過去の要望書
令和6年度要望書
令和6年8月8日、「防衛問題に関する要望書」を大宮会長から木原防衛大臣に手交〜コピー
8月8日(木)、全国防衛協会連合会の大宮英明会長は、島田和久理事長・岸川公彦常任理事・粕谷大作常任理事とともに、「防衛問題に関する要望書」を携えて、防衛省(市ヶ谷)を訪問。第一省議室において、大宮会長から木原稔防衛相に対して要望書が手交された。
その後、各テーブルを挟んで対面で着席。最初に大宮会長から要望内容の概要説明があり、木原防衛相からは、項目ごとに取り組みの現状、施策への反映状況・進捗状況等について回答があった。
全国防衛協会連合会は、各都道府県防衛協会等の連合体として、平成元年に発足して以来「防衛意識の高揚」と「自衛隊への支援協力」を目的に活動している。この共通の目的を持つ民間有志の集まりとして、国民としての目線から、防衛問題に関して毎年関係方面に要望しているものである。
要望書では、要望項目を次の三点に絞って強く要望している。
①憲法改正について
②国防意識の高揚を図るための各種施策の充実
令和5年度要望書
「防衛問題に関する要望書」を令和5年8月1日大宮会長から井野副大臣に手交
8月1日(火)、全国防衛協会連合会の大宮英明会長は、金澤博範理事長・岸川公彦常任理事・小川久敏常任理事とともに、「防衛問題に関する要望書」を携えて、防衛省(市ヶ谷)を訪問。防衛副大臣室において、大宮会長から井野俊郎 副大臣に対して要望書が手交された。
着席後、大宮会長による要望内容の趣旨説明に引き続き金澤理事長が要望書を読み上げ、懇談に入った。懇談では要望項目を含めた多岐にわたる話題で会話が弾んだ。
全国防衛協会連合会は、各都道府県防衛協会等の連合体として、平成元年に発足して以来「防衛意識の高揚」と「自衛隊への支援協力」を目的に活動している。この共通の目的を持つ民間有志の集まりとして、国民としての目線から、防衛問題に関して毎年関係方面に要望しているものである。
要望書では、要望項目を次の三点に絞って強く要望している。
①憲法改正について
②国防意識の高揚を図るための各種施策の充実
③自衛官の処遇向上
(下段に全文掲載)
全国防衛協会連合会は、各都道府県防衛協会の連合体として「防衛意識の高揚」と「自衛隊への支援・協力」を目的に活動しています。共通の目的を持つ民間有志の集まりとして、国民としての目線から、防衛問題に関して要望するものです。
我が国を取り巻く安全保障環境が近年一層厳しさを増す中、関係者の努力は並大抵のものでないことを十分理解し、応援しています。その一方で国民の国防意識や自衛隊に対する理解は、残念ながら決して高くはありません。
そのため、国防に関する記述が欠落している憲法をできるだけすみやかに改正して、国防の中核たる自衛隊の位置づけを明確化することを要望します。憲法改正により、国民の自らの国を守るとの国防意識が高まるとともに自衛隊に対する理解が格段に進むものと確信します。
憲法改正と同様に、国防のさらなる充実を図る上で、国民一人一人が、国家に対する誇りと国防に取り組むことの重要性について、正しく理解することは、極めて重要です。
そのため、学校教育の場はもちろんのことあらゆる機会を通じ、国防意識の高揚を図るための各種施策の充実を要望いたします。これにより、自衛隊に対する理解もさらに促進するものと確信します。
第三点 自衛官の処遇向上
自衛官及び自衛隊部隊等に対する施策は、逐次充実してきており、関係各位のご努力に深甚なる敬意を表します。しかしながら大変なご努力にもかかわらず、自衛官の処遇は、諸外国軍人の処遇と比較してもなお不十分であり、国家として自衛官の責任感・使命感に応えきれていないと感じます。自衛官の特殊性を十分に考慮した各般の処遇を改善することで、現職自衛官の任務遂行に国家として報いるとともに、大変に困難な状況にある自衛官募集の問題を解決することにもつながると確信します。
令和5年8月1日
全国防衛協会連合会
会長 大宮 英明
令和4年度『防衛問題に関する要望書』
7月29日、令和4年度『防衛問題に関する要望書』を佃会長から岸防衛相に対し手交
全国防衛協会連合会は、各都道府県防衛協会の連合体として「防衛意識の高揚」と「自衛隊への支援・協力」を目的に活動しています。共通の目的を持つ民間有志の集まりとして、市民の立場の素朴な疑問から、防衛問題に関して要望するものです。
我が国を取り巻く安全保障環境が近年一層厳しさを増す中、関係者の努力は並大抵のものでないことを十分理解し、応援しています。その一方で国民の国防意識や自衛隊に対する理解は、残念ながら決して高くはありません。
そのため、国防に関する記述が欠落している憲法をできるだけすみやかに改正して、国防の中核たる自衛隊の位置づけを明確化することを要望します。憲法改正により、国民の自らの国を守るとの国防意識が高まるとともに自衛隊に対する理解が格段に進むものと確信します。
憲法改正と同様に、国防のさらなる充実を図る上で、国民一人一人が、国家に対する誇りと国防に取り組むことの重要性について、正しく理解することは、極めて重要です。
そのため、学校教育の場はもちろんのことあらゆる機会を通じ、国防意識の高揚を図るための各種施策の充実を要望いたします。これにより、自衛隊に対する理解もさらに促進するものと確信します。
第三点 自衛官の処遇向上
自衛官及び自衛隊部隊等に対する施策は、逐次充実してきており、関係各位のご努力に深甚なる敬意を表します。しかしながら大変なご努力にもかかわらず、自衛官の処遇は、諸外国軍人の処遇と比較してもなお不十分であり、国家として自衛官の責任感・使命感に応えきれていないと感じます。自衛官の特殊性を十分に考慮した各般の処遇を改善することで、現職自衛官の任務遂行に国家として報いると共に、大変に困難な状況にある自衛官募集の問題を解決することにもつながると確信します。
令和4年7月29日
全国防衛協会連合会
会長 佃 和夫
令和3年度要望書
令和3年度「防衛問題に関する要望書」(全文)
令和2年度要望書
7月7日佃会長から高橋防衛事務次官に提出 防衛協会会報第152号(2.10.1)掲載
令和2年度「防衛問題に関する要望書」(全文)
令和年度「防衛問題に関する要望書」
防衛協会会報第147号(1.10.1)掲載
令和元年度「防衛問題に関する要望書」(全文)
平成30年度「防衛問題に関する要望書」
防衛事務次官に要望書提出
全国防衛協会連合会は、金澤博範理事長、要望書の作成を担当した石野次男常任理事及び中里逸朗事務局長が出席した。
全国防衛協会連合会は、国を愛し、自衛隊の健全な発展を願う民間有志の集まりであり、各都道府県防衛協会等の連合体として発足以来、「防衛意識の高揚」と「自衛隊への支援・協力」を目的に全国運動を展開している。この活動の一環として、一市民の立場から我が国の防衛を真摯に考え、感じる素朴な疑問・課題を取りまとめ、毎年、政府及び関係方面にその解決方を訴えている。
(「平成三〇年度 防衛問題に関する要望書」については、その全文を防衛協会会報第143号(30・7・10)に掲載)
全国防衛協会連合会定期総会で配布
要望書全文
任務遂行に当たり、我が国及びその周辺地域の平和と安定を目標に築き上げてきたこれまでの整備構想の枠内で十分なのか、また、2020年の東京オリンピック開催を控え、国際テロへの対応は十分なのか、これまでも国際平和協力活動等、既に増大しつつある任務の実施に対し、十分な増員もなく、概ね現状規模で対応してきましたが、もはや限界にきているのではと懸念しております。更にそれに応じた必要な防衛予算を確保して頂くようお願い申し上げます。
全国防衛協会連合会 会長 佃 和夫
平成29年度「防衛問題に関する要望書」
「要望書」防衛事務次官へ提出(29.8.9)
全国防衛協会連合会は、金澤博範理事長、要望書の作成を担当した石野次男常任理事及び松本謙一事務局長が出席した。 全国防衛協会連合会は、国を愛し、自衛隊の健全な発展を願う民間有志の集まりであり、各都道府県防衛協会等の連合体として発足以来、「防衛意識の高揚」と「自衛隊への支援・協力」を目的に全国運動を展開している。この活動の一環として、一市民の立場から我が国の防衛を真摯に考え、感じる素朴な疑問・課題を取りまとめ、毎年、政府及び関係方面にその解決方を訴えている。
(「平成29年度「防衛問題に関する要望書」については、その全文を防衛協会会報第139号(29.7.1)に掲載)
要望書全文
