過去の一筆防衛論
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令和6年
前常任理事 小川 清史 防衛協会会報第168号(6.10.1)掲載
日本の安全保障システムの再構築
国防上の脅威は、植民地化を狙う欧米諸国にも警戒を怠るわけにはいきませんでしたが、19世紀終わりから20世紀はじめにかけて日本にとっての脅威は露と清でした。その際の日本の国防にとってのアキレス腱ともいうべき地域が朝鮮半島でした。露・清に朝鮮半島を支配されることは、日本の喉元に凶器を突きつけられるのと同じでした。
日本は1894年から日清戦争を戦い勝利し、朝鮮は独立し、台湾及び遼東半島を手に入れました。しかし三国干渉(露・独・仏)によって遼東半島を手放すこととなります。その10年後の1904年に日露戦争を戦い、露が租借していた遼東半島及び満州地域の支配権を手に入れます。その後日本は1910年に朝鮮半島を併合し、その翌年の1911年に「関税自主権」が回復されます。
日本にとっての最大の脅威対象2ヶ国を満州地域、朝鮮半島、台湾によってブロックしたこととなります。しかし、第二次世界大戦によって敗戦国となり、上記ブロック構築を代わりに担ったのが米国です。米軍は、日米同盟、日韓同盟、米比同盟によって前方展開しています。台湾とは台湾関係法によって米国は間接的に関与しています。
トランプ大統領は2016年の選挙演説で「ウクライナ支援は米国ではなく欧州の問題だ。独はもっと支援を拡大すべきだ」と述べるなど、米国が常に第一線に立つ仕組みには限界が来ているといえるでしょう。日本は集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」を法制定しました。また「戦略3文書」で防衛費を倍増し反撃力を保有することとしました。日清・日露戦争を通じて構築した日本の安全保障システムを再構築する時です。日本は、インド・太平洋地域における秩序構築と維持に極めて重要な責任を有しています。ここが日本国家としての踏ん張りどころではないでしょうか。防衛協会を通じ防衛意識の普及に一層尽力します。
(元陸自西部方面総監)
前常任理事 武内 誠一 防衛協会会報第167号(6.7.1)掲載
富士総合火力演習(総火演)が一般公開されないことに違和感をもたれる会員の方も多いかと思います。総火演は「富士学校の学生に対し、各種火器の効果と火力戦闘の様相を認識させる」ことを目的として昭和36年に「総合展示演習」の名前で開始されました。5年後の昭和41年「国民への陸上自衛隊の理解を得る」ため一般公開が始まりました。そもそもの目的は、学生教育であり今も変わりません。一般公開は、広報効果が高い反面、多くのコストがかかります。特に大変なことは、多くの来場者の安全の確保と誘導(輸送)です。
このため、案内板等を設置し、駐車場を確保し、シャトルバスを運行し、誘導員を配置し、警備態勢も整えます。これらに割かれる人的コストは極めて大きなものです。一般公開終了の事由について陸上自衛隊は、「我が国を取り巻く安全保障環境がますます厳しく複雑になる中、防衛力を抜本的に強化していく必要があることを踏まえ、部隊の人的資源を本来の目的である教育訓練に注力するために一般公開は行わない」としております。
近年、自衛隊は他国軍との共同訓練を重視しており、23年版の防衛白書によりますと、22年度に自衛隊が参加した多国間共同訓練は46回で18年度の22回と比べてほぼ倍増しております。航空自衛隊の外国機への緊急発進も、23年度は669回を数え依然高水準が続き、ロシアによるウクライナ侵攻以降、中国やロシアの軍用機が日本の領空近くを飛行する事案も増加し、海上も含めた警戒・監視は、極めて高い緊張感のもと24時間365日継続されています。一方、地震や水害などに伴う災害派遣も頻発し22年度は381件に上ぼり、現地活動人員は延べ1万8千人を数えます。
