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オピニオン・エッセイ

オピニオン

「星羅雲布」能勢伸之氏 フジテレビジョン報道局上席解説担当役兼LIVE NEWS it日曜 「日曜安全保障」MC」
2021-01-01
                            防衛協会会報第153号(3.1.1)掲載
 
 せい   ら     うん    ぷ   
 星 羅 雲 布
 
 
 弾道ミサイルの脅威に対処する第一歩は、その発射を探知し、飛翔を追尾すること。このため、米軍は、敵弾道ミサイルの弾頭を捕捉する巨大な戦略監視レーダーを米本土やアラスカ等に設置したが、レーダーは、直進する電波の反射で対象を捕捉する。地球は巨大な球形状。従って、敵弾道ミサイルが、地平線、水平線を超えるまで、レーダーには映らない。そこで、米軍は、弾道ミサイルの発射を捕捉するため、赤外線センDFサーを搭載した早期警戒衛星を、静止衛星軌道を中心に配置している。静止衛星軌道に置かれた人工衛星、例えば、気象衛星は地球から見て、赤道の延長上、常に同じ位置にあり、地球から約3万6000km離れている。米軍の早期警戒衛星、SBIRS衛星やDSP衛星は、合計5~8個で全地球をカバー。弾道ミサイルが発射されると、その熱を感知し、その信号を地上に送る仕組みだ。弾道ミサイルは、比較的単純な放物線を描いて、飛翔するため、未来位置、弾着点等が予想できる。これを早期警戒情報と呼ぶが、地上や海上では、この早期警戒情報を基に、弾道ミサイル防衛システムのレーダーが起動し、必要なら、迎撃ミサイルが発射される。つまり、弾道ミサイル防衛には、米軍の早期警戒衛星が重要なのだが、2019年に、北朝鮮は、飛翔中、軌道が低く、機動する不規則軌道ミサイルであるKN―23の発射試験を繰り返し、中露は、極超音速ミサイルを開発/配備した。例えば、中国の極超音速滑空体ミサイル、DF―17は、第一段に射程800~1000kmの短距離弾道ミサイル、DF―16のロケット部分を使用し、その上に、マッハ5以上の極超音速での飛翔にも耐えうる滑空体、言うなれば、グライダーを搭載したミサイルだ。グライダーなので、飛翔中に機動する上、飛距離も延びて、2400~2500kmとされる。この射程なら、物理的には、日本全域が射程内だ。しかも、グライダーなので、ロケット部分から切り離された後は、噴射もなく、温度は低い。従って米議会調査報告によると「極超音速の標的は、米静止軌道衛星(=早期警戒衛星SBIRS―GEO)によって、普段、追尾している対象よりも10〜20分の1の暗さ」ということになるため、従来の早期警戒衛星では、極超音速ミサイルへの対応が難しい。
 では、どうするのか。
 米SDA(宇宙開発庁)が打ち出したのが、従来の早期警戒衛星と異なり、低軌道に、多数の赤外線センサーを搭載した早期警戒衛星を配置する「トラッキング・レイヤー」構想だ。トラッキング・レイヤーの目的は、極超音速滑空体ミサイル等に対する「ミサイル警報と追跡情報を国防当局に提供し、ミサイル防衛の要素である追跡とキューイングデータを提供」とされる。トラッキング・レイヤーは、3種類の衛星から構成される。➀広視野(WFOV)衛星:オーバーヘッド持続赤外線(OPIR)センサーを搭載。②中視野(MFOV)衛星:HBTSS(極超音速・弾道ミサイル追尾宇宙センサー、③トランスポート・レイヤー衛星(データリレー用)の三種類の衛星で、最初の段階は、トラッキング・レイヤー・トランシェ0と呼ばれ、合計28個の衛星で、2022会計年度末までに打ち上げられ、低軌道2本を形成する。トランシェ0の成否に左右される可能性も高いが、SDAの構想では、トラッキング・レイヤーは、次のトランシェ1では、2024会計年度後半に打ち上げられる予定で、約100〜150個の衛星から構成される見通し。さらに、2026会計年度には、総計約一〇〇〇個の衛星から構成されるトラッキング・レイヤー・トランシェ2が構想されているという。
 極超音速ミサイルは、例えば、DF―17が、DF―16短距離弾道ミサイルのロケット部分を利用して、作られるのであるとすると、既存の弾道ミサイルの先端部を取り替えて、弾道ミサイル防衛(BMD)では、対処しがたい「極超音速ミサイル」に換わっていく可能性がある。弾道ミサイル防衛では、早期警戒衛星は、重要な基盤だが、極超音速ミサイルの脅威に対処するためには、日本としても、このトラッキング・レイヤーの成否に無関心ではいられなくなるだろう。