- 第一点は、最も根本的課題である我が国防衛の基本的考え方を憲法に明確に規定し、国民誰もが疑問を生ずることなく同方針のもとに結束できる基盤を確立することであります。そのため、現在進めておられる国民的議論の醸成を一層促進し、できる限り早期に具体的憲法改正案を国民に提示し、その判断を仰いでいただくよう切望いたします。
- 第二点は、各機関等と連携した国防への取り組み体制の強化であります。平成二十五年に策定された「国家安全保障戦略」において、我が国と郷土を愛する心を養い、防衛省のみならず関係省庁始め地方公共団体、民間部門等相連携し、国家全体として国防に取り組む枠組みと方向性が示されましたが、その深化と具現化を是非強力に進めていただくようお願い申し上げます。
- 第三点は、安全保障環境に応じた防衛力整備の着実な実行であります。自衛隊が平和安全法制により新たに拡大した任務を遺憾なく遂行しうるために不可欠な所要の装備と隊員の確保並びに人員充足率の向上には是非格段の配慮をお願いいたします。拡大された任務の実施に当たり、我が国及びその周辺地域の平和と安定を目標に築き上げてきたこれまでの整備構想の枠内で十分なのか、また、近年激化している国際テロへの対応は十分なのか、これまでも国際平和協力活動等、既に増大しつつある任務の実施に対し、十分な増員もなく、概ね現状規模で対応してきている状況はもはや限界にきているのではないかと懸念しております。即ち、既に策定されている「防衛計画の大綱」、「中期防衛力整備計画」の見直しも視野に入れて対応する必要があると考えております。それに応じて、必要な防衛予算を確保していただくようお願い申し上げます。
- 第四点は、地球を俯瞰したグローバルな安全保障態勢の確立、特に、その基軸である日米同盟の実効性の強化であります。日米安保体制を中核とする日米同盟は、我が国のみならず、アジア太平洋地域、さらには世界全体の安定と繁栄のための「公共財」として機能しており、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増している現状を踏まえると、その強化は、我が国の安全の確保にとってこれまで以上に重要となっております。同時に友好国との信頼・協力関係の重要性も増しております。日米同盟の実効性の更なる強化とともに、友好国との信頼・協力関係の強化に向けた不断の努力の推進もお願い申し上げます。
- 第五点は、隊員たちに対する栄典、礼遇等の制度の確立であります。「防衛出動」下令時においては、通常の公務災害補償に比べ、より手厚い措置が講じられると承知しておりますが、任務拡大に伴う「防衛出動」以外の行動時において、不幸にも隊員に死傷者が出た場合のご遺族等に対する手厚い補償と国家のために尽くされたご本人の功績に対する名誉の付与について十分ご検討いただき、隊員が高い士気と誇りをもって任務を遂行できるような栄典・礼遇、公務災害補償等の制度造りを推進していただくようお願いするものであります。 以上要望いたします。
平成28年度「防衛問題に関する要望書」
防衛事務次官に要望書提出
全国防衛協会連合会は、金澤博範理事長、要望書の作成を担当した松下泰士常任理事及び松本謙一事務局長が出席した。
全国防衛協会連合会は、国を愛し、自衛隊の健全な発展を願う民間有志の集まりであり、各都道府県防衛協会等の連合体として発足以来、「防衛意識の高揚」と「自衛隊への支援・協力」を目的に全国運動を展開している。
この活動の一環として、一市民の立場から我が国の防衛を真摯に考え、感じる素朴な疑問・課題を取りまとめ、毎年、政府及び関係方面にその解決方を訴えている。
要望書全文
この活動の一環として、一市民の立場から我が国の防衛を真摯に考え、感じる素朴な疑問・課題を取りまとめ、毎年、政府及び関係方面にその解決方を訴えてまいりました。
幸い、これまで関係者のご尽力、殊に昨年の国会において、平和安全法制が成立したことにより、私共がこれまで要望してきた課題については、かなりの部分、その解決を図ることができ、誠に喜ばしく思っております。
しかし、今なお残された課題等があることも事実であり、次に掲げる項目について改めて要望いたします。
- 第一点は、最も根本的課題である我が国防衛の基本的考え方を憲法に明確に規定し、国民誰もが疑問を生ずることなく同方針のもとに結束できる基盤を確立することであります。そのため、現在進めておられる国民的議論の醸成を一層促進し、できる限り早期に具体的憲法改正案を国民に提示し、その判断を仰いでいただくよう切望いたします。
- 第二点は、防衛力の整備を引き続き着実に進めるとともに必要な予算を確保してもらいたいということであります。その際、平成二十五年に策定された「国家安全保障戦略」において、我が国と郷土を愛する心を養い、防衛省のみならず関係省庁始め地方公共団体、民間部門等相連携し、国家全体として国防に取り組む枠組みと方向性が示されましたが、その深化と具現化を是非強力に進めていただくようお願い申し上げます。
- 第三点は、防衛力自体の整備に当たっては、自衛隊が今回の平和安全法制により新たに拡大した任務を遺憾なく遂行しうるために不可欠な、所要の装備と増員の確保並びに人員充足率の向上には是非格段の配慮をお願いいたします。即ち、既に策定されている「防衛計画の大綱」、「中期防」の見直しも視野に入れて対応する必要があると考えております。言うまでもなく今回の任務の拡大は、主たる任務として行うものである以上、これまで狭く捉えて我が国及びその周辺地域の平和と安定を目標に築き上げてきた整備構想の枠内では処理できないのではないか、この流れの下では、これまで築き上げてきた抑止力を逆に薄めることになりかねないのではないかと懸念いたしております。また近年激化している国際テロに対する対策も喫緊の課題ではないかと憂慮しています。これまでも国際平和協力活動等、現実に増大する任務の拡大に対し、目立った増員もなく、概ね現状ないしマイナス規模で対応してきている状況はもはや限界にきているとの声に真摯に耳を傾ける必要があります。
- 第四点は、地球を俯瞰したグローバルな安全保障態勢の確立、特に、その基軸である日米同盟の実効性の確保、強化に向けた不断の努力の推進をお願い申し上げます。
- 第五点は、今回の任務拡大により派遣される隊員の安全確保には一段の慎重な配慮が求められるところであります。もとより、政府は武器の使用権限を含め不測の事態を招かないための安全措置にきめ細かな配慮をしておられると承知いたしておりますが、それでもなお不測の事態が起こりえないとは誰も断言できません。そうである以上、そうしたリスクに備える必要があります。かつて有事法制の一環として、「防衛出動」下令時のかかる事態にたいしては、通常の公務災害補償に比べ、より手厚い措置が採られていると承知しております。こうした観点も踏まえ、万万一、不幸にも隊員に死傷者が出た場合のご遺族等に対する手厚い補償と国家のために尽くされたご本人の功績に対する名誉の付与についても十分ご検討いただき、隊員が高い士気と誇りをもって任務を遂行できるような栄典・礼遇、公務災害補償等の制度造りをしていただくようお願いするものであります。
平成27年度「防衛問題に関する要望書」
防衛事務次官に要望書提出
要望書全文
全国防衛協会連合会は、国を愛し、自衛隊の健全な発展を願う民間有志の集まりである各都道府県防衛協会等の連合体であり、かねてから「防衛意識の高揚」と「自衛隊への支援・協力」を目的として全国運動を展開しております。
一昨年、初めて国家安全保障戦略(以下、『戦略』)が策定され、これを踏まえて防衛計画の大綱(以下、『大綱』)、中期防衛力整備計画(以下、『中期防』)が策定されたことは、安全保障において国家全体として国防に取り組む枠組みと方向性を一段と明確にしたものであり、限られた資源の下、国家としての防衛努力の整合性を効果的・効率的に図れることとなり、一層厳しさを増している安全保障環境に適切に対応できるものと期待いたしております。
特に、「防衛力」と「防衛力を支える基盤」という捉え方のもと、官民一体となり国防の目的を達成するという考え方は、極めて大事なことであり、当協会が目指している活動の方向性とも一致いたしております。
また、昨年7月安全保障法制の整備について閣議決定され、私共がこれまで要望してきた課題の多くについて解決の方向が示されたことは誠に喜ばしい事であります。
以下、かかる状況も踏まえて下記5項目について要望いたします。
