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過去のオピニオン・エッセイ

オピニオン

「鳥瞰虫瞰」能勢伸之氏 フジテレビジョン報道局上席解説担当役兼LIVE NEWS it日曜 「日曜安全保障」MC」
2022-04-01
防衛協会会報第158号(4.4.1)掲載
  が注目するウクライナ情勢。世界で、そして、日本でも防衛の意義をあらためて考え直す契機となりそうだ。

   軍事情報専門サイトOryxジャパンが、3月13日時点でまとめたロシア軍とウクライナ軍の装備の損害は、ロシア軍側が、撃破された装備数:581、損傷:24、放棄:209、捕獲:535で、喪失数の合計は1349であった。対してウクライナ側は、撃破された装備数:132、損傷:5、放棄:47、捕獲:160で、喪失数の合計は344であった。喪失した装備の数量では、ロシア側が四倍近くになるが、それだけ、ロシア側は、大量の戦力を投入しているのだろう。日々、現地ウクライナから入ってくる映像を見ていると、道路のぬかるみにはまって、身動きがとれなくなって、ほぼ、無傷のまま、放置された2S19ムスタ152㎜自走砲の姿もあった。乗員は、動けなくなった自走砲に留まるのは危険と考え、脱出したのだろうが、機能しないように、自動小銃や手榴弾で破壊したようには見えなかった。昨年、米軍は、アフガニスタンから撤収する際、飛行場に残したヘリコプターの操縦席は、自動小銃または機関銃で徹底的に破壊していたが、ロシア軍が、ウクライナで遺棄した作戦用車両は、映像で確認出来る限り、まだ、機能しそうなモノも少なくない、という印象だった。

 こうした中で、Oryxジャパンのリストで眼を引くのは、両軍の戦車や自走砲、歩兵戦闘車のような直接地上の戦闘に参加している車両の撃破・損傷だけでなく、西側にとって関心の高いどんな重要装備が放棄され捕獲されたかである。

 例えば、ロシア軍の9A330トールM自走対空ミサイル・システム2両がウクライナ軍に捕獲されているが、トールMは、回転砲塔に垂直発射システムを持ち、9K330または9K331対空ミサイルを素早く、ガスで撃ち出し、高度20メートルあたりでミサイルは向きを変え、標的に向かう。このシステムは、航空機やヘリコプターだけでなく、航空機から投下される精密誘導爆弾や精密誘導ミサイルの迎撃も目指して開発されたシステムだ。ロシアは、その発展型であるトールM1やトールM2もウクライナに展開させ、どちらも、撃墜されたほか、1両ずつ捕獲もされた、という。

 そして、高性能爆薬より遙かに強力とされるサーモバリック(液体爆薬)を内蔵したロケット弾を発射する「TOS―1A」1両も捕獲されている。

 さらに、ロシア軍は、各種指揮通信車両を9両損失しているが、このうち、撃破されたのは2両で、「M

P―2IM統合指揮通信車」1両放棄。「9C932―1バルナウルーT戦術防空指揮通信システム」1両放棄、1両捕獲。「R―166―0・5統合指揮通信車」1両放棄、「R―419L1移動通信局」が1両放棄だったという。

 これらの指揮通信車が、どのような状態で、ウクライナ側の手に落ちたのかにもよるが、ロシア側の通

信、データリンクの仕組みが解明されるなら、それはウクライナの前線だけでなく、世界中の安全保障にも影響するかもしれない。

 さらに、西側諸国の注目を集めそうなのが、ロシア軍の電子妨害・錯乱システム「R―330BMVボリソグレブスクー2B」1両が損傷、1両が捕獲ということ。

 ロシアの、このシステムの本当の能力は筆者には不詳だが、同じシリーズに属すると考えられる「R―330ZH」は、衛星通信を含む、通信の妨害が出来るとされるが、特に注目されるのは、軍用GPS信号の妨害も出来ること。これにより、航空機や車輌が自らの位置を掌握しにくくなるだけでなく、GPS誘導爆弾やGPS誘導ミサイルをあらぬ場所に誘導してしまうかもしれない。

 この捕獲された「R―330BMV」が、どんな状態かは不明だが、場合によっては、西側を悩ますロシアの手の内が西側につつぬけになりうるのかもしれない。

さらに、SNSでは、ロシア軍が、ウクライナにLeer3電子戦車両らしきものを持ち込んだ、という映像も流れていた。Leer3は、オルラン10無人機を、携帯電話のニセの中継局として使用。携帯電話の使用者、その中には戦闘員もいるだろうが、その位置を調べるだけでなく、ニセの通信を流し込むことも可能だという。

 ウクライナ側が、Leer3をどうしようとしているのかは、この原稿を書いている時点では、不明だが、Leer3が、ウクライナ軍の手に落ちれば、西側全体の関心を呼ぶことになるかもしれない。

 ウクライナでの戦いは、ウクライナ一国の運命の帰趨だけでなく、さらに、西側諸国の将来にも関わるものとなるかもしれない。

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