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過去のオピニオン・エッセイ

オピニオン

「遠交近攻」能勢伸之氏 フジテレビジョン報道局上席解説担当役兼LIVE NEWS it日曜 「日曜安全保障」MC」
2020-10-01
                           防衛協会会報第152号(2.10.1)掲載
  未確定の国境線が4000㎞もある中国とインド。ラダック地方で、2020年6月、中国軍とインド軍が衝突。武器を使わず、素手や投石によるものだったが、45年ぶりに死者が出たと報道された。この衝突の前、中国軍は、ラダッタのエリアに軍隊を派遣し(ブルームバーグ、2020/6/17)、さらにチベットの標高4700m以上の非公開の場所で実施された歩兵大隊の訓練に15式軽戦車(ZTQ15)を参加させたが、後者の訓練について、中国・人民日報系の海外向けメディアGlobal Times(2020/6/14付)は「軍事観測筋は、人民解放軍の最近の機動と軍隊の演習を、最近の中国とインドの間の国境緊張と結びつけていた」と記述した。15式戦車は、世界的に見ても特異な戦車だ。中国の主力戦車、99A1式が重量52tで、1500馬力ディーゼル・エンジンを装備し、最高時速70㎞、125㎜滑腔砲(ZPT―98)+自動装填装置を装備しているのに対し、15式戦車(ZQT15)は、推定重量33~36tと遙かに軽く、さらに、前述の展開先が標高4000m以上のチベット地域等であることから、空気が薄く、低温の高地での運用を前提に、過給器等の技術を投入していると推定される。主砲は、英L7砲の流れを汲む105㎜ライフル砲。さらに、砲塔上には、12・7㎜機関銃を砲塔内からの操作が可能な無人銃架(RWS)を備えている。
 15式戦車の標高4700m以上での訓練参加が、インドを直接牽制する目的であったかどうかは断言できないが、インド政府は、中国と国境地帯・国境未画定地帯で緊張が顕在化することから「高い標高という条件下で、配備できる軽戦車の緊急配備を陸軍に承認した」(インド紙・Economic Times2020/7/15
付)
 インドでは、以前から山岳地帯で使用できる軽戦車の必要性は言われてきたが「現在このような戦車を生産している国が少ないため、オプションが限られる」(同上)。米国には、空輸を重視したMPF(機動防護火力車)プログラムがあるが、2種類のプロトタイプの試験を進めている段階。一方、ロシアには、空輸可能な2S25MSprut SDM1自走対戦車砲があり、これは、インドが、運用しているロシア系のT―72M、同M1、それに、T―90S型戦車と弾薬等で共通性がある。インドは、ロシアに、2S25MSprut SDM1自走対戦車砲の情報要求(RfI)を提出した、という(Army Recognition 2020/7/26)。そうだとするなら、インドは、15式戦車対策として、2S25M Sprut SDM1自走対戦車砲に関心を示したということだろう。
 2S25Mは、ロシア空挺部隊用に開発された戦闘車輌で、輸送機からの空中投下も可能とも言われる。主砲として、T―90等で使用されている2A46M 125㎜滑腔砲用の弾薬、ミサイルが使用できる低圧砲2A75M 125㎜滑腔砲を搭載。この2A75M 125㎜滑腔砲+自動装填装置を装備しながら、2S25Mの重量は18t。軽量である故か、500馬力の水冷ディーゼル・エンジンで、60%勾配を登れる。最高速度は地上で時速70㎞、水上で7㎞。しかし、2S25M Sprut SDM1自走対戦車砲は、15式戦車のように空気の薄い高山地域でも運用可能なのだろうか。ロシアが、インドの情報要求に応じるのかどうか。そして、インドが、中国との国境対策として要望した場合、ロシアから2S25M Sprut SDM1自走対戦車砲を入手できるのかどうか。これは、ロシアにとって、中国とインド、どちらとの関係を重視するか、を顕在化させる課題かもしれな
い。この原稿が読者の眼に留まる頃には、結論は出ているかもしれないが、それは米国や日本にとっても無関心ではいられないかもしれない。というのも、中国は、上陸作戦に適した05式水陸両用戦車(ZTD―05)と05式水陸両用歩兵戦闘車(ZBD―05)を保有。世界的にも珍しい水陸両用戦車であるZTD―05は、海面上にほぼ砲塔だけ出し、105㎜砲を発射しながら、陸地に向かう。
 ZBD―05は、30㎜機関砲や対戦車ミサイルヲ備え、3人の乗員の他に、8人の兵員が搭乗する。 
 中国は、これらの水陸両用戦闘車両を約20輛搭載出来る071型揚陸艦を少なくとも7隻運用しているが、2020年8月現在、それよりも大型の075型強襲揚陸艦の3隻目が建造されている。
 一般論だが、山に適した能力と海に適した能力を、それぞれ急拡大するなら、他者には、複数の正面での作戦、または、睨みを効かせる意図があるようにも見えるだろう。警戒する他者同士が手を結ぶかどうか、興味深いことだろう。
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