また、防衛力の「質」と「量」及びその予算の確保は国家としての国防決意そのものの直截的表示であり、来年度以降も引き続き『中期防』に示された防衛力の確保を要望します。
その際、特に自衛隊員の職務の特殊性を反映した処遇改善とその増員が今後とも継続される等、我が国として確固とした防衛力構築のための不断の努力が払われるよう切望するものであります。
更に、「日米安全保障体制の充実強化」、「領域警備体制の強化」、「国際平和協力活動に関する体制の整備」等、残された課題については、現在進められている法制の具体的整備を大いに関心をもって注視いたしておりますが、是非この際結着、解決が図られますように期待いたしております。
1 防衛意識の高揚と憲法改正への環境整備
2 防衛力の整備と予算の確保
3 日米安全保障体制の充実強化
4 領域警備体制の強化
5 国際平和協力活動に関する体制の整備
国の繁栄と国民の幸福は、国の安全が確保されてはじめて得られるものであり、そのためには国民一人一人が国を守る気概を持つことが肝要であります。
近年、自衛隊・防衛問題に関する国民の関心は高まってはいるものの、当事者意識としての具現は今一歩の感を否めません。
そのような状況で、一昨年、『戦略』の中で社会的基盤の強化が示され、特に「我が国と郷土を愛する心を養う」ことは防衛意識の高揚の原点であり、防衛省のみならず関係省庁一体となり、国を挙げてその徹底が望まれるところであります。
また、『大綱』等の中での「防衛力の能力発揮のための基盤」の確立・強化において、地方公共団体や民間部門との連携等国民の役割を具体的かつ身近に捉えて示されたことは防衛意識の高揚に極めて効果的であると考えます。
今後、施策等の推進に当たっては国民の広範な理解を得ることが極めて重要であり、情報の発信、普及の一助となるよう、当協会としてもより一層防衛意識の高揚活動に努めてまいります。
一方、防衛意識の高揚にあたって、自衛隊の位置づけ等国防の基盤が国の基本法である憲法において明確でないことが国民の心理に少なからず影響しているものと考えられます。
そのような中で、最近では憲法改正についての議論も国民の間で漸次活発になってきており、また憲法改正に必要な「国民投票法」も既に制定されております。
このような観点から、国家安全保障の最終的な担保である防衛力の位置づけ等、国民の防衛意識に大きな影響を与える憲法の改正について、集団的自衛権のありようも含め、自由闊達な議論が行える環境の整備を推進されますとともに、できる限り早期に国民の判断を求めていただくよう要望いたします。
2.防衛力の整備と予算の確保
我が国自身の防衛努力として、防衛力の規模と予算の程度は国防決意の強さそのものの表明であり、国民の安心や同盟国・友好国の信頼を促進するものであります。
近年、我が国では、周辺諸国の軍備増強や近代化にもかかわらず、陸海空自衛隊の基幹部隊の縮減や主要装備品、定員の削減が継続され、過去10年余にわたる防衛予算の削減もあって、周辺国に対する我が国の防衛意思の誤ったメッセージとなり、我が国の安全保障環境に各種の不安定要因をもたらしました。
特に北朝鮮は弾道ミサイルの発射や核実験の強行のみならず、我が国の具体的地名を挙げてミサイルの射撃圏内にある等の挑発的言動を続けており、また、中国は力による現状変更を試み、高圧的な対応のもと、度重なる我が国領海への侵入や自衛艦に対する火器管制レーダーの照射、或いは領空侵犯や「東シナ海防空識別区」の一方的な設定等、不測の事態を招きかねない行為を行っています。
こうした中、自衛隊が対応すべき各種活動を下支えする防衛力の「質」と「量」を必要かつ十分に確保し、併せて、防衛の能力発揮のための種々の基盤を強化することは、ハード・ソフト両面にわたり総合的な防衛力を構築するものであり、限られた防衛力と防衛予算を補完して効果的・効率的な防衛力の整備となっており望ましい事であります。
今後は、『大綱』に示す防衛構想を担保するため、『中期防』に基づく事業の着実な整備とそのための予算の確保を引き続き切望いたします。
その際、防衛任務と併行して対応する大規模災害等への対処、今後拡大が予想される国際平和協力活動等々を考慮し、これらの任務を円滑に遂行し得るための人員の確保と隊員の使命に相応しい処遇には今後とも特段の配慮がなされるよう切望いたします。
3. 日米安全保障体制の充実強化
国土が狭隘で資源にも恵まれず、核を保有しない我が国が独力で自国の平和と安全を守ることは極めて困難であります。
そのため、世界の超大国であり、基本的人権、自由、民主主義といった普遍的価値を共有する米国との間で安全保障体制を維持することは、我が国にとって不可欠なことであります。
因みに、国際連合については、五大国全ての同意を得ない限り重要事項の決定ができない現状では、多くを期待することはできません。
今や、60年余の歴史を有する日米同盟は、我が国自身の防衛努力と相俟って我が国安全保障の基軸であるのみならず、アジア太平洋地域更には国際社会の平和と安定に不可欠な役割を果たしています。
ところで日米安保体制は、我が国の安全を確保し、我が国を含む地域の平和と安全を維持するため、米国は我が国を防衛する義務を負う一方、我が国は米国に基地を提供する義務を負うという体制です。
したがって日米安保体制の信頼性・実効性を担保するためには、極東における米軍のプレゼンスが必要であり、それには基地の安定使用が不可欠であります。
しかしながら、基地の所在する地元では騒音や安全確保等の問題により基地に対する反対が生じがちであります。
この問題の解決は、先ずもって政治が日米安保体制の意義を大所高所から判断して、基地周辺住民に対しては国の安全と平和のための協力への理解を求め、全国の国民に対してはそれに伴う財政負担等への理解を求めるべき性質のものであって、一部の国民世論のみに委ねるべき性質のものではないと考えます。
また、日米が純然たる平時でもなく有事でもないいわゆるグレーゾーンの事態も含め各種事態にシームレスに連携・協力するためには、日米間の相互運用性の実効性の強化を図るとともに、各種の運用協力等を一層緊密に推進し、確固たる同盟関係の構築に努められるよう要望いたします。
4. 領域警備体制の強化
近年、いわゆるグレーゾーンの事態が増加する傾向にあり、関係機関のみならず、地方公共団体等とも連携して、事態の推移に応じ、政府一体となりシームレスに対応することが必要となりました。
『大綱』では各種対処事態として「周辺海空域における安全確保」「島嶼部に対する攻撃への対応」、「弾道ミサイル攻撃への対処」等を重視するとされていますが、我が国周辺における武装工作船・公船等による不法行為、航空機の領空侵犯等々への対応は喫緊の課題であります。
現行法においては、領海警備は一義的には海上保安庁、領空警備は自衛隊の任務となっており、テロ、ゲリラ、不審船等への対応については法整備が図られ、一応の強化をみたところでありますが、近年、日常的になっている尖閣諸島における中国公船の領海への侵入等に対する取締り態勢、領空侵犯機に対する武器使用等の権限等その実効性には不安もあります。
また、テロ、高度に訓練された重装備のゲリラ・特殊部隊等への対応には、海上保安庁や警察の能力・権限を超えるものがあり、これらに的確に対処するには自衛隊による対処が必要であります。
このため、領域警備としての平時の警戒監視任務の重要性と、これらに自衛隊が対処するのは、海上警備行動、自衛隊や米軍の施設・区域を守る警護出動あるいは治安出動といったところとなりますが、その場合でも、武器を使用して相手に危害を与えることが出来るのは、原則、正当防衛、緊急避難に限られるなど強制措置権限が制限されている現状に眼を向ける必要があります。
現下の安全保障環境においては、警察行動と防衛行動の狭間にあるような各種事態に的確に対処できる体制の整備が不可欠であります。 そ
のため、これらに自衛隊が有効に対処しうるよう、島嶼防衛を含むいわゆる「領域警備法制」の整備を含め速やかな体制の強化を要望いたします。
5.国際平和協力活動に関する体制の整備
『戦略』に掲げる国際協調主義に基づく積極的平和主義に立ち、国連平和維持活動(以下、PKO)などに一層積極的に協力するためには、平成4年以来の数々のPKOや国際緊急援助活動等の国際平和協力活動の実績及び教訓を踏まえて派遣体制を整備することが必要と考えます。
特に、従来の派遣ではPKO等の一部を除き派遣の度ごとに、所要の法律を整備し、それに基づく準備、派遣活動を実施してきました。