このような背景を理解したうえで、私たち防衛協会の会員は、「自衛隊の理解促進」のため、何ができるでしょうか。理解促進のための研修は、総火演、音楽まつり、観艦式、航空観閲式等の研修ばかりではなく、身近な部隊の普段の教育訓練の研修も意義あるものと思います。第1師団(司令部、東京都)は、昨年から「毎日が訓練公開日」と宣言し、いつでも短時間の研修を受け入れる施策を実施しております。師団長によりますと、この施策の狙いは「各部隊・隊員が、真剣に訓練に取り組んでいる姿を見て、自衛官が本気で日本の防衛に向き合っている姿勢を感じて頂ければ」とのこと。自衛官候補生教育や至近距離射撃までも公開しております。私が所属する東京都防衛協会は、この施策を最大限活用できるよう会員への情報発信に力を入れることとしました。ま
た、「ミニ研修」として、各駐屯地の既存の資料館の研修も取り入れております。これらは、「部隊に負担をかけず部隊の実状を知る」大事な施策と考えております。大いに工夫をして、「日本の防衛に本気で向き合う自衛官」を肌で感じましょう。
常任理事 伊藤 俊幸 防衛協会会報第166号(6.4.1)掲載
防災の責任者は県知事
防災、つまり災害を防ぐ方法は、「自助」(自分の命は自分で守る)、「共助」(地域・職場で助け合い、被害拡大を防ぐ)、「協働」(市民、企業、自治体、防災機関等が協力して活動する)が原則です。そして防災士は、社会の様々な場において、防災力を高める活動をすることが期待されている人です。防災士になるためには試験と実地訓練を受け、「防災に関して一定の知識・技能を習得した」と日本防災士機構で認証してもらう必要があります。
さて皆さんは、防災における「救助」の責任者は誰だと思いますか?実はその責任を負うのは「都道府県知事」なのです。これは「災害救助法」で定められており、都道府県知事には、平素から、「必要な計画をつくり、強力な救助組織を確立し、労務、施設、設備、物資及び資金の整備」することが義務づけられています。
総理は県知事を支援する立場
つまり「協働」の中心は総理や自衛隊ではなく、総理は「資金」を、自衛隊は「機動力」をもって県知事を支援する立場なのです。平素からトラック協会等と協定を締結し、警察・消防を保持している県こそが「救助」のメインプレーヤーなのです。ちなみに、防災士の教科書である「防災士教本」には自衛隊に関する記述は一か所しかありません。
資金についても被災当初、「予備費47億円は少ない」という野党の批判がありましたが、これは復旧や復興という発災後数週間後に使用するための費用ではなく、発災直後の避難所へのプッシュ型支援などに必要な費用でした。総理は「熊本地震など、過去の倍の金額」と説明されたのですが、理解不足からか野党やマスコミから「こんな金額で復興できるわけがない」と間違った批判を繰り返しました。
統合任務部隊指揮官とは
また「自衛隊の災害派遣」も、基本的には「都道府県知事から要請」され、「緊急性・公共性・非代替性」があると自衛隊が主体的に判断して派遣するものです。阪神淡路大震災の反省から「市町村長からの要請」や「自衛隊の自主派遣」も可能になりましたが、いずれにしても県や市など自治体と調整することなく、自衛隊だけで勝手な行動がとれるわけがありません。
今回のような大規模災害の場合には、陸上自衛隊の方面総監が統合任務部隊指揮官として、人命救助・生活支援・復旧支援などの任務の執行が防衛大臣から委任されます。つまり総理や防衛大臣は、救助や災害対応を直接指揮するのではなく、同指揮官の判断をモニターするという関係になります。現場の詳細な状況や実動部隊のことも知らない政治家が、東京の指揮所でマイクロマネージメントしたら現場は大変なことになります。
1月1日・2日の実際の活動
1月2日以来、防衛省はHPで自衛隊の災害派遣の状況を毎日公表しています。16:10、発災。16:30、空自千歳基地第2航空団のF15×2機を「自主派遣」、「情報収集」を開始。被災地にある空自輪島分屯基地(レーダーサイト)は40名を「自主派遣」、近隣住民の「救助」にあたり約1000名を基地内に収容。
