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本書は、憲法学の泰斗が自身の60年の研究生活を綴った「一代記」である。
著者の専門は比較憲法学であり、その対象は世界195か国の憲法になる。多くの憲法学者が日本国憲法だけを見て解釈する中、著者は世界中の憲法と比較して日本国憲法を論じることのできる唯一無二の存在である。
それは、長年の地道な研究の積み重ねの成果に他ならない。例えば日本国憲法はまだ一度も改正していないが、他国は、アメリカ18回、ドイツ68回、インド106回など頻繁に改正される。そのため、常に各国の憲法動向に目を光らせ、改正の度に更新していなかければならない。
また著者は、日本国憲法の成立過程の研究でも知られる。何と言っても、連合国総司令部(GHQ)で日本国憲法の原案を作成した8人へのインタビューは白眉である。日本国憲法の基になった「マッカーサー草案」作成の中心人物だった民政局次長ケーディス大佐への取材では、「もうどこかの条項が改正されているとばかり思っていました」との証言を引き出した。
本書は、448ページという大著にもかかわらず、軽妙洒脱な語り口で、小気味よく読ませる。大学時代から落語に親しみ、しろうと落語家として数々の高座をつとめてきた著者だからこそ成せる業だろう。
発行:(株)育鵬社
定価:2750円(税込)
■著者略歴
西 修 (にし・おさむ)
駒澤大学名誉教授。1940(昭和15)年富山市生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。同大学院修士課程修了、博士課程単位取得満期退学。駒澤大学法学部教授を経て、2011年より名誉教授。博士(政治学)、博士(法学)。専攻は憲法学、比較憲法学。メリーランド大学、プリンストン大学、エラスムス大学などで在外研究。第1次・第2次安倍晋三内閣「安保法制懇」メンバー。2019年、第34回正論大賞受賞。趣味は落語で、芸名は「またも家楽大(またもやらくだい)」。
著書に『憲法体系の類型的研究』『日本国憲法成立過程の研究』(以上、成文堂)、『憲法改正の論点』(文春新書)、『証言でつづる日本国憲法の成立経緯』(海竜社)、『憲法の正論』(産経新聞出版)など多数。