しかしながら、国際平和協力活動が自衛隊の「本来任務」とされた今日では、これまで以上に時期を失することなく派遣決定が行われ、それに基づく速やかな対応が求められます。また、国際平和協力活動の中には、これまで時限的な特別法で対処してきたものがありますが、派遣後の事態の推移により延長を必要とする場合には改めて法的手続きを要し、時には活動を中断せざるを得ないことも生じました。
このようなことから、国際平和協力活動全般を律する恒久的な法律を制定して、自衛隊の派遣に関する基本方針を明確にすることにより、予め派遣態勢の整備が進められ、派遣決定等も迅速に行われるとともに、その活動が中断せざるを得ないようなことにならないようにしておく必要があると考えます。
更に、今後の国際平和協力活動においては、これまでにも増して厳しい治安状況等の中での活動を余儀なくされることも予想され、派遣隊員の安全が確保され、国際平和協力活動が効果的に行われるよう、武器使用基準を他国なみに見直すことが必要と考えます。
国際平和協力活動への対応能力の強化とPKO参加5原則等我が国参加の在り方を検討するにあたっては、国際平和協力活動が今後より確実かつ効果的に実施されるよう、上述の改善を含め法体制の早急な整備を要望いたします。
平成26年度「防衛問題に関する要望書」
平成26年度防衛問題に関する要望書全文
全国防衛協会連合会は、国を愛し、自衛隊の健全な発展を願う民間有志の集まりである各都道府県防衛協会等の連合体であり、かねてから「防衛意識の高揚」と「自衛隊への支援・協力」を目的として全国運動を展開しております。
昨年、初めて国家安全保障戦略(以下、『戦略』)が策定され、これを踏まえて防衛計画の大綱(以下、『大綱』)、中期防衛力整備計画(以下、『中期防』)が策定されたことは、安全保障において国家全体として国防に取り組む枠組みと方向性を一段と明確にしたものであり、限られた資源の下国家としての防衛努力の整合性を効果的・効率的に図れることとなり、一層厳しさを増している安全保障環境に適切に対応できるものと期待しております。特に、「防衛力」と「防衛力を支える基盤」という捉え方のもと、官民一体となり国防の目的を達成するという考え方は、当協会が目指していた活動の方向性とも一致し喜ばしい事であります。
以下、内外諸情勢を踏まえて下記5項目について要望いたします。
先ずは、国の守りの基本を示すべき憲法の改正について、設置後5年を経た衆参両院の憲法審査会が今後精力的に議論を重ね、その促進と同時に国民的議論を醸成し、改正に向けた実質的、具体的な動きに至るよう期待いたしております。
また、防衛力の質と量、及びその予算の確保は国家としての国防決意そのものの直截的表示であり、来年度以降も引き続き『中期防』に示された防衛力の確保を要望します。その際、特に自衛隊員の職務の特殊性を反映した処遇改善とその増員が今後とも継続される等、我が国として確固とした防衛力構築のための不断の努力が払われるよう切望するものであります。
更に、「日米安全保障体制の充実強化」、「領域警備体制の強化」、「国際平和協力活動に関する体制の整備」等、残された課題についても解決に向けた具体的な努力をお願いするものであります。
要望項目
1 防衛意識の高揚とその環境整備
2 防衛力の整備と予算の確保
3 日米安全保障体制の充実強化
4 領域警備体制の強化
5 国際平和協力活動に関する体制の整備
平成26年6月
全国防衛協会連合会
会長 佃 和夫
国の繁栄と国民の幸福は、国の安全が確保されてはじめて得られるものであり、そのためには国民一人ひとりが国を守る気概を持つことが肝要であります。
近年、自衛隊・防衛問題に関する国民の関心は高まってはいるものの、当事者意識としての具現は今一歩の感を否めません。そのような状況で、この度、『戦略』の中で社会的基盤の強化が示され、特に「我が国と郷土を愛する心を養う」ことは防衛意識の高揚の原点であり、防衛省のみならず関係省庁一体となり、国を挙げてその徹底が望まれるところであります。また、『大綱』等の中での「防衛力の能力発揮のための基盤」の確立・強化において、地方公共団体や民間部門との連携等国民の役割を具体的かつ身近に捉えて示されたことは防衛意識の高揚に極めて効果的であると考えます。今後施策等の推進に当たっては国民の広範な理解を得ることが極めて重要であり、情報の発信、普及の一助となるよう、当協会としても防衛意識の高揚活動に今後とも努めてまいります。
一方、防衛意識の高揚にあたって、自衛隊の位置づけ等国防の基盤が国の基本法である憲法において明確でないことが国民の心理に少なからず影響しているものと考えられます。そのような中で、最近では憲法改正についての議論も国民の間で漸次活発になってきており、また憲法改正に必要な「国民投票法」も既に制定されています。このような観点から、国家安全保障の最終的な担保である防衛力の位置づけ等、国民の防衛意識に大きな影響を与える憲法の改正について、集団的自衛権の問題も含め、自由闊達な議論が行える環境の整備を推進されるよう要望いたします。
我が国自身の防衛努力として、防衛力の規模と予算の程度は国防決意の強さそのものの表明であり、国民の安心や同盟国や友好国の信頼を促進するものであります。
近年、我が国では、周辺諸国の軍備増強や近代化にもかかわらず、陸海空自衛隊の基幹部隊の縮減や主要装備品、定員の削減が継続され、防衛予算は一昨年まで10年連続で減少してきました。その結果、周辺国に対する我が国の防衛意思の誤ったメッセージとなり、我が国の安全保障環境に各種の不安定要因をもたらしました。特に北朝鮮は弾道ミサイルの発射や核実験の強行のみならず、我が国の具体的地名を挙げてミサイルの射撃圏内にある等と挑発的言動を続けており、また、中国は力による現状変更を試み、高圧的な対応のもと、たび重なる我が国領海への侵入や自衛艦に対する火器管制レーダーの照射、或いは領空侵犯や「東シナ海防空識別区」の一方的な設定等、不測の事態を招きかねない行為を行っています。
こうした中、自衛隊が対応すべき各種活動を下支えする防衛力の「質」と「量」を必要かつ十分に確保し、併せて、防衛の能力発揮のための種々の基盤を強化することは、ハード・ソフト両面にわたり総合的な防衛力を構築するものであり、限られた防衛力と防衛予算を補完して効果的・効率的な防衛力の整備となっており望ましい事であります。
今後は、『大綱』に示す防衛構想を担保するため、『中期防』に基づく事業の着実な整備とそのための予算の確保を引き続き切望いたします。その際、防衛任務と併行して対応する大規模災害等への対処、今後拡大が予想される国際平和協力活動等々を考慮し、これらの任務を円滑に遂行し得るための人員の確保と隊員の使命に相応しい処遇には今後とも特段の配慮がなされるよう切に要望いたします。
3.日米安全保障体制の充実強化
国土が狭隘で資源にも恵まれず、核を保有しない我が国が独力で自国の平和と安全を守ることは極めて困難であります。そのため、世界の超大国であり、基本的人権、自由、民主主義といった普遍的価値を共有する米国との間で安全保障体制を維持することは、我が国にとって不可欠なことであります。
因みに、国際連合については、五大国全ての同意を得ない限り重要事項の決定ができない現状では、多くを期待することはできません。今や、60年余の歴史を有する日米同盟は、我が国自身の防衛努力と相俟って我が国安全保障の基軸であるのみならず、アジア太平洋地域、更には国際社会の平和と安定に不可欠な役割を果たしています。
ところで日米安保体制は、我が国の安全を確保し、我が国を含む地域の平和と安全を維持するため、米国は我が国を防衛する義務を負う一方、わが国は米国に基地を提供する義務を負うという体制です。したがって日米安保体制の信頼性・実効性を担保するためには、極東における米軍のプレゼンスが必要であり、それには基地の安定使用が不可欠であります。
しかしながら、基地の所在する地元では騒音や安全確保等の問題により基地に対する反対が生じがちであります。この問題の解決は、先ずもって政治が日米安保体制の意義を大所高所から判断して、基地周辺住民に対しては国の安全と平和のための協力への理解を求め、全国の国民に対してはそれに伴う財政負担等への理解を求めるべき性質のものであって、一部の国民世論のみに委ねるべき性質のものではないと考えます。
