オピニオン・エッセイ
エッセイ
2025年の今年は、阪神淡路大震災から30年の節目を迎えました。日本が直面した初の都市型大規模災害は、多くの悲劇を生みました。しかし、その悲劇を繰り返さぬように、我々日本人は、災害の中から多くの教訓を得て、防災意識を改めました。
特に自衛隊は、災害派遣のシステム自体を大きく変えました。これまでなかった災害対処用の資機材を揃え、自治体や消防、警察との訓練の機会を増やしました。政府も自衛隊が持てる力を最大限に発揮できるように、段階的ではありましたが、徐々に法整備を進めていき、災害派遣スキームを作りました。
あの時、中核となり戦ったのが、東海、北陸、近畿、中国、四国等、2府14県の災害派遣を担当している中部方面隊であります。その中部方面隊が、2025年1月13日から17日にかけ、「南海レスキュー2024」を実施しました。これは、「南海トラフ地震」への対処を想定したもので、これまでも何度か実施してきました。しかしコロナ禍を挟み、一旦中断され、今回は6年ぶりの開催となりました。
想定は、「紀伊半島沖でマグニチュード9の地震が発生し、東海、近畿南部、四国が大きく被災した」とされました。そしてシナリオ上は、建物等の全壊及び焼失棟数は最大で238万2千棟、死者は最大で27万5千人という甚大な被害を及ぼしました。
2024年1月1日に発生した「能登半島地震」では、主要道路が寸断され、陸路による救助部隊の移動が困難になり、能登半島北部が孤立するという現実に直面したため、海上から救助の手を差し伸べる「シーベース作戦」を展開しました。今回の訓練でもあの時の作戦が再現され、輸送艦「くにさき」を“シーべース”としました。
まず、徳島県大里松原海岸へと救援物資を搭載したAAV7が上陸しました。この水陸両用車は、もともと水陸機動団を離島等へと着上陸させるための装備であり、浜辺であればどこでも上陸できます。内部に
は、約20名の隊員を乗せられるキャパがあるので、人員も資機材もたくさん輸送可能です。災害時にも活躍が期待されます。さらに、高知県生見海岸へは、ⅬCACが上陸しました。こちらには、陸自施設部隊の重機の他に、通信インフラ復旧のためNTT等通信事業者の車両が搭載されていました。
さらに、琵琶湖にUS―2が着水しました。淡水湖への発着水は今回が初めてとなります。2024年10月17日に予行演習も実施し、万全の体制でこの日を迎えました。本訓練では、湖上で溺者の救助が行われましたが、このように琵琶湖を滑走路としても使えることを証明したわけで、災害時には、救援物資の輸送などさまざまな使い方が出来そうです。
さらに警察やD―MATを、94式水際地雷敷設装置に載せて、琵琶湖を移動しました。海中に地雷を仕掛ける水陸両用車ですが、その地雷ラックを取り外せば、空いたスペースに人を乗せることが出来ます。これらの目的は、道路が使えなくなっても琵琶湖から人員を運ぶことができるか実証するためです。