止」の一環として、核・非核両用機(DCA)のF―35AとB61―12 への移行を強調している。

では、欧州以外ではどうなのか。

「インド-太平洋地域における強力で信頼できる核抑止」という項目では、中国、北朝鮮、ロシアの核・ミサイル開発を「拡大する懸念と認識」し、韓国、日本、豪州と拡大抑止の協議を行ってきたことを紹介。インド-太平洋地域での核・非核両用機(DCA)についての記述は見当たらないが、日本(105機)、韓国(40機)、オーストラリア(100機)でF―35Aの調達計画が進められていて、これらの国のF―35Aも、いずれ、ブロック4に更新されるだろう。

では、万が一、北朝鮮が核実験を行えば、インド太平洋地域のF―F-35A保有国は、どのような対応をとるだろうか。被爆国である日本はともかく、前述のF―35Aを保有するNATO諸国と同様な政策をとる可能性はないだろうか。

万が一の北朝鮮の核実験の結果、戦術核兵器運用能力のある核・非核両用機(DCA)が、インド=太平洋地域の、米同盟国・パートナー国の空軍に登場すれば、懸念するのは北朝鮮だけだろうか。

穿ち過ぎかもしれないが、このことは、中国にとっても気掛かりかもしれず、中国の北朝鮮に対する姿勢にも影響しているかもしれない。
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