また、日米が純然たる平時でもなく有事でもないいわゆるグレーゾーンの事態も含め各種事態にシームレスに連携・協力するためには、日米間の相互運用性の実効性の強化を図ると共に各種の運用協力等を一層緊密に推進し、確固たる同盟関係の構築に努められるよう要望いたします。
4.領域警備体制の強化
近年、いわゆるグレーゾーンの事態が増加する傾向にあり、関係機関のみならず、地方公共団体等とも連携して、事態の推移に応じ、政府一体となりシームレスに対応することが必要となりました。
『大綱』では各種対処事態として「周辺海空域における安全確保」「島嶼部に対する攻撃への対応」「弾道ミサイル攻撃への対処」等を重視するとされていますが、我が国沿海における武装工作船・公船等による不法行為、航空機の領空侵犯等々への対応は喫緊の重要な課題であります。
現行法においては、領海警備は一義的には海上保安庁、領空警備は自衛隊の任務となっており、テロ、ゲリラ、不審船等への対応については法整備が図られ、一応の強化をみたところでありますが、一昨年来、日常的になっている尖閣諸島における中国公船の領海への侵入等に対する取締り態勢、領空侵犯機に対する武器使用等の権限等その実効性には不安もあります。また、テロ、高度に訓練された重装備のゲリラ・特殊部隊等への対応には、海上保安庁や警察の能力・権限を超えるものがあり、これらに的確に対処するには自衛隊による対処も必要と考えられます。
しかしながら現行法で自衛隊がこれらに対処できるのは、海上警備行動、自衛隊や米軍の施設・区域を守る警護出動あるいは治安出動といったところで、その場合でも、武器を使用して相手に危害を与えることが出来るのは、原則、正当防衛、緊急避難に限られるなど強制措置権限が制限されております。現下の安全保障環境においては、警察行動と防衛行動の狭間にあるような、この種事態に的確に対処できる体制の整備が不可欠であります。このため、これらに自衛隊が有効に対処しうるよう、島嶼防衛を含む所謂「領域警備法制」の整備を含め速やかな体制の強化を要望いたします。
5.国際平和協力活動に関する体制の整備
『戦略』に掲げる国際協調主義に基づく積極的平和主義に立ち、国連平和維持活動(以下、PKO)などに一層積極的に協力するためには、平成4年以来の数々のPKOや国際緊急援助活動等の国際平和協力活動の実績及び教訓を踏まえ派遣体制を整備することが必要と考えます。特に、従来の派遣ではPKO等の一部を除き派遣の度ごとに、所要の法律を整備し、それに基づく準備、派遣活動を実施してきました。しかしながら、国際平和協力活動が自衛隊の「本来任務」とされた今日では、これまで以上に時期を失することなく派遣決定が行われ、それに基づく速やかな対応が求められます。また、国際平和協力活動の中には、これまで時限的な特別法で対処してきたものがありますが、派遣後の事態の推移により延長を必要とする場合には改めて法的手続きを要し、時には活動を中断せざるを得ないことも生じました。
このようなことから、国際平和協力活動全般を律する恒久的な法律を制定して、自衛隊の派遣に関する基本方針を明確にすることにより、予め派遣態勢の整備が進められ、派遣決定等も迅速に行われるとともに、その活動が中断せざるを得ないようなことにならないようにしておく必要があると考えます。更に、今後の国際平和協力活動においては、これまでにも増して厳しい治安状況等の中での活動を余儀なくされることも予想され、派遣隊員の安全が確保され、国際平和協力活動が効果的に行われるよう、武器使用基準を他国なみに見直すことが必要と考えます。
平成25年度「防衛問題に関する要望書」
全国防衛協会連合会は、国を愛し、自衛隊の健全な発展を願う民間有志の集まりである各都道府県防衛協会等の連合体であり、かねてから「防衛意識の高揚」と「自衛隊への支援・協力」を目的として全国運動を展開しておりますが、内外諸情勢を踏まえて下記5項目について要望いたします。
昨年も概ね同旨の要望をいたしたところでありますが、設置後4年を経てようやく改正論議を開始し、両院そろって始動し始めた衆参両院の憲法審査会が今後精力的な議論を重ねられ、その促進と同時に国民的議論を醸成し、改正に向けた実質的、具体的な動きに至るよう期待いたしております。
また、ここ10年間連続して減少を続けてきた防衛予算の増額への転換、更には私共が特に喫緊の課題と訴えてきた自衛隊がその任務を円滑に遂行し得るための人員の確保については、この度その改善を図った平成25年度防衛予算の成立を見たところであり、一歩前進と受け止めております。また、平成22年末に策定された現「防衛計画の大綱」の見直し及び「中期防衛力整備計画」の廃止・新計画の策定も現在進められております。私共は防衛予算の増額と自衛官等の増員の流れが今後とも継続され、確固とした防衛力構築のための不断の努力が払われるように切望するものであります。同時に「日米安全保障体制の充実強化」、「領域警備法制の整備」、「国際平和協力活動に関する体制の整備」等、残された課題についても解決に向けた具体的な努力をお願いするものであります。
1 防衛意識の高揚とその環境整備
2 防衛力の整備と予算の確保
3 日米安全保障体制の充実強化
4 領域警備法制の整備
5 国際平和協力活動に関する体制の整備
平成25年6月
全国防衛協会連合会
会長 佃 和夫
1 防衛意識の高揚とその環境整備
国の繁栄と国民の幸福は、国の安全が確保されてはじめて得られるものであり、そのためには国民一人一人が国を守る気概を持つことが肝要であります。
このような考えから、全国防衛協会連合会では、防衛意識の普及・高揚を最大の目的として活動を行っていますが、近時わが国においては自らの国は自らが守るべきものであることを忘れ、そもそも国を愛する気持ちすら失われつつあるように見受けられます。
これは、先の大戦による惨禍があまりにも大きかったこと、平和実現への期待を国際社会に対し過度に抱いていること、戦後わが国の防衛を米国に依存し、幸いにも長期間に亘って平和を享受してきたことなどによるものと考えられますが、その根底には国の基本法である憲法における自衛権についての規定が必ずしも明確でないことが国民の心理に少なからず影響しているものと考えます。
しかしながら、最近では憲法改正についての議論も国民の間で漸次活発になってきており、また憲法改正に必要な「国民投票法」も既に制定されています。
このような観点から、自衛隊の位置付け、役割を明確にする等、国防の基盤をなし国民の防衛問題に対する意識に大きな影響を与える憲法の改正について、集団的自衛権の問題を含め、自由闊達な議論が行える環境の整備を推進されるよう要望いたします。
2 防衛力の整備と予算の確保
近年、わが国では陸海空自衛隊の基幹部隊の縮減や主要装備品、定員の削減が継続され、防衛予算は10年連続で減少してきました。
一方、アジア周辺諸国では軍備の増強が行われ、中でも中国の国防費は過去24年間で約30倍に伸びており、このままでは、わが国防衛の抑止力が大きく低下し、特に周辺国が保有している核、弾道ミサイルや近代化を進めている艦艇、航空機、更にはテロ攻撃等への対処に必要な撃破能力や情報収集能力が著しく不足することとなることはもとより、すでに国内における駐屯地、基地等の運営にも支障を来してきていると聞き及び、危惧しておりました。
こうした中、この度この流れを転換し、南西地域の対応を重視した自衛官の増員と防衛予算全体の増額を盛り込んだ平成25年度防衛予算が成立いたしました。また、現下の我が国及びその周辺情勢の厳しさを踏まえ、平成22年末に策定された現「防衛計画の大綱」の見直し及び「中期防衛力整備計画」の廃止・新計画の策定も現在進められております。わが国が直面する国際環境を考慮し、わが国の平和と安全はもとより国際社会の平和の維持に寄与し得るためには、不断の防衛力整備の努力が不可欠であると考えます。確固とした防衛力を構築するための着実な整備とそのための予算の確保を引き続き切望いたします。その際、東日本大震災における自衛隊の活動を見るまでもなく、防衛任務と併行して対応しなければならない大規模災害への対処、今後拡大が予想される国際平和協力活動等々を考慮すると、これらの任務を円滑に遂行し得るための増員を含めた人員の確保及び使命に相応しい処遇処置には今後とも特段の配慮がなされるよう切に要望いたします。
3 日米安全保障体制の充実強化
国土が狭隘で資源にも恵まれず、核を保有しないわが国が独力で自国の平和と安全を守ることは極めて困難であります。そのため、世界の超大国であり、基本的人権、自由、民主主義という価値観を共有する米国との間で安全保障体制を維持することは、わが国にとって不可欠なことであります。
