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過去のオピニオン・エッセイ

オピニオン

斬新奇抜 能勢 伸之氏   フジテレビ報道局解説担当役兼ホウドウキョク週刊安全保障MC
2019-04-01
      防衛協会会報146号(31.1.1)掲載
 
     『斬新奇抜』
 
 安全保障ということを傍らから見ていると、時折、従来の常識が通じない局面にぶつかってしまうことがあるようだ。世界秩序の根幹には、冷徹な軍事力の均衡、特に、米露の核兵器のバランスは、実態のみならず、新START条約やINF条約といった条約やそれに付随する様々な取り決めが表出し、《実態》と《言葉》が緻密に絡み合う複雑な秩序の構造を示してきた。
新START条約は、トライアドと呼ばれる戦略核兵器を削減する条約であり、INF条約は、射程500㎞から5500㎞の地上発射弾道ミサイルと巡航ミサイルを、核、非核を問わず、米露は開発も生産も配備もしないという内容であり、世界の安全保障上の基盤を成してきた。『INF条約』だが、日本語では、しばしば、「中距離核戦力全廃条約」と訳される。だが、英語の正式名称は「Treaty Between The United States Of America And The Union Of Soviet Socialist Republics On The Elimination Of Their Intermediate-Range And Shorter-Range Missiles」という。日本語に仮に訳せば「アメリカ合衆国とソビエト社会主義共和国連邦の間の、中距離および、より短い距離のミサイルの撤廃に関する条約」となる。1991年のソビエト連邦崩壊後、この条約は、ロシアが引き継いでいるので、ソビエト連邦は、ロシアと読み替えればいい。この条約の正式名称には、NUCLEAR(=核)の文字がなく、従って、条約の対象を核ミサイルに限定していない。核・非核を問わず、その射程性能で条約の対象となるのだ。そして、条約の対象は、いわゆる地上発射『中距離』弾道ミサイル/巡航ミサイルだけでない。同条約の第二条の規定では、“中距離”を「1000㎞~5500㎞」と規定。また、“より短い射程”を「500㎞~1000㎞」と規定している。米軍の規定に当てはめると、別表のように、短距離ミサイルのうち、射程500㎞以上~1000㎞が条約の対象。それに射程1000㎞~3000㎞の準中距離ミサイル、さらに射程3000㎞~55000㎞の中距離ミサイルが全廃の対象となってきた。また、第四条の規定では、第二条で規定された「地上発射弾道ミサイルや巡航ミサイルと、発射機・基、それにすべての支援構造、支援機材」が撤廃対象と規定されている。2月2日、INF条約の破棄を正式にロシアに通告した米国は、6か月後に正式にINF条約を破棄する公算が大きい。米国は、ロシアのSSC―8巡航ミサイル開発がINF条約違反だと指摘して、離脱を通告したわけだが、ロシアも米国のINF違反だと指摘している装備がある。ひとつは、イージスアショアだ。イージスアショアは、イージス艦のイージスシステムの一部を地上に設置したものだが、イージス艦のMk―41 VLS垂直発射装置からは、射程1250㎞~2500㎞以上のトマホーク巡航ミサイルが発射可能だ。そして、イージスアショアもMk―41を使用する。米軍のイージスアショアは、基本システムが、弾道ミサイル迎撃用のSM―3迎撃ミサイル(将来はSM―6も?)専用のベースライン9Eで、トマホークを発射できないとされているが、ロシア側は、イージスアショアがMk―41VLSを使用している点を、INF条約違反と指摘しているわけだが、この新START条約も、INF両条約も、米露以外の国々を拘束するものではない。このため、例えば、中国のINF射程にあたるミサイル、DF―21やDF―26等は、米本土には届かないが、ロシアには届く。また、北朝鮮が開発、保有しているINF射程のミサイル、スカッドER、ノドン、ムスダン、火星12型、北極星2型も、米本土には届かないが、日本などには届く。しかし、米露には、これらのミサイル戦力と均衡させる地上発射のミサイルは無かった。INF条約で持たないことになっていたからだ。つまり、INF条約がもたらしていた秩序に条約の対象外であった国々から米露への挑戦がなされた格好になるのだろうか。2月27日、28日に行われた二回目の米朝首脳会談で、北朝鮮の非核化への道程に合意は得られなかったことは、当事国以外からのINF条約への挑戦の排除が如何に困難かを示しているようだ。
 次に、新START条約が対象とする戦略核兵器も、INF条約が対象とするINF射程のミサイルも、共通しているのは、ミサイルであったり、爆撃機であったり、いずれにせよ、「飛ぶもの」であったということ。
 では、飛ばない兵器なら、どうなるのか。プーチン大統領率いるロシアは、昨年来、ポセイドンという新兵器計画を誇示している。ICBM並み、または、それ以上の航続距離になりそうな、言うなれば、大陸間原子力魚雷。しかも、核弾頭装着可能とされる。敵の艦隊を攻撃することもあれば、敵の沿岸地域を攻撃することも。プーチン大統領は、先に、このポセイドン原子力魚雷を搭載可能な原潜を2019年春に進水させると明らかにしている。米露がともに、相手を条約違反と批判しているINF条約とは異なり、新START条約については、米露が相手を条約違反と批判はしていない。しかし、このポセイドンは、核弾頭の運搬手段としては、空中を飛ぶことがないため、既存の条約や、その延長線上の考え方で、規制・対応することは無理があるだろう。条約の当事国からも、戦略核兵器にかかわる条約に成されているということだろうか。
 
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