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過去のオピニオン・エッセイ

オピニオン

「犬牙相制」能勢伸之氏 フジテレビジョン報道局上席解説担当役兼LIVE NEWS it日曜 「日曜安全保障」MC」
2022-07-01
防衛協会会報第159号(4.7.1)掲載
  ロシアは、NATO拡大 への懸念を背景とするとともに、プーチン・ロシア大 統領は、ウクライナに核武 装化の潜在的可能性がある として2022年2月24 日、ウクライナへの「特別 軍事作戦」を開始。この欧 州の安全保障を一変させる ロシアの振る舞いをみて、 従来、軍事的には、中立政 策を堅持してきたスウェーデンとフィンランドが、NATO加盟を支持する国内世論の高まりなどを背景に、5月18日、NATO加盟を正式に申請した。フィンランド、スウェーデンのNATO加盟には、現時点でのNATO加盟国、30カ国の承認が必要だが、5月19日現在、トルコがクルド人問題等を理由に難色を示している。従って、フィンランド、スウェーデンのNATO加盟はすんなりいくのかどうか不詳である。では、両国の当面の安全保障の手段は確保できるのだろうか。このため、注目されたのが英国の存在。両国がNATOに正式加盟するまでの間、英国が、スウェーデン、フィンランドにそれぞれ、安全保障上の支援を行う(共同声明、5月11日付)ことになったのである。フィンランドと英国の共同声明には「フィンランドと英国は共通の安全保障上の利益を共有し、英国は必要なあらゆる手段でフィンランドの努力を支援する準備ができている」と記述されている。英国は、戦術核兵器は保有していないが、戦略核兵器として、ヴァンガード級ミサイル原潜に最大 12発搭載する射程1万2000㎞のトライデントⅡD5潜水艦発射弾道ミサイルを保有/運用している。同ミサイルには、100kt級核弾頭が最大12個搭載可能。〝英国の必要なあらゆ る手段〟に、英国の戦略核 兵器が含まれているかどう か、気になるところだ。
 NATOにフィンラン ド、スウェーデンが加入し たら、安全保障環境は、ど うなるのだろうか。フィン
ランドは、ロシアとの国境 が約1300㎞。フィンラ ンド=ロシア国境から、モ スクワまでは900㎞もな
い。さらに、バルチック艦 隊の二大拠点、サンクトペ テルブルク(クロンシュタ ット)もカリーニングラー
ドも、両国が加盟すればNATO諸国に包囲される位置関係にある。
  では、ロシアは、この二国のNATO加盟視線をどのように見做していたのであろうか。2022年5月
16日、ロシアのプーチン大統領は、ロシアを中心とするCSTO(安全保障条約機構)の首脳会合で「問題
ない。NATOのこれらの国(フィンランド、スウェーデン)への拡大に伴い、ロシアに直接の脅威はない。
しかし、(NATOの)軍事インフラをこれらの領土に拡大するなら、確実に我々の側の反応を呼び起こすだろう」と、述べていた。
 つまり、スウェーデン、フィンランドの加盟によって、NATOが拡大しても、それだけでは、ロシアへの脅威にはならない。しかし、両国に、NATOの「軍事インフラ」が作られるなら、話は別だ、ということなのだろう。
  では、プーチン大統領が指摘するNATOの「軍事インフラ」とは、具体的には何を指すのだろうか。 フィンランドは、現在保有する戦闘機、F―18ホーネットに代えて、F―35AライトニングⅡステルス戦闘機64機を導入する予定で2026年から国内配備が始まる。このF―35Aは、全機「ブロック4」というタイプであることをフィンランド国防省は、明らかにしているが、それはどんな能力を持つものだろうか。米議会調査局の報告書「F―35 Joint Strike Fighter (JSF) Program(2022年5月2日版)」によれば、F―35Aブロック4は、「Adds nuclear weapons capability (核 兵器能力を付与される)」と明記され、具体的には米軍最新の「B61―12核爆弾」を運用可能となる初期能力という。F―35Aの作戦行動半径は約1100㎞とされるので、物理的にはモスクワまで行って、何らの作戦を行い、フィンランドへ帰投できることになる。
 NATO内では、ドイツ、ベルギー、イタリアな どが、米軍管理の下、米軍の核兵器を国内に置き、いざというときには、自国の作戦機に、その核兵器を搭載し、運用するという、いわゆる核共有(Nuclear Sharing )を行っている。つまり、F―35Aブロック4の導入は、傍目にはフィンランドも、NATOに加盟した上で、将来的に、万が一、政治的に可能となれば、Nuclear Sharing を 潜在的に可能とする装備に見えるかもしれない。フィンランドのマリン首相は、NATO加盟申請をした翌日の5月19日、インタビューに答えて「(NATO内では)フィンランドに核兵器を置くことには関心さえない」と発言(ロイター5/19)したという。この発言がプーチン大統領の意向に沿うものかどうか、ロシアが、どう受け止めるかは不詳だが、マリン首相は2022年1月19日に、フィンランドが、自らの首相任期中にNATO加盟を申請する可能性について「非常に低い」と述べていた。マリン首相が「非常に低い」可能性としていたNATO加盟申請を実施したのが、マリン首相本人である。微妙な表現の発言を駆使し、いつの間にか、着実に能力の構築を実施するフィンランド政府のやり方は大変興味深いものがある。
 冒頭で記したように、ロシアのウクライナへの「特別軍事作戦」の背景のひとつは、プーチン大統領、自らが「ウクライナは独自の核兵器を作るつもりだ」(2/21)と、ウクライナの核兵器保有の可能性を指摘したことにあった。
 翻ってみれば、ソ連崩壊後、独立したウクライナは、核弾頭数で世界第三位の国だったのだが、様々な交渉の末、ウクライナは、核兵器ゼロの国になっていたのだが。
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