因みに、国際連合については、五大国全ての同意を得ない限り重要事項の決定ができない現状では、多くを期待することはできません。
ところで日米安保体制は、わが国の安全を確保し、わが国を含む地域の平和と安全を維持するため、米国はわが国を防衛する義務を負い、わが国は米国に基地を提供する義務を負うという体制です。
したがって日米安保体制の信頼性・実効性を担保するためには、極東における米軍のプレゼンスが必要であり、それには基地の安定使用が不可欠であります。
しかしながら、基地の所在する地元では騒音や安全確保等の問題により基地に対する反対が生じがちであります。この問題の解決は、先ずもって政治が日米安保体制の意義を大所高所から判断して、基地周辺住民に対しては国の安全と平和のための協力への理解を求め、全国の国民に対してはそれに伴う財政負担等への理解を求めるべき性質のものであって、一部の国民世論のみに委ねるべき性質のものではないと考えます。
かかる面にも思いを致され、安全保障条約締結50周年を経た今日、改めてこれまで両国間の長きにわたる努力により積み上げてこられた日米安保体制の信頼性の維持向上に留意し、両国間の防衛協力、取り分け相互運用性の実効性をより強化し、確固たる同盟関係の構築に努められるよう要望いたします。
4 領域警備法制の整備
現大綱では、防衛力の役割として、実効的な抑止と対処能力の保持を掲げ、「周辺海空域の安全確保」「ゲリラや特殊部隊による攻撃対応」等を重視するとされていますが、今後はテロ、ゲリラ、特殊部隊等による侵入攻撃や、わが国沿海における武装工作船・公船等による不法行為、航空機の領空侵犯等々への対応が当面の重要な課題であります。
現行法においては、領海警備は一次的には海上保安庁、領空警備は自衛隊の任務となっており、テロ、ゲリラ、不審船等への対応については法整備が図られ、一応の強化をみたところでありますが、殊に昨年来日常的になっている尖閣諸島における中国公船の領海への侵入等に対する取締り態勢、領空侵犯機に対する武器使用等の権限等その実効性には不安もあります。
また、テロ、高度に訓練された重装備のゲリラ・特殊部隊等への対応には、海上保安庁、警察の能力、権限を超えるものがあり、これらに的確に対処するには自衛隊による対処も必要と考えられます。
しかしながら現行法で自衛隊がこれらに対処できるのは、海上警備行動、自衛隊や米軍の施設・区域を守る警護出動あるいは治安出動といったところで、その場合でも、武器を使用して相手に危害を与えることが出来るのは、原則、正当防衛、緊急避難の場合に限られるなど強制措置権限が制限されております。現下の安全保障環境においては、警察行動と防衛行動の狭間にあるような、この種事態に的確な対応ができる実効性ある法の整備が不可欠であります。このため、これらに自衛隊が有効に対処しうるよう、所謂「領域警備法制」の検討を含め速やかな体制の整備を要望いたします。
5 国際平和協力活動に関する体制の整備
自衛隊は、平成4年国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)の一員として、初めて国連平和維持活動(以下、PKO活動)に参加して以来、数々のPKO活動や国際緊急援助活動等の国際平和協力活動に従事してきており、世界各国からも高い評価を得ています。これらの活動は、これまでPKO活動等の一部を除き派遣の度ごとに、所要の法律の整備、それに基づく準備を実施してきました。しかしながら、国際平和協力活動が自衛隊の「本来任務」とされた今日では、これまで以上に時期を失することなく派遣決定が行われ、それに基づく速やかな対応が求められます。また、国際平和協力活動の中には、これまで時限的な特別法で対処してきたものがありますが、派遣後の事態の推移により延長を必要とする場合には改めて法的手続きを要し、時には活動を中断させざるを得ないことも生じます。
このようなことから、これまでに実施した国際平和協力活動の実績及び教訓を踏まえ、
国際平和協力活動全般を律する恒久的な法律を制定して、自衛隊の派遣に関する基本方針を明確にすることにより、予め派遣態勢の整備が進められ、派遣決定等も迅速に行われるとともに、その活動が中断せざるを得ないようなことにならないようにしておく必要があると考えます。更に、今後の国際平和協力活動においては、これまでにも増して厳しい治安状況等の中での活動を余儀なくされることも予想され、派遣隊員の安全が確保され、国際平和協力活動が効果的に行われるよう、武器使用基準を他国なみに見直すことが必要と考えます。
国際平和協力活動への対応能力の強化とPKO参加5原則等わが国参加の在り方を検討するにあたっては、国際平和協力活動が今後より確実かつ効果的に実施されるよう、上述の改善を含め法体制の早急な整備を要望いたします。
平成24年度「防衛問題に関する要望書」
森本大臣は、まず防衛協会の日頃からの自衛隊に対する協力に謝意を述べた後、佃会長と江間理事長の説明に対し、「ご指摘いただいた点は何れも大切なことなので、法体制の整備など真摯に努力したい」と述べた。
この防衛に関する重要事項の要望は、毎年継続して防衛大臣に要望するとともに、総理大臣をはじめとする全閣僚及び衆参両議院の主要議員並びに陸海空自衛隊にも要望している。
また要望書は周知徹底のため、全国の各防衛協会等や特別会員にも配布されているが、要望した事項が逐次前進する等大きな成果を挙げているものである。
なお、主要議員には、7月19日事務局長が衆参両議院会館を訪ね、要望書を手渡し、要望した。
全国防衛協会連合会は、国を愛し、自衛隊の健全な発展を願う民間有志の集まりである各都道府県防衛協会等の連合体であり、かねてから「防衛意識の高揚」と「自衛隊への支援・協力」を目的として全国運動を展開しておりますが、内外諸情勢を踏まえて下記5項目について要望いたします。
昨年も概ね同旨の要望をいたしましたところ、その一部、即ち「武器輸出3原則」については同年12月政府において見直しが実施され、その実現を見たところであります。また同年11月には衆参両院の憲法審査会が設置後4年を経てようやく改正論議を開始し、両院そろって始動し始めました。更には国際平和協力活動を効果的に実施するための武器使用基準の見直しについても与党内での検討が進められていると承知いたしております。
私共はこれらの動きを歓迎するとともに今後の活発な議論、検討を経て解決に向けたすみやかな進展が図られることを期待しております。同時に、「防衛力の着実な整備と予算の確保」並びに「日米安全保障体制の充実強化」のための不断の努力、更には「領域警備法制の整備」等、残された課題も多く抱えており、これらについても解決に向けた具体的な努力をお願いするものであります。
中でもしっかりとした自衛隊の人的基盤の確保が今や喫緊の課題と認識いたしております。自衛隊がその任務を円滑に遂行し得るための増員を含めた人員の確保及び使命に相応しい処遇処置には特段の配慮がなされるよう切に要望いたします。
要望項目
1 防衛意識の高揚とその環境整備
2 防衛力の整備と予算の確保
3 日米安全保障体制の充実強化
4 国際平和協力活動に関する体制の整備
5 領域警備法制の整備
平成24年6月
全国防衛協会連合会
会長 佃 和夫
1.防衛意識の高揚とその環境整備
国の繁栄と国民の幸福は、国の安全が確保されてはじめて得られるものであり、そのためには国民一人一人が国を守る気概を持つことが肝要であります。
このような考えから、全国防衛協会連合会では、防衛意識の普及・高揚を最大の目的として活動を行っていますが、近時わが国においては自らの国は自らが守るべきものであることを忘れ、そもそも国を愛する気持ちすら失われつつあるように見受けられます。
これは、先の大戦による惨禍があまりにも大きかったこと、平和実現への期待を国際社会に対し過度に抱いていること、戦後わが国の防衛を米国に依存し、幸いにも長期間に亘って平和を享受してきたことなどによるものと考えられますが、その根底には国の基本法である憲法における自衛権についての規定が必ずしも明確でないことが国民の心理に少なからず影響しているものと考えます。
しかしながら、最近では憲法改正についての議論も国民の間で漸次活発になってきており、また憲法改正に必要な「国民投票法」も既に制定されています。