 このトラッキング・レイヤーは、2020年10月現在の構想では、トランシェ0、トランシェ1、トランシェ2と段階を追って発展させる見通しで、最初のトラッキング・レイヤー・トランシェ0は、2022会計年度末までに打ち上げが予定される、前述の広視エトキ野(WFOV)オーバーヘッド持続赤外線(OPIR)センサー搭載警戒衛星8個と、データリレー用のトランスポート・レイヤー衛星20個の計28個の衛星から構成される。トランシェ0の目的は「ミサイル警報と追跡情報を国防当局に提供し、ミサイル防衛の要素である追跡とキューイングデータを提供」できることを実証することだ(www.sda.mil/sda-awards-contracts-for-the-first-generation-of-the-tracking-layer/)と、SDAは、説明しているので、トランシェ0はあくまでも、試験段階ということなのだろう。
 次の段階であるトラッキング・レイヤー・トランシェ1は、「2024会計年度後半に打ち上げられる予定で、複数の製造供給元によって開発および製造された約100〜150個の衛星から構成」され「トラッキング・レイヤーの衛星は、弾道ミサイルなどの脅威を検出すると、その情報をトランスポート・レイヤーの衛星に送信する」(SPACE NEWS 2020/10/25)する。トランスポート・レイヤーを構成する衛星は、「複数の追跡システム(トラッキング・レイヤーの衛星)からデータを取得し、それらを融合し、射撃統制ソリューションを計算することができる。その後、トランスポート衛星は、戦術データリンクまたはその他の手段を介してそれらのデータを兵器プラットフォームに直接送信できるようになる」(DOD News 2020/10/5 www.defense.gov/Explore/News/Article/Article/2372647/agency-awards-contracts-for-tracking-layer-of-national-defense-space-rchitectu/)というのだ。そして、SDAの公式説明では、広視野衛星(WFOV衛星)は、前述のMDAのHBTSS衛星センサーを「正確な世界規模のアクセス機能を有する中視野(MFOV)衛星」として組み合わせて、SDAレイヤーとなり「永続的に世界規模にカバーし、保管機能を提供する」ことになる、としている。(www.sda.mil/sda-awards-contracts-for-the-first-generation-of-the-tracking-layer/)従って、トラッキング・レイヤー・トランシェ1では、➀広視野(WFOV)衛星、②中視野(MFOV)衛星(HBTSSセンサー搭載)、③トランスポート衛星の3種類の衛星が、総計100~150個、レイヤー(層)を成して、地球の周りを、複数の軌道で周回するということになるのだろう。広視野(WFOV)衛星と中視野(MFOV)衛星の関係が、どのようになるのか、筆者には不詳であるが、米国防省が作成したトラッキング・レイヤーの説明イラスト(https://www.defense.gov/Explore/News/Article/Article/2372647/agency-awards-contracts-for-tracking-layer-of-national-defense-space-architectu/)によれば、トランスポート衛星が、広視野(WFOV)衛星、や中視野(MFOV)衛星より、高い軌道に置かれることを示唆している。
 次に、トラッキング・レイヤー・トランシェ2は、2026年に約1000個の衛星を打ち上げる計画だ(www.sda.mil/gotta-go-fast-how-americas-space-development-agency-is-shaking-up-acquisitions/)。このため、従来の弾道ミサイルに対する早期警戒衛星DSP、SBIRSが、一桁の衛星数のプログラムであったことと比較すると、数だけでも雲泥の差と言ってもいいだろう。
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