16:45、石川県知事は、石川県を管轄する第10師団長(名古屋市守山)に「災害派遣を要請」、自衛隊は、石川県庁4人、輪島市1人、福井県庁4人、富山県庁2人の「連絡官」を派遣。以後「情報収集」「人命救助」に加え、「輸送支援」「給水支援」を開始。
1月2日10:40、防衛大臣は陸自中部方面総監を長とする「統合任務部隊」を編成(陸海空自衛官1万人態勢)
戦力の逐次投入は当然の判断だった
東日本・熊本地震との一番の違いは、被害場所が過疎地だったことです。発災直後に来た津波や頻発した余震により、能登半島北部を東西に走る唯一の道路は破壊され15か所の孤立集落ができました。
輪島市から100km南に存在する石川県庁(金沢市)はほとんど被害がありませんでしたが、遠距離であるが故に、現場の状況把握は非常に困難でした。その更に約10km南に所在する陸自金沢駐屯地1400名の隊員には被害現場の知見がありませんでした。
県庁に派遣した「連絡官」からの日々の報告を踏まえ、統合任務部隊指揮官は、自衛官の安全を考慮し、二次災害が起きないように、現場に逐次投入しました。航空機等による空からの情報収集だけの結果だけで、機動力をもって大量の自衛官を現場に投入することはできません。
自衛隊の本来任務は「国防」
同時期に行われた習志野の空挺部隊の演習を批判し、「なぜ空挺部隊を現場に投入しなかったのだ」というマスコミなどによる批判は、本末転倒の議論といえましょう。自衛隊の本来任務は、「国防」です。自衛官が「事に臨んでは危険を顧みず」、つまり命の危険を顧みず完遂すべき責務とは、「国防」だけなのです。災害派遣という「支援」活動に、命を投げ出せという批判は、無責任極まる暴論といえましょう。
常任理事 伊藤 盛夫 防衛協会会報第165号(6.1.1)掲載
このような状況等を踏まえ、防衛省は、来年度概算要求では、過去最大の7兆7385億円を要求している。こうした防衛力整備等により防衛態勢が整備され、有事が起きないことが何よりではある。
「ただ今ミサイルが発射されました」という臨時ニュースを頻繁に聞く一国民としては、その時どこに退避したら良いのかと考えてしまう。大抵は、「領海外に着弾しました」と言うことであるが、諸外国では、スイスなどが平時から有事に国民を保護できる防空壕などを完備していることが有名だ。
我が国でも万が一の他国からの攻撃に対して、国民の生命を守るためにすぐに避難できる地下施設を整備すべきではないだろうか?
(元経理装備局長)
令和5年
常任理事 金古 真一 防衛協会会報第164号(5.10.1)掲載
昨年11月、サイバーセキュリティー基本法が制定され、14分野の重要インフラ事業者にサイバー攻撃への備えを義務付け、国民生活又は社会経済活動に多大なる影響を及ぼし得る脅威に対して、官民一体となった備えが明確化されました。また、12月に閣議決定された国家安全保障戦略には、能動的サイバー防御の導入、新たな司令塔組織の設置、法制度の整備及び運用の強化を明示されています。
携帯電話大手の通信障害、電子マネー決済システム障害を経験し、多くの人々が既にその影響の大きさを認識されていると思います。サイバー攻撃は、我々の日常生活を脅かす身近な脅威に他なりません。今後、サイバーセキュリティー強化に係る施策が政府主導に進められますが、自然災害と同様、国民一人一人がその脅威を認識する必要があります。その上で、立法府には現実を直視した議論と早急な立法措置等、身近な脅威への迅速な対応を期待して止みません。
(前航空支援集団司令官)
常任理事 山田 真史 防衛協会会報第163号(5.7.1)掲載