このような観点から、自衛隊の位置付け、役割を明確にする等、国防の基盤をなし国民の防衛問題に対する意識に大きな影響を与える憲法の改正について、集団的自衛権の問題を含め、自由闊達な議論が行える環境の整備を推進されるよう要望いたします。
近年、わが国では陸海空自衛隊の基幹部隊の縮減や主要装備品、定員の削減が継続され、防衛予算は10年連続で減少しています。しかしアジア周辺諸国では軍備の増強が行われ、中でも中国の国防費は過去20年間で約18倍に伸びています。従って、このままでは、わが国防衛の抑止力が大きく低下し、特に周辺国が保有している核、弾道ミサイルや近代化を進めている艦艇、航空機、更にはテロ攻撃等への対処に必要な撃破能力や情報収集能力が著しく不足することとなる恐れがあります。
また、定員や装備品等の削減は、すでに国内における駐屯地、基地等の運営にも支障を生じていると聞き及んでいます。
平成22年末に策定された新「防衛計画の大綱」及び新「中期防衛力整備計画」では、防衛力の整備、運用について新たな考え方と方向が示されました。わが国が直面する国際環境を考慮し、わが国の平和と安全はもとより国際社会の平和維持に寄与できるものと確信いたしますが、防衛力の整備は確実な実行が特に重要であり、今後はその実現のための着実な整備と予算の確保を要望いたします。その際、東日本大震災における自衛隊の活動を見るまでもなく、防衛任務と併行して対応しなければならない大規模災害への対処、今後益々拡大が予想される国際平和協力活動等々を考慮すると、これらの任務を円滑に遂行しうるための増員を含めた人員の確保及び使命に相応しい処遇処置には特段の配慮がなされるよう切に要望いたします。
国土が狭隘で資源にも恵まれず、核を保有しないわが国が独力で自国の平和と安全を守ることは極めて困難であります。そのため、世界の超大国であり、基本的人権、自由、民主主義という価値観を共有する米国との間で安全保障体制を維持することは、わが国にとって不可欠なことであります。因みに、国際連合については、五大国全ての同意を得ない限り重要事項の決定ができない現状では、多くを期待することはできません。
ところで日米安保体制は、わが国の安全を確保し、わが国を含む地域の平和と安全を維持するため、米国はわが国を防衛する義務を負い、わが国は米国に基地を提供する義務を負うという体制です。したがって日米安保体制の信頼性・実効性を担保するためには、極東における米軍のプレゼンスが必要であり、それには基地の安定使用が不可欠であります。
しかしながら、基地の所在する地元では騒音や安全確保等の問題により基地に対する反対が生じがちであります。この問題の解決は、先ずもって政治が日米安保体制の意義を大所高所から判断して、基地周辺住民に対しては国の安全と平和のための協力への理解を求め、全国の国民に対してはそれに伴う財政負担等への理解を求めるべき性質のものであって、一部の国民世論のみに委ねるべき性質のものではないと考えます。
かかる面にも思いを致され、安全保障条約締結50周年を経た今日、改めてこれまで両国間の長きにわたる努力により積み上げてこられた日米安保体制の信頼性の維持向上に留意し、両国間の防衛協力の実効性をより強化し、確固たる同盟関係の構築に努められるよう要望いたします。
自衛隊は、平成4年国際カンボジア暫定統治機構(UNTAC)の一員として、初めて国際平和維持活動(以下、PKO活動)に参加して以来、数々のPKO活動や国際緊急援助活動等の国際平和協力活動に従事してきており、世界各国からも高い評価を得ています。
これらの活動は、これまでPKO活動等の一部を除き派遣の度ごとに、所要の法律の整備、それに基づく準備を実施してきました。しかしながら、国際平和協力活動が自衛隊の「本来任務」とされた今日では、これまで以上に時期を失することなく派遣決定が行われ、それに基づく速やかな対応が求められます。また、国際平和協力活動の中には、これまで時限的な特別法で対処してきたものがありますが、派遣後の事態の推移により延長を必要とする場合には改めて法的手続きを要し、時には活動を中断させざるを得ないことも生じます。
このようなことから、国際平和協力活動全般を律する恒久的な法律を制定して、自衛隊の派遣に関する基本方針を明確にすることにより、予め派遣態勢の整備が進められ、派遣決定等も迅速に行われるとともに、その活動が中断せざるを得ないようなことにならないようにしておく必要があると考えます。更に、今後の国際平和協力活動においては、これまでにも増して厳しい治安状況等の中での活動を余儀なくされることも予想され、派遣隊員の安全が確保され、国際平和協力活動が効果的に行われるよう、武器使用基準を他国なみに見直すことが必要と考えます。
新大綱では、国際平和協力活動への対応能力の強化とPKO参加5原則等わが国参加の在り方を検討することとされていますが、この検討にあたっては、国際平和協力活動が今後より確実かつ効果的に実施されるよう、上述の改善を含め法体制の早急な整備を要望いたします。
新大綱では、防衛力の役割として、実効的な抑止と対処能力の保持を掲げ、「周辺海空域の安全確保」「ゲリラや特殊部隊による攻撃対応」等を重視するとされていますが、今後はテロ、ゲリラ、特殊部隊等による侵入攻撃や、既に幾つかの事例が認められるわが国沿海における武装工作船・不審船等による不法行為、潜航潜水艦の領海侵犯、航空機の領空侵犯等への対応が当面の重要な課題であります。
現行法においては、領海警備は一次的には海上保安庁、領空警備は自衛隊の任務となっており、テロ、ゲリラ、不審船等への対応については法整備が図られ、一応の強化をみたところであります。しかしながら、領空侵犯機に対する武器使用等の権限が明確でない等その実効性には不安もあります。また、テロ、高度に訓練された重装備のゲリラ・特殊部隊等への対応には、海上保安庁、警察の能力、権限を超えるものがあり、これらに的確に対処するには自衛隊による対処も必要と考えられます。
しかしながら現行法で自衛隊がこれらに対処できるのは、海上警備行動、自衛隊や米軍の施設・区域を守る警護出動あるいは治安出動といったところで、その場合でも、武器を使用して相手に危害を与えることが出来るのは、原則、正当防衛、緊急避難の場合に限られるなど強制措置権限が制限されております。現下の安全保障環境においては、警察行動と防衛行動の狭間にあるような、この種事態に的確な対応ができる実効性ある法の整備が不可欠であります。このため、これらに自衛隊が有効に対処しうるよう、所謂「領域警備法制」の検討を含め速やかな体制の整備を要望いたします。
平成23年度「防衛問題に関する要望書」
特に防衛力の整備と予算の確保の内、任務遂行に必要な定員の確保と自衛官の処遇改善については重ねて要望した。これは防衛に関する重要事項について毎年継続して要望書を策定し、防衛大臣に要望するとともに、総理大臣をはじめとする全閣僚及び衆参両議院の主要議員並びに陸海空自衛隊にも要望しているものである。
また要望書は周知徹底のため、全国の各防衛協会等や特別会員にも配布されているものである。
はじめに
この度の東北地方太平洋沖地震による未曾有の災害に際しては、自衛隊の総力を挙げての救援救助活動、更には復旧活動等、身の危険を顧みず昼夜を分かたぬ必死の活躍に対し、国民の一人として先ずもって心より敬意と感謝を申し上げます。
ところで、世界各地では、依然として領土・民族・宗教等に起因する紛争やテロが後を絶たず、わが国周辺でも領土問題、北朝鮮の核・ミサイルの開発、中国の軍事力の増強等、複雑困難な問題が山積しています。
こうした情勢を背景に、近年わが国では、所謂「有事法制」の整備をはじめ海賊対処法の制定等々、更には適時における「防衛計画の大綱」見直し等を通して、安全保障政策を推進してまいりました。しかしながら、わが国の安全保障を完全なものとするためには、なお解決すべき課題が少なくありません。安全保障は国家存立の基本であり、その基本政策が時の政権や政局によって左右されるべきものではないと考えます。
全国防衛協会連合会は、国を愛し、自衛隊の健全な発展を願う民間有志の集まりである各都道府県防衛協会等の連合体であり、かねてから「防衛意識の高揚」と「自衛隊への支援・協力」を目的として全国運動を展開していますが、この情勢に鑑み、会員の総意において下記5項目について要望いたします。
1 防衛意識の高揚とその環境整備
2 防衛力の整備と予算の確保
3 日米安全保障体制の充実強化
4 国際平和協力活動に関する体制の整備
5 領域警備法制の整備
