新型コロナ 自衛隊災害派遣終結
防衛協会会報第150号(2.4.1)掲載
『派遣隊員の感染者ゼロ』
3月16日、河野防衛大臣は、1月31日から行っていた新型コロナウイルス感染症に係る災害派遣活動の終結を命じた。自衛隊は、引き続き、患者の受け入れを自衛隊病院等で行うとともに、自治体のみで対応が困難な状況が発生した場合には、自治体等と連携して支援を行っていくこととしている。
今回の活動は、感染拡大防止に向けて緊急対応が必要との判断から、「自主派遣」の形で1月31日、「新型コロナウイルス感染症拡大の影響により帰国した邦人等に対し、救援活動を実施せ
よ」の内容で命令が発出された。
続いて2月6日には「クルーズ船『ダイヤモンド・プリンセス』における生活支援・医療支援」の活動が追加されている。
さらに、2月13日には、主として各地の受け入れ施設における活動に従事するため、医師・看護師等の有資格者の予備自衛官(最大約50名)の招集命令も発出された。
3月10日の河野防衛大臣の記者会見によると、「2月6日から3月1日にかけて、クルーズ船で延べ2700名の隊員により医療支援あるいは生活支援、消毒、輸送支援等を行った。また、税務大学校等の一時宿泊施設では、チャーター便帰国者及びクルーズ船からの下船者に対する全ての経過観察を終え、3月8日付で活動を終了。延べ2200名で物資の配布、問診票の回収等の生活支援、医官、看護官等による回診や診療等の健康管理支援を行ってきた」とのことである。
一方、自衛隊病院では、新型コロナ検査(PCR検査)陽性者の受け入れを行ってきたが、3月13日をもって通常の診療体制に移行した。3月15日には、既に活動を終了していた全隊員のPCR検査及び経過観察を終了。これらの状況を踏まえて、3月16日災害派遣撤終結が命令された。
自衛隊病院は、これまで累計128名の陽性者を受け入れ3月16日までに116名が退院、2名が転院、8名が入院中。特に、自衛隊中央病院では、受け入れた新型コロナウイルス感染者の6割が外国人であったたため、外国語通訳のできる予備自衛官を招集して対応している。
延べ、5000名にも及ぶ多数の自衛隊員が、長期にわたってコントロールの困難な新型コロナウイルス相手の最前線で活動してきた。この中にあって、一人の感染者も出さなかったということに対しては、見事と言う言葉しか見当たらない。
防衛大臣からは「自衛隊からは一人も感染者を出さない」という対策強化の指示もあり、ウイルス防護には可能な限り徹底的な対策を施して活動している。
例えば、厚労省の消毒業務は、マスクと手袋の使用が基準であるが、自衛隊は防護服を着用。手袋は二重にして防護服とのつなぎ目は粘着テープで塞ぐ。靴にはカバ―。目にはゴーグルと重装備で消毒に臨んだ。
また、受け入れ先となった静岡や福島など、遠方の医療機関への輸送支援に当たった隊員も対策を徹底した。シンプルな仕様の自衛隊救急車の運転席・助手席と後部座席の間にテープで目張りした応急仕切り版を設置した。隊員は防護服とゴーグルを着用し、ここでも重装備で運転している。
途中で脱着は困難なため、トイレはおむつをつけて対応したという徹底ぶりだ。
(写真:防衛省提供)