他方、民生技術が軍事に転用される「スピンオン」では、現在進行形であるウクライナ戦争でも活用されているドローンが代表的である。また、バイオテクノロジーの世界では抗ウィルス薬の開発に際して病原菌の遺伝子改変によるバイオテロなどへ悪用される危惧もある。このように現代は民生技術と軍事技術の区分けが困難な時代になっている。米国国防省はこれまでも民生技術の発掘を目的に資金提供・開発援助を行ってきた。最近は中国が「軍民融合」政策のもと民間先端技術の軍事活用が急速に進んでおり、それに対抗する形で米国国防省は「国防イノベーションユニット」(DIU)による新興企業の技術発掘に本腰を入れている。今年に入って「日米両政府間はデュアルユース技術を巡る連携強化に乗り出した」との報道もあった。一方、日本国内では民生技術が意図しない形で軍事利用される可能性は問題であるとの意見も多く「デュアルユースジレンマ」とも呼ばれている。昨年末、発表された「国家安全保障戦略」には「安全保障関連の技術力の向上と積極的な活用」、「国家防衛戦略」には「先端技術の防衛面での活用、防衛産業を活用しつつ早期装備化を実現」と述べられている。本戦略を実行に移すためには、科学技術と安全保障の関係に対する我が国(政府のみならず国民)の意識及びその姿勢の変化が必要であろう。
(元航空支援集団司令官)
常任理事 岸川 公彦 防衛協会会報第162号(5.4.1)掲載
常任理事 小川 清史 防衛協会会報第161号(5.1.1)掲載
昭和28年、吉田内閣の木村保安庁長官は「民間防衛組織」建設の必要性について述べ、翌29年には改進党が防衛力整備計画の中で民兵制度「地方自衛隊」に言及しました。昭和30年8月、砂田防衛庁長官は「国民総動員による国民全体の力によってのみ防衛は成り立つ」と述べ、郷土防衛隊構想を積極的に推進しまし
た。同年10月、防衛庁は郷土防衛を目的とし、非常の際に自衛隊と協力して防衛の任に当たる「郷土防衛隊設置大要」を決定しました。
このように、自衛隊発足間もない頃には、郷土防衛隊設置が盛んに検討されました。そもそも、米国の州兵に相当する制度創設の検討は、昭和28年に駐留米軍が「都道府県戦闘警護隊」創設を吉田内閣に勧告したことに始まりました。
しかしながら、昭和30年11月、成立したばかりの自由民主党によって、郷土防衛隊構想は時期尚早であるとして白紙に戻されました。その後、昭和36年、第2次防衛力整備計画決定時に、国防会議で「全国的規模における民間協力の組織について検討を行うものとする」との申し合せがなされました。しかし、昭和40年に「三矢研究」が国会で問題視されてからは、郷土防衛隊研究など有事における民間による作戦協力の検討は全て中止されました。そして、いわゆる「郷土防衛隊」の必要性は認められつつも、実現することなく戦後77年が過ぎました。
第二次大戦後、これまでは幸いにも日本国内での戦争の惨禍は起きませんでした。しかし、世界を見渡すと戦争は常に途切れることなく行われています。2022年12月現在も、ウクライナ戦争が継続していま
す。同戦争からの教訓として、日本の地下シェルターなどの避難施設は十分なのか、国民は武力侵攻前に避難できるのか、といった疑問が多く聞かれます。
平成16年から施行されている「国民保護法」には国、各公共機関等の措置すべきことが記述されています
が、実際に措置を行う都道府県知事の指揮下には国民保護専門組織は未だ存在しません。国民避難のための専令和4年
常任理事 武内 誠一 防衛協会会報第160号(4.10.1)掲載
それ以上に課題と感じることは、国を守る気概についてです。18歳以上の男女に対するアンケート「もし戦争が起こったら国のために戦うか?」という2017年の世界価値観調査において、日本は13.2%が「はい」と回答しております。これは、79カ国中最も低く、次に低い国(リトアニア)が、32.8%であり、突出して低い結果です。また、年齢層別に時系列で比較したデータでは、1981年から2017年の間、30歳以下は、11.5%から8.8%に減少しておりますが、50歳以上は、31.8%から16.6%に大きく減少しており、中高年の意識に問題がありそうです。この点も踏まえて、国民の防衛意識の高揚という防衛協会の目的達成のための活動を行っていくつもりです。
