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エッセイ
思えば遠くに来たもんだ! 菊池 雅之氏(軍事フォトジャーナリスト)
2019-04-01
防衛協会会報第146号(31.4.1)掲載
私は自衛隊をはじめ、米軍や各国軍を取材し、それを雑誌や書籍などで記事にまとめる仕事をしています。この仕事をはじめて約25年、実にいろんな国に行きました。
その中でも、2017年4月のアフリカ・ジブチ共和国への訪問は感慨深いものでした。
渡航目的は、もちろん、海賊対処行動として、自衛隊が日本を遠く離れ、遥々アフリカで任務に就いている自衛官を取材することでした。これまでも米軍やエジプト軍などを取材するため、アフリカの大地を踏んだことはありましたが、取材対象が自衛隊となると話は違います。
ジブチにある活動拠点に足を踏み入れた私の頭の中に、なぜか海援隊の「思えば遠くへ来たもんだ」という曲が流れていました。
第26次派遣海賊対処行動水上部隊として、第4護衛隊群・第8護衛隊の「きりさめ」がソマリア沖・アデン湾内を航行するタンカーや客船を護衛していました。第26次派遣海賊対処行動航空隊として、第1航空群第1航空隊のp―3Cが海上上空をパトロール飛行していました。第7次派遣海賊対処行動支援隊として、第43普通科連隊が活動拠点を守っていました。私が訪問した際に、これら部隊が活動を行っていました。
毎朝、拠点内にある旗竿には、ジブチと日本の両国旗が掲揚されます。アフリカで“見る”「日の丸」、“聞く”「君が代」は格別でした。気温40度を超える中、はためく国旗を見上げている隊員たちの顔を汗が伝います。
こんな過酷な環境ではありますが、話を聞いたある陸自隊員は、「またとないチャンスなので、行きたいと志願してきました」と語っていました。自衛隊に身を置く30年の中で、海外へと行ける機会はそう多いものではありません。それがジブチとなればなおさらです。数名の女性自衛官も働いていました。
陸自隊員は、砂漠模様の迷彩服を着て、89式小銃を構えてp―3Cを警備します。その機体に乗り込む海自パイロットたちも茶色のフライトスーツを着ています。日本で見られない恰好、そして自衛隊の統合運用を見る事が出来るのもこの地の特徴です。
1年間に約2万隻の船舶がアデン湾を航行します。その内10%が日本に関係のある船と言われています。日本の国益を守るため、彼らの任務は非常に重要です。海外にいて日本を守る重責を担っているのです。
さて、私の頭の中で繰り返し流れていた「思えば遠くへ来たもんだ」の歌詞は、最後にこう締めくくります。「この先どこまでゆくのやら」―。
果たして自衛隊は、次はどこまで行くことになるのでしょうか。どこであろうと、私もついていきたいと思います。