オピニオン・エッセイ
エッセイ
「ヴィジラント・アイルズ」 軍事フォトジャーナリスト 菊池雅之
2024-10-01
防衛協会会報第168号(6.10.1)掲載
日本とイギリスは、安全保障上のパートナーです。それも日米同盟に準ずる繋がりであり、かつての日英同盟を彷彿とさせます。
重要な節目となったのが、2015年1月21日に初めて開催された日英外務防衛担当閣僚級協議2+2です。日本側からは、後に内閣総理大臣となる岸田文雄外務大臣と中谷元防衛大臣が出席し、日英間で、安全保障及び防衛分野の協力を進めていくことで合意しました。
その一環として、共同訓練を行っていくことが決まりました。それが、日英共同訓練「ヴィジラント・アイルズ」です。日本語に訳すと「常に目を光らせている島」となります。お互い島国であることから、名前の通り、島嶼防衛強化を目的とした訓練となります。
第1回目は、20 18年9月30日から10月12日に渡り、富士学校や北富士演習場、王城寺原演習場等にて実施されました。第2回目は、2 019年9月29日から10月24日に渡り、イギリスで実施されました。こうしてお互いの国を相互に訪問し、訓練していく流れが出来た矢先、新型コロナウイルス感染症が暴威を振るい、2020年及び2021年開催回が中止となってしまいます。202 2年に再開が決まり、11月22日から30日に渡り、相馬原演習場等において、ようやく第3回目が実施されました。
そして、2023年11月15日から11月26日にかけ、第4回目が開催されました。今回も日本が舞台となり、王城寺原演習場等にて、陸上自衛隊第1空挺団等 約 400名、英陸軍第1王立グルカライフル大隊及び第16空中強襲旅団戦闘団等約200名により実施されました。
私にとって、最も興味深かったのは、第1王立グルカライフル大隊でした。グルカとは、ネパールに住む山岳民族でありますが、グルカ族なる民族は存在せず、マガール族、グルン族などいくつかの山岳民族の総称です。第1次世界大戦前、東インド会社がネパール山岳民族たちの運動能力がずば抜けて高いことから仲間へと引き入れ、以降グルカ旅団として、イギリス軍の一翼を担うようになりました。第2次世界大戦では日本とも戦いました。戦後は香港に駐留し、対中国の国境警備を担っていました。グ ル カ 旅 団は、2015年に創立20 0年を迎えており、非常に長い歴史を持つ部隊です。
報道陣に公開されたの は、ヘリボン訓練でし た。4機の大型輸送ヘリCH― 47 JA チヌークがそれぞれの目標地点へと降下していきます。着地してもローターはそのまま激しく空を切り着地してもローターはそのまま激しく空を切り 日英部隊が飛び出してきました。
その姿を追うと、迷彩服こそ英軍のものでしたが、我々と同じアジア人であるグルカ兵たちがいました。私は、この時初めて、グルカ兵たちを目のあたりにし、大いに親近感がわきました。彼らは陸自隊員らと合流し、ともに森の中へと入っていきました。
更なる日英防衛協力が進めば、アジア太平洋地域を守るグルカ兵たちが、日本へと派遣される機会は増えることでしょう。