(元陸自富士学校長)
常任理事 伊藤 盛夫 防衛協会会報第159号(4.7.1)掲載
防衛3文書改訂に期待する
昨年10月、岸田首相は就任時の所信表明演説で防衛3文書の改訂を表明、敵基地攻撃能力も含め、あらゆる選択肢を排除せずに改訂作業を行うよう関係閣僚に指示し、今年末までには新たな防衛3文書が策定されることになっている。
なお、防衛3文書とは、
①国家安全保障戦略(2013年12月策定)
②防衛計画の大綱(2018年12月策定)
③中期防衛力整備計画(2018年12月策定)
以上の3文書をいう。
これらの改訂を急ぐ背景には、覇権主義的な動きを強めて軍拡に突き進む中国と、核・ミサイル開発に邁進
し、頻繁にミサイル発射を繰り返す北朝鮮の存在により、我が国を取り巻く安全保障環境が文書策定時の想定
を超え、悪化の一途をたどっていることがある。
これに輪をかけるように、今年2月には「ロシアによるウクライナへの軍事侵攻」という、国際秩序の根幹を揺るがす重大事態が発生した。この大波乱の幕開けとなった今年は、国内外の節目となる重要行事・政治日程が続いている。
◇5月:「沖縄本土復帰50周年」(1972年5月15日に米国から返還)
◇9月:「日中国交正常化50周年」(1972年9月29日の日中共同宣言による)
◇10月頃:「5年に1度の中国共産党大会」(習近平政権が異例の3期目を目指す)
◇11月:「米中間選挙」(次期大統領選を占う11月8日)
いずれも、日本の外交・安全保障政策に深く関わる重要な出来事といえよう。
ロシアの一方的な侵攻により、多くの市民が犠牲になり、街が無残にも破壊し尽くされている様子が、ウクライナから毎日リアルタイムに映像となって映し出されている。この、現在進行形で起きている悲惨な現実は、我が国を取り巻く安全保障環境の厳しさを日本国民自身に強く認識させ、ぬるま湯体質から脱却すべしという警告を与えていることは間違いない。その意味で、今回のウクライナ問題は、我が国に対し「安全保障政策に国民一丸となって真剣に取り組みなさい」という強い警鐘が鳴らされたものといえよう。
いずれにしても、世界地図の安全保障体制の色分けが大きく変わろうとしている中で、防衛3文書の改訂作業が進行していることは確かだ。我が国の安全保障政策を大きく左右することになるであろう今回の防衛3文書の改訂には、よりスピード感を持った抜本的な防衛力の強化策が求められ、その成果に大いに期待したい。
最後に、米元国家安全保障担当大統領補佐官マクマスター氏の「戦場としての世界」(BATTLEGROUNDS)の日本語版序文から引用したい。
「我々はどのようにして自由世界を守り、来るべき世代のためにより良い未来を力を合わせて築いていけるだろうかー。」
(元防衛省経理装備局長)
常任理事 小川 清史 防衛協会会報第158号(4.4.1)掲載
台湾の防衛構想について
2017年から採用されていた台湾の対中防衛戦略であるODC(Overall Defense Concept)の文字が、台湾2021QDR(四年期国防総検討)から消えた。
この台湾の防衛構想ODCは、2008年米側発表の戦略と足並みをそろえて策定された防衛構想であった。その防衛構想が、台湾側から突如一方的に破棄されたかのような状況である。
米側は、この事実を受けて、ODC構想に戻るように台湾を説得するとともに、もし異なる構想を採用するのであれば、新たな構想を早期に米側に提示すること、それに応じて米側ODCも軍事戦略を見直すことが必須になる旨が報じられている。
一方、台湾側の発表によると、ODC構想を捨てたのではなく、2021QDRにある軍事戦略には、ODCは含まれているとの見解である。
どちらが正しいのかは、その舞台裏を知らないので判定はできないものの、明らかに米台間には防衛構想を巡って認識の不一致があることが見て取れよう。
台湾が構想を修正もしくは変更したのは明らかである。台湾が構想を見直した理由を2点あげてみよう。
その一つは、「中国と台湾の軍事力構成があまりにバランスを欠いた非対称状態にとどまるような防衛構想であり、中国の侵攻に対して必要な期間持ちこたえ得るのか確信が持てないこと」であり、あと一つは、「中国による超限戦、情報戦(欧米ではマルチドメイン作戦と命名)に対応できない防衛構想であること」が挙げられるのではないだろうか。
米側は、これに対して、ODCに基づいた作戦によって、米軍来援まで台湾は持ちこたえ得る、超限戦や情報戦は国土防衛にとっては死活的ではないと台湾に主張しているようである。
こうした両者の認識がずれている状況は、冷戦期のNATOの大量報復戦略に反対した旧西ドイツの主張が思い出される。
西ドイツは自国領土が戦場となる可能性が極めて高い中、米国の核兵器の拡大核抑止に疑問を呈したのであった。協議の結果、あらゆる脅威レベルに対応できる「柔軟反応戦略」へとNATOの戦略は修正されたのであった。そして、通常戦力で劣勢であった米陸軍は、欧州正面の旧ソ連軍のOMG(作戦機動軍)を阻止するために、エアランドバトルドクトリンを1982年に確立した。
現在、東アジア地域の中距離核戦力バランスは中国優位である。更に、通常戦力においても台湾と台湾海峡周辺における即時使用可能戦力は中国側が上回っている。
台湾にとっては、冷戦期のNATO加盟の西ドイツとは異なり、同地域に台湾の所属する集団安全保障の枠組みは存在しない。更には、第一列島線諸国や東・南シナ海諸国の足並みも完全には揃っていない。
台湾の抑止力を向上することが当事国たる台湾のみならず日本にとっても最重要課題である。
日本にとって台湾有事は自国有事であるとの認識が深まりつつある。
台湾の防衛構想の見直しを巡る一連の協議が米と行われる中、日本もより積極的に取り組むことが期待されよう。
(元陸自西部方面総監)常任理事 吉田 浩介 防衛協会会報第157号(4.1.1)掲載
新型コロナウイルスとの闘いは2年が経過しようとしています。この間、防衛省・自衛隊はクルーズ船対応、感染拡大防止のための各種活動、大規模ワクチン接種会場の設置・運営等様々な場面において極めて重要な役割を果たしてくれました。
クルーズ船やホテル等施設に隔離された人々に対する生活支援、あるいはクルーズ船から医療機関への輸送支援等の自衛隊が行った活動は自衛隊でなければできない、あるいは自衛隊がやらなければならない業務だったとは思えません。担当すべき部署が不明確、あるいは本来的に担当すべき部署が作成する対処計画に必要な活動が盛り込まれていない等、緊急性という理由から防衛省・自衛隊が引き受けざるを得なかったというのが実態だったと思います。厳しさを増す安全保障環境を踏まえれば、自衛隊が活動を開始したとしても、本来的に担当すべき部署が遅れても、然るべき対応を取り、自衛隊から業務を引き継ぐ等、自衛隊が本来の任務に専念できる措置が取れられる必要があったと思います。
今次コロナウイルス対応の教訓を活かし、防衛省・自衛隊が主体的に対応しなければならないようなことが繰り返されないよう、また、従事する自衛隊員が誇りを持てる業務を付与する等、将来も起こり得る感染症を見据えて早急な改善措置が講じられることを切に願います。
加えて、ワクチン接種について、医療従事者や高齢者等は優先接種者に指定されましたが、自衛隊員(一部の自衛隊医療従事者等を除く)は優先対象者に指定されませんでした。諸外国のように国防、治安、消防等社会生活・活動の基盤を提供する業務に従事する人々が優先接種者に指定される必要があると考えます。
(元空自補給本部長)
令和3年
常任理事 山田 真史 防衛協会会報第156号(3.10.1)掲載
最近、「安心・安全を…」という言葉を耳にする。「安心」とは人の心が安らいでいる事であり主観的なもの。対して「安全」とは客観的なものであり「受容できないリスクがない」状態を意味する。
「安全」であれば「安心」なのか?「安心」であれば「安全」なのか?禅問答の様だが、「安全」は「安心」の必要な条件であることは間違いない。
「安全」に対する捉え方には日本と欧米では違いがあると言われている。我が国における「安全」は危険なものは一切存在せず、いわゆる「絶対安全(ゼロリスク)」の傾向が強い。また、人への対策を優先、教育を重視し対策にコストをかけない傾向にある。一方、欧米では利便性のあるモノには必ず危険性がありその度合いが問題と考え、技術的対策を優先し対策にコストをかける傾向にある。
さて、安全保障においてはどうであろう。2018年内閣府が行った世論調査では、【日本が戦争に巻
き込まれる危険性がある】:85.5%、【日本を守るための方法は現状どおり日米の安全保障体制と自衛隊で日本の安全を守る】:81.9%となっている。一方、【自衛隊の防衛力は今の程度でよい】:60.1%と過半数の国民は自衛隊の現状で「安心」と感じており、安全保障の面ではゼロリスク思考から既に脱却している様にも見受けられる。
2021年春、いくつかの報道機関が行った意識調査によると【中国の軍事力に脅威を感じる】が8割を超えた。また、防衛費を抑制する意味で設けられたGDP1%枠に対しては、その枠に「こだわらない」とする防衛大臣の発言もあった。
将来の我が国にとって「安心」できる「安全」な防衛力(抑止力)がどの様な規模になるのか議論に注目したい。
常任理事 伊藤 敏幸 防衛協会会報第155号(3.7.1)掲載
常任理事 山下 万喜 防衛協会会報第154号(3.4.1)掲載
(元海自自衛艦隊司令官)
常任理事 吉田 浩介 防衛協会会報第153号(3.1.1)掲載
令和2年
常任理事 岸川公彦 防衛協会会報第152号(2.10.1)掲載
「非公開」総火演の意義
命令の第1条「状況」について
自衛隊が主たる任務に邁進できる民間態勢の整備
平成31年/令和元年
そもそも日韓GSOMIAってなに?
「専守防衛と文民統制を考える」
それでいいのか韓国海軍
防衛大綱見直しと戦士の確保
平成30年
石野 次男(全国防衛協会連合会常任理事)
ドイツのメルケル首相は「欧州は米国のリーダーシップにもはや依存することはできない」と発言。
中国の周近平国家主席は、米国主導の世界秩序が後退したら、その隙を突き今迄の国際関係を変える意図を持つと言われている。南シナ海における人工島建設と軍事拠点化、東シナ海への海警艦艇の派遣等はその兆候とも言える。
国際情勢がこれほど変動しているにも拘らず、日本では国防の基本となる憲法の改正が進まない。憲法を護り軍事力を持たずに平和を維持できたという錯覚や憲法9条アレルギーが、安全保障上の正しい脅威認識を阻害しているのであろうか。
だとすれば、教育やメディアの安全保障に関する質的向上、国会における国家的戦略に関する論戦の充実に期待するほか無いのだが、報道番組を見ても、ワイドショーかと見誤る内容のものや、日本への脅威に触れず他国の主張を正当化して報道するものもある。
国会でも野党は政策の議論は最小限に止め、官僚や政治家のスキャンダルを責め立て政府の足を引っ張ることに尽力しているのが現状。憲法公布から70年を超え、その間、国際情勢や国内情勢は著しく変化している。
それに伴いドイツでは60回、フランス27回、カナダ19回、イタリア20回、韓国9回、米国6回と適宜憲法を改正している。日本だけが憲法正できていない事実とその背景について、今こそ厳しく認識すべきである。
永岩 俊雄(全国防衛協会連合会常任理事)
過去、日中両国は、「尖閣諸島等東シナ海の海域において近年緊張状態が生じていることについて異なる見解を有していると認識し、対話と協議を通じて、情勢の悪化を防ぐとともに、危機管理メカニズムを構築し、不測の事態の発生を回避することで意見の一致をみた。」として関係改善を模索してきた経緯がある。
この合意は、いわば「Agree to Disagree」ということであり、「合意できないことに合意して、対話の場を設ける」ということにすぎないかもしれない。つまり、