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過去のオピニオン・エッセイ

エッセイ

多国間PKO訓練「カーン・クエスト」 軍事フォトジャーナリスト 菊池雅之氏
2020-01-01
                           防衛協会会報第149号(2.1.1)掲載
 陸上自衛隊は、世界中いろいろなところに出向いて、実任務や訓練を行っています。2019年を振り返っても、アメリカをはじめ、タイ、フィリピン、そしてインド、さらにイギリスまで部隊を派遣し、各国と訓練を行いました。  その中の一つであるモンゴルで行われている多国間PKO訓練「カーン・クエスト」はご存じでしょうか?首都ウランバートルから約60㎞西にあるタバントロゴイ演習場にて、毎年行われています。陸自は2009年からオブザーバーを派遣し、この訓練に参加するようになりました。  もともとは、アメリカとモンゴルによる2国間訓練として2003年から開始されました。モンゴル軍は、タバントロゴイ演習場を整備していき、市街地戦闘訓練場などが作られていきました。そしていつしかアジア有数のPKO訓練センターへと姿を変えていったのです。これを機に、「カーン・クエスト」は、PKO訓練へと変貌を遂げました。これによりPKO活動を実施している国々も参加するようになり、多国間訓練として今に続きます。  先述のように、陸自はオブザーバーとして参加していましたが、2015年から、遂に部隊を派遣することになりました。内訳は、中央即応連隊の25名と国際活動教育隊の8名、陸幕から6名と、決して規模は大きくはありませんでしたが、私は参加国の顔ぶれに注目しました。  「カーン・クエスト15」は、6月20日から7月1日の間に実施され、27か国、約1200名が参加しました。その27か国の中に、中国も含まれていたのです。そう、多国間という枠組みとは言え、日本と中国が同じ訓練に参加するという、ありえないことが起きたのでした。  現地に入った私が、まず驚いたのが、自衛官たちが、89式小銃ではなく、AKMというソ連が開発したAK―47系列の銃を所持していたことです。(写真①)この演習場は、銃をモンゴル軍から借りることができます。  訓練実施部隊としてだけでなく、国際活動教育隊の隊員は、「インストラクター」と書かれた腕章をつけ各国に指導する役割も帯びていました。(写真②)日本も1992年からPKO活動に参加し、気が付けばベテラン国の一つです。フィリピン軍や韓国軍に対し、車両検問や第一線救護の方法などを教えていました。この姿にも驚きました。  午前中の訓練が終わり、各国の兵士たちは、仲間としゃべりながらカジュアルに食堂へと向かいます。そんな中、掛け声に合わせて整然と行進しながら歩いてくる一団がいました。(写真③)中国軍です。食事中も姿勢を崩さす、おしゃべりすることなく黙々と食べると、再び整列行進して、宿舎へと歩いていきました。他国の目もあるので、恥ずかしい行動をしないようにきつく言われてきたのでしょうか。 いろいろ不思議なシーンが取材できたそんな訓練でした。
                       ①自衛官がAKMで訓練
                        ②インストラクターの自衛官
                         ③整然と行進する中国軍
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