国の繁栄と国民の幸福は、国の安全が確保されてはじめて得られるものであり、そのためには国民一人一人が国を守る気概を持つことが肝要であります。
このような考えから、全国防衛協会連合会では、防衛意識の普及・高揚を最大の目的として活動を行っていますが、近時わが国においては自らの国は自らが守るべきものであることを忘れ、そもそも国を愛する気持ちすら失われつつあるように見受けられます。
これは、先の大戦による惨禍があまりにも大きかったこと、平和実現への期待を国際社会に対し過度に抱いていること、戦後わが国の防衛を米国に依存し、幸いにも長期間に亘って平和を享受してきたことなどによるものと考えられますが、その根底には国の基本法である憲法における自衛権についての規定が必ずしも明確でないことが国民の心理に少なからず影響しているものと考えます。
しかしながら、最近では憲法改正についての議論も国民の間で漸次活発になってきており、また憲法改正に必要な「国民投票法」も既に制定されています。
このような観点から、自衛隊の位置付け、役割を明確にする等、国防の基盤をなし国民の防衛問題に対する意識に大きな影響を与える憲法の改正について、集団的自衛権の問題を含め、自由闊達な議論が行える環境の整備を推進されるよう要望いたします。
近年、わが国では陸海空自衛隊の基幹部隊の縮減や主要装備品、定員の削減が継続され、防衛予算は9年連続で減少しています。しかしアジア周辺諸国では軍備の増強が行われ、中でも中国の国防費は過去20年間で約18倍に伸びています。従って、このままでは、わが国防衛の抑止力が大きく低下し、特に周辺国が保有している核、弾道ミサイルや近代化を進めている艦艇、航空機、更にはテロ攻撃等への対処に必要な撃破能力や情報収集能力が著しく不足することとなる恐れがあります。
また、定員や装備品等の削減は、すでに国内における駐屯地、基地等の運営にも支障を生じていると聞き及んでいます。
昨年末に策定された新「防衛計画の大綱」及び新「中期防衛力整備計画」では、防衛力の整備、運用について新たな考え方と方向が示されました。わが国が直面する国際環境を考慮し、わが国の平和と安全はもとより国際社会の平和維持に寄与できるものと確信いたしますが、防衛力の整備は確実な実行が特に重要であり、今後はその実現のための着実な整備と予算の確保を要望いたします。その際、自衛隊の任務遂行に必要な定員の確保と、自衛官が果たす使命に相応しい処遇については充分に留意されるよう要望いたします。
また、同大綱では、防衛装備品をめぐる国際的な環境変化に対する方策を検討することとされていますが、武器輸出3原則を掲げ、いわば武器輸出禁止策をとっているわが国の現状では国際的共同技術開発が阻害されるとともに装備価格の高騰に対処できず、ひいてはわが国の防衛産業や防衛基盤の弱体化等を招くことが強く懸念されるところであります。したがって、この検討にあたっては同原則が本来、国連により武器等の輸出が禁止されている国や国際紛争の当事国等に対する輸出は認めないという限定された方針であったことを踏まえ、その速やかな見直しを要望いたします。
国土が狭隘で資源にも恵まれず、核を保有しないわが国が独力で自国の平和と安全を守ることは極めて困難であります。そのため、世界の超大国であり、基本的人権、自由、民主主義という価値観を共有する米国との間で安全保障体制を維持することは、わが国にとって不可欠なことであります。因みに、国際連合については、五大国全ての同意を得ない限り重要事項の決定ができない現状では、多くを期待することはできません。
ところで日米安保体制は、わが国の安全を確保し、わが国を含む地域の平和と安全を維持するため、米国はわが国を防衛する義務を負い、わが国は米国に基地を提供する義務を負うという体制です。したがって日米安保体制の信頼性・実効性を担保するためには、極東における米軍のプレゼンスが必要であり、それには基地の安定使用が不可欠であります。
しかしながら、基地の所在する地元では騒音や安全確保等の問題により基地に対する反対が生じがちであります。この問題の解決は、先ずもって政治が日米安保体制の意義を大所高所から判断して、基地周辺住民に対しては国の安全と平和のための協力への理解を求め、全国の国民に対してはそれに伴う財政負担等への理解を求めるべき性質のものであって、一部の国民世論のみに委ねるべき性質のものではないと考えます。
かかる面にも思いを致され、安全保障条約締結50周年を経た今日、改めてこれまで両国間の長きにわたる努力により積み上げてこられた日米安保体制の信頼性の維持向上に留意し、両国間の防衛協力の実効性をより強化し、確固たる同盟関係の構築に努められるよう要望いたします。
自衛隊は、平成4年国際カンボジア暫定統治機構(UNTAC)の一員として、初めて国際平和維持活動(以下、PKO活動)に参加して以来、数々のPKO活動や国際緊急援助活動等の国際平和協力活動に従事してきており、世界各国からも高い評価を得ています。
これらの活動は、これまでPKO活動等の一部を除き派遣の度ごとに、所要の法律の整備、それに基づく準備を実施してきました。しかしながら、国際平和協力活動が自衛隊の「本来任務」とされた今日では、これまで以上に時期を失することなく派遣決定が行われ、それに基づく速やかな対応が求められます。また、国際平和協力活動の中には、これまで時限的な特別法で対処してきたものがありますが、派遣後の事態の推移により延長を必要とする場合には改めて法的手続きを要し、時には活動を中断させざるを得ないことも生じます。
このようなことから、国際平和協力活動全般を律する恒久的な法律を制定して、自衛隊の派遣に関する基本方針を明確にすることにより、予め派遣態勢の整備が進められ、派遣決定等も迅速に行われるとともに、その活動が中断せざるを得ないようなことにならないようにしておく必要があると考えます。更に、今後の国際平和協力活動においては、これまでにも増して厳しい治安状況等の中での活動を余儀なくされることも予想され、派遣隊員の安全が確保され、国際平和協力活動が効果的に行われるよう、武器使用基準を他国なみに見直すことが必要と考えます。
新大綱では、国際平和協力活動への対応能力の強化とPKO参加5原則等わが国参加の在り方を検討することとされていますが、この検討にあたっては、国際平和協力活動が今後より確実かつ効果的に実施されるよう、上述の改善を含め法体制の早急な整備を要望いたします。
新大綱では、防衛力の役割として、実効的な抑止と対処能力の保持を掲げ、「周辺海空域の安全確保」「ゲリラや特殊部隊による攻撃対応」等を重視するとされていますが、今後はテロ、ゲリラ、特殊部隊等による侵入攻撃や、既に幾つかの事例が認められるわが国沿海における武装工作船・不審船等による不法行為、潜航潜水艦の領海侵犯、航空機の領空侵犯等への対応が当面の重要な課題であります。
現行法においては、領海警備は一次的には海上保安庁、領空警備は自衛隊の任務となっており、テロ、ゲリラ、不審船等への対応については法整備が図られ、一応の強化をみたところであります。しかしながら、領空侵犯機に対する武器使用等の権限が明確でない等その実効性には不安もあります。また、テロ、高度に訓練された重装備のゲリラ・特殊部隊等への対応には、海上保安庁、警察の能力、権限を超えるものがあり、これらに的確に対処するには自衛隊による対処も必要と考えられます。
しかしながら現行法で自衛隊がこれらに対処できるのは、海上警備行動、自衛隊や米軍の施設・区域を守る警護出動あるいは治安出動といったところで、その場合でも、武器を使用して相手に危害を与えることが出来るのは、原則、正当防衛、緊急避難の場合に限られるなど強制措置権限が制限されております。現下の安全保障環境においては、警察行動と防衛行動の狭間にあるような、この種事態に的確な対応ができる実効性ある法の整備が不可欠であります。このため、これらに自衛隊が有効に対処しうるよう、所謂「領域警備法制」の検討を含め速やかな体制の整備を要望いたします。
おわりに
以上、わが国の防衛態勢をより強固なものとする上で、重要かつ緊急を要する課題として5項目を要望申し上げました。申し上げるまでもなく国防は国家存立の基本であり、国の安全の確保こそがわが国の平和と繁栄の大前提であり、国民の防衛意識の高まりとともに政治の場におけるわが国の安全保障全般にわたる幅広い議論を期待し、要望事項の実現のため格段のご配慮を賜りますよう心からお願い申し上げます。
平成23年6月
全国防衛協会連合会
会長 佃 和夫