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過去の防衛省・自衛隊関連記事

令和5年

防衛協会会報第161号(5.1.1)掲載 海上自衛隊創設70周年記念 令和4年度国際観艦式

大海原を威風堂々と進む精強自衛隊は日本の誇り

 令和4年11月6日(日)、海自創設70周年を記念した「令和4年度国際観艦式」が、神奈川県沖の相模湾において、自衛隊最高指揮官の岸田文雄首相を観閲官として護衛艦「いずも」(観閲艦)に迎え、自衛艦隊司令官の湯浅秀樹海将が執行者を務めて実施された。また、「いずも」には浜田靖一防衛相、小野田紀実政務官、磯﨑仁彦内閣官房副長官、鈴木敦夫事務次官、酒井良海幕長等の防衛省・自衛隊等の幹部や、参加各国の海軍参謀長等が乗艦した。
 海幕によると、今回の国際観艦式は「隊員の使命の自覚及び士気の高揚を図るとともに、西太平洋海軍シンポジウム加盟国間の信頼醸成や友好親善を促進し、地域の平和と安定を図る」ことが目的。なお、我が国を取り巻く極めて厳しい安全保障環境の中、海自の任務遂行と観艦式を両立させることが必要であり、従来規模の艦艇による実施は困難であること、また、新型コロナウイルス感染症対策を適切に講じる必要性があることを踏まえ、総合的に判断し、今年の国際観艦式は無観客開催とされた。
 今回は、観閲艦艇と受閲艦艇がそれぞれ単縦陣で互いに航行(反航)しながら観閲する国際観艦式では珍しい「移動式」で行なわれ、祝賀航行の外国艦艇については、それぞれのグループを海自護衛艦が見事に先導役を果たした。

参加規模

◆海上自衛隊:艦艇20隻、航空機6機
◆陸上自衛隊:航空機5機、車両等(輸送艦に積載)
◆航空自衛隊:航空機16機(ブルーインパルス参加)
◆海上保安庁:巡視船1隻
◆外国海軍等
 ◇艦艇:12か国、18隻(豪、ブルネイ、加、印、インドネシア、マレーシア、ニュージーランド、
     パキスタン、韓国、シンガポール、タイ、米国
 ◇航空機:2か国6機(米国【海軍機及び海兵隊機】、フランス【海軍機】)

 また、国際観艦式の模様は、ユーチューブにて映像配信されており、10月29日(土)から11月13(日)までを「フリートウィーク」と称し、国内外参加艦艇の一般公開や音楽演奏、広報イベント、パレードなどの各種イベントを行い、国際観艦式を盛り上げた。
受閲部隊に答礼する岸田首相(左から2人目)と(右端から)小野田政務官、浜田防衛相、酒井海幕長(出典:防衛省HP)
観閲艦艇部隊(右列:先頭は観閲艦「いずも」)と反航する受閲艦艇部隊(左列)(出典:防衛省公式FB)
岸田文雄首相訓示
 この度、我が国が西太平洋海軍シンポジウム及び国際観艦式を主催できましたことを光栄に思います。歴史を振り返るとき、人類は、海を巡ってしばしば対立する一方、人の交流や海洋貿易など海を通じてつながってきました。海軍力は、国益を守り、国家のプレゼンスを高めるといった各国にとって不可欠な存在となり、海の安全、特にシーレーンの安全確保を通じて、世界の発展と繁栄を支える役割も担うようになりました。 
 そして、海軍力が公共財としての役割を果たすようになったことに加え、軍事的プロフェッショナリズムの重要性が高まると、海軍軍人には、専門的な知識のみならず、職業軍人としての倫理も求められるようになりました。
 こうした歴史的背景も踏まえながら、これまで世界各国の海軍軍人の一人一人が、海軍の果たすべき役割と責任を深く理解し、シーマンシップの伝統を受け継いで、他国との信頼関係を構築してきました。
 この西太平洋海軍シンポジウムでは、1988年の開催以来、2年ごとに西太平洋地域の海軍のリーダーが集い、協力的なイニシアティブについて議論を交わしてきています。現在は、22のメンバー国と8のオブザーバー国から構成され、それぞれのバックグラウンドは異なりますが、全ての加盟国が信頼を醸成することを目指す、多国間海軍協力の枠組みとなっています。
 例えば、他国の海軍同士が思いがけず遭遇した際に、艦艇や航空機がどのような行動をとるべきかを示した海上衝突回避規範の合意を始め、西太平洋地域において、海軍のプロフェッショナリズムやシーマンシップを浸透させるために主導的な役割を果たしてきました。 
 本日、数多くの国々から艦艇及び航空機の御参加をいただき、心より歓迎いたします。この機会をとらえ、我が国、そして自衛隊との信頼関係をさらに強固なものとすることを期待するとともに、「自由で開かれたインド太平洋」の実現のため、皆さまの国々を始め、諸外国との協力関係を一層深めてまいります。 
 こうした連携と信頼を高めるための皆様の懸命な努力の一方で、半年以上も緊迫した情勢が続くロシアによるウクライナ侵略は、先人たちの長きにわたる努力と犠牲の積み重ねの上に築き上げてきた国際秩序の根幹を揺るがす暴挙であり、欧州のみならず、アジアを含む国際社会全体にとって深刻な事態です。
 また、東シナ海や南シナ海を含め、我が国を取り巻く安全保障環境は、急速に厳しさを増しています。  
 北朝鮮は、今年に入り、かつてない高い頻度で、新型のICBM(大陸間弾道ミサイル)級を含む弾道ミサイルの発射を繰り返しており、我が国上空を通過させる形での発射も強行しました。北朝鮮による核・ミサイル開発は断じて容認できません。
 今回のウクライナ侵略のような力による一方的な現状変更の試みは、世界のどの地域でも、決して許してはなりません。
 国民を守り、地域の平和と安定を確保するためには、対立を求めず、対話による安定した国際秩序の構築を追求することが基本です。
 しかし、それと同時に、ルールを守らず、他国の平和と安全を武力の行使や武力による威嚇(いかく)によって踏みにじる者が現れる事態に、備えなければなりません。我が国は、本年末までに新たな国家安全保障戦略などを策定し、我が国自身の防衛力を5年以内に抜本的に強化します。国民を守るために何が必要か、あらゆる選択肢を排除せず、現実的な検討を加速しています。 
 そのなかでも、周りを海に囲まれた我が国にとって、海上防衛力は、我が国の戦略環境を大きく左右するものです。艦艇の増勢、ミサイル対処能力の強化、隊員の処遇改善を含め、その強化は待ったなしです。
 併せて、日米同盟の抑止力・対処力を、より一層強化してまいります。
 日本は、戦後77年間、地域の国々とともに繁栄するという強い思いを胸に、平和国家としての歩みを進めてきました。
 戦後の日本の平和国家としての在り方を、今後もしっかりと守るとともに、安全保障に関する我が国の取組について、透明性をもって、国民のみならず、国際社会に対しても丁寧に説明していきます。
この場にいらっしゃる各国の参加者におかれても、それぞれの安全保障政策について、透明性をもった説明に努めていただきたいと考えています。
 最後に、今回の国際観艦式を主催している海上自衛隊の皆さんに、一言申し上げます。
 皆さんの日々の強い使命感には、心から感謝します。 
 私は自衛隊最高指揮官として、皆さんのことを誇りに思います。
 皆さんは、我が国周辺での警戒監視に、日夜高い緊張感を持って臨んでいます。 
 また、民間船舶の安全確保のため、日本を遠く離れ、海賊対処活動や情報収集活動を行っています。
 御家族と離れ、長期間にわたり、雨の日も風の日も最前線で任務にあたる苦労は、計り知れません。
 しかし、皆さんの努力の積み重ねが、この国の、そして、地域及び世界の平和と安定につながっています。
 皆さんが備えることで、国民が日々憂いなく過ごすことができます。
 厳しさを増す安全保障環境の中にあって、国民の命や暮らし、そして、我が国の領土、領海、領空を断固として守り抜くとの決意の下、より一層鍛錬に励んでください。
 最後に、御家族の皆様に対し、隊員諸官に対する常日頃からの御支援に心から感謝を申し上げ、私の訓示といたします。
                                  令和4年11月6日             
                                      自衛隊最高指揮官               
                                       内閣総理大臣 岸田文雄



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