過去の防衛省・自衛隊関連記事
令和5年
昨年2月のロシアのウクライナ侵攻後、防衛研究所の研究者のメディアへの露出度が急増し、報道番組等でコメントしている姿を連日目にしています。専門的な知識に裏打ちされた的確な情勢分析・情報発信力により、日本で唯一となる国の安全保障・軍事研究の専門家集団として、いろいろな場面で引っ張りだこになっており、一層の注目を集めています。防衛研究所は、昨年創立70周年を迎えた。これを機会に、今回、防衛研究所を特集して紹介します。 (資料は防衛研究所提供)
防衛研究所の役割
安全保障に関する調査研究
戦史に関する調査研究
防衛研究所は、我が国、防衛省・自衛隊における戦史業務本来の機能を具備した恒久的、総合的な戦史の調査研究部門として「戦史研究センター」を有している。戦史研究センターは、防衛政策や自衛隊の教育訓練上のニーズに適切に応えるため、国内外の戦史研究を行い、更に近年、歴史となりつつある戦後の安全保障政策史の研究へと幅を広げるとともに、戦前・戦中期の日本の国防に関する史料を管理し、広く一般公開している。
○研究課題
最新の研究動向、史料をもとに戦史に関わる歴史事実を常に検証し続けるとともに、現在の日本の安全保障政策に歴史的観点から寄与するために、①先の大戦に関する戦史のさらなる研究、②戦後日本の安全保障政策史への取組み、③国際紛争史の調査研究といった課題に取り組んでいる。
○海外における戦史史料の調査・収集事業
戦史編さんには、現在明らかであるとされる史実の検証に加え、これまで明らかとなっていない史実の発掘を絶え間なく積み重ねていくことが必要であり、史料の調査収集に力を入れ、新たな史実の発見に努めている。
戦史史料の公開
○所蔵史料
陸海軍関連史料約10万冊、戦史関連図書約6万7千冊を所蔵。特に中核的な史料として、陸海軍省により作成及び編綴された陸海軍省大日記及び海軍省公文備考の2種類がある。このほか、陸海軍の各種命令文書、部隊日誌、戦闘詳報などの史料も所蔵。
○史料閲覧室
①開館時間:9時から16時半(入館は16時まで)
②休館日:土曜日(開館する土曜日(月1回)を除く)・日曜日、開館した土曜日の翌週最初の平日、国民の祝日・年末年始、特別な行事等の日
③所在地:〒162―8808 東京都新宿区市谷本村町5―1
④連絡先:03―3268―7102(直通)
教育
○国家安全保障におけるリーダーを育成する教育
防衛省・自衛隊の高級幹部を対象に、国家安全保障及び国の防衛に関し、軍事的な視点のみならず政策的な視点からの教育を行う。
○教育内容
防衛研究所では、毎年、一般課程と特別課程の2つの教育課程を実施するとともに総合職職員研修を支援している。
一般課程は、主として1佐クラスの幹部自衛官や課長補佐クラスの職員等を対象として行われる毎年9月から6月までの10か月間の教育である。また、防衛省以外の国の機関の課長補佐クラス、外国からの大佐・中佐クラスの軍人等の留学生及び民間企業の職員も研修員として参加している。
特別課程は、将補・1佐の幹部自衛官や内部部局課長クラスの職員等を対象として行われる教育である。
総合職職員研修は、入省3年目の総合職職員を対象として行われる研修である。
国際交流
防衛研究所が行う国際交流には、2つの役割がある。
1つは、防衛省の防衛交流・安全保障対話の一翼を担う機関として、各国の国防研究機関との間で、研究交流・教育交流を行い、地域の安全保障環境の向上に寄与すること。
もう1つは、民間の研究者を含む海外の研究者・専門家との間で、ネットワークを構築し、安全保障問題に関する議論を通して、共通の理解を深めることである。
研究成果の発信
防衛研究所は、さまざまな形で所属研究者による研究成果の発信に努めている。防衛研究所ホームページでの出版物やコラムを掲載・発表するほか、各種の公開セミナーを開催することを通じて、広く知見を提供するとともに、国内外の安全保障研究コミュニティとのつながりを促進している。
○出版物
①東アジア戦略概観
主に朝鮮半島、中国、東南アジア諸国、ロシア、米国及び日本を対象に、東アジア地域の戦略環境や安全保障に関する重要な事象について、防衛研究所の研究者が内外の公刊資料に依拠して独自の立場から分析した年次報告書
②中国安全保障レポート
防衛研究所の研究者が独自の視点から中国の軍事・安全保障動向を分析
③安全保障戦略研究
日本における安全保障に関する学術研究の発展及び国民への知識の普及に寄与することを目的として、令和2(2020)年に刊行された専門的な学術誌
④戦史研究年報
戦史に関する研究論文及び戦史研究センターの活動を掲載するとともに、戦史史料に関する情報を掲載
⑤戦史特集
朝鮮戦争休戦協定60周年(2013年)を節目
に、これまでの防衛研究所における朝鮮戦争に関する調査研究の成果から、特に日本との関連を分析した論文を集大成して、刊行
⑥国際紛争史研究
フォークランド戦争開戦30周年(2012年)を節目に、外交的側面及び軍事的側面から分析する「フォークランド戦争史」と湾岸戦争開戦30周年(2021年)を節目に、国内外における最新の研究成果などを活用した「湾岸戦争史」を刊行
○公開セミナー
防衛研究所はさまざまな国際会議を主催しており、「安全保障国際シンポジウム」や「戦争史研究国際フォーラム」など、一部は一般の方も聴講対象として公開
〇ホームページ・SNS
防衛研究所ホームページ(http://www.nids.mod.go.jp)におい て、近年の出版物と各種会議等の報告書など、よりくわしく防衛研究所について紹介
我が国唯一の国立の安全保障に関する研究・教育機関として
さらに、防衛省の防衛交流・安全保障対話の一翼を担う機関として、各国の国防研究機関との間で、研究交流・教育交流を行うとともに、民間の研究者を含む海外の研究者・専門家との間で、ネットワークの構築や安全保障問題に関する共通の理解を深めることを目指して、各種国際会議の主催や研究者の海外への派遣及び招へいなどを行っております。これらの成果についてはさまざまな形で、情報発信に努めております。
こうした当所の取組は世界的にも注目を集めており、米ペンシルベニア大学TTCSP(Think Tanks and Civil Societies Program)が発表する「2020世界シンクタンク報告」の防衛・安全保障部門ランキングにおいて、防衛研究所は、全110機関のうち2年連続で第9位に選出され、アジアでは最高位となっています。
また最近では、令和3年8月、防衛研究所は、文部科学省及び日本学術振興会の科学研究費助成事業(科研費)への応募が可能となる研究機関に指定されました。これにより、所外の大学・シンクタンクの先生方との共同研究を積極的に推進するなど、一層の研究能力の向上に努める所存です。
これからも、皆様に安全保障に関する知識や情報を正確に発信できるようさまざまな手段を含めて取り組んでまいりますので、ぜひ防衛研究所のことを知り、関心を寄せていただきたくお願い申し上げます。
昭和39(1964)年3月生まれ。東京都世田谷区出身。東京大学工学部卒業。
主要職歴:人事教育局長、大臣官房審議官、外務省大臣審議官、大臣官房米軍再編調整官