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オピニオン・エッセイ

エッセイ

米主催多国間掃海演習「IMCMEX12」  軍事フォトジャーナリスト 菊池雅之
防衛協会会報第169号(7.1.1)掲載

今から10年以上前となる2012年9月16日から27日の間、アラビア半島周辺海域において、米主催多国間掃海演習「IMCEX12」が行われました。これが記念すべき第1回目となります。

 海自の方々は「掃海は日本のお家芸」と誇らしげに語ります。終戦直後より日本近海において、日米双方がばらまいた機雷の処理を行っておりましたし、朝鮮戦争の際には、特別掃海隊を編成し、朝鮮半島沖にて機雷処理も行いました。こうして、海自が創設される前から、日本は機雷掃海任務を行っているわけですから、歴史と伝統に裏打ちされたお家芸であると自負するのは間違いではないでしょう。

 そして、1991年には湾岸戦争後にペルシャ湾に撒かれた機雷を処分するため、海自掃海部隊はペルシャ湾へと派遣されます。PKO活動よりも先に行われた歴史的な国際貢献となりました。

日本が誇る掃海部隊が、「IMCEX12」として、再び中東へと行くことになったわけであり、私は好奇心の赴くままにバーレーンへと飛びました。ここを訓練の拠点として、バーレーン周辺海域に設定された「OPEAREA NORTH」、マスカット周辺海域に設定された「OPEAREA SOUTH」、ジブチ周辺海域に設定された「OPEAREA WEST」にて訓練が繰り広げられていきました。

参加国は、米英仏加日など、オブザーバー国を含めると30か国以上にもなりました。海自は、派遣部隊指揮官を第51掃海隊司令・河上康博1佐(当時)が務め、掃海母艦「うらが」と掃海艦「はちじょう」が派遣されました。

私は「うらが」に乗艦し、バーレーンのミナサルマン港を出港し、海自にあてがわれた訓練海域である「OPEAREA NORTH」へと向かいました。ここの訓練エリアは、タテ20マイル、ヨコ10マイルとかなり広く、各国と分担して機雷を捜索していきます。水中視界は5~10mと非常に良好で、水深は15~65m、潮流は1kt、底質は砂と泥と、掃海訓練には最適な場所であると、河上司令より説明を受けました。当然ながらペルシャ湾の海水温は日本より高く、塩分濃度も濃いため、ソナーやスキャナーの設定は日本とは異なるそうです。

私は、より間近で機雷捜索の様子を見るべく、「うらが」から「はちじょう」へと移乗し、艦尾に積載された機雷処分具S―7を降ろすところから取材を開始しました。訓練の方法や手順は、国内での訓練と変わらないのですが、近くには米英の掃海艦艇の姿もあり、いつもとは雰囲気が大きく異なります。甲板上での乗員たちは、刺すような日差しの中、作業服の色が変わるほどに汗をかきながら、真剣に訓練に臨んでいました。

さらに私は、「やえやま」から米旗艦となった揚陸艦「ポンス」へと移乗しました。訓練の指揮中枢であるとともに、各国ダイバーの母船ともなっており、その中には海自も含まれていました。日本から、当時まだ珍しかったUUV(unmanned undersea vehicles)である「リーマス100」を持ってきていました。これは、3ktで自律航行しながら機雷を捜索できるそうです。

こうして私は、ハイテクと多国間とのパートナーシップが加わった「日本のお家芸」の進化を灼熱のペルシャ湾にて見てきました。
掃海艦「はちじょう」(2017年退役)
掃海母艦「うらが」に横付け中の掃海艦「はちじょう」(左)と英海軍掃海艦
米海軍掃海艦「パイオニア」(右)と「アーデント」(2020年退役)
会議に臨む参加各国の隊員(うらが士官室)
深々度機雷処分具S―7の降下作業(はちじょう)
自律型無人潜水機リーマス100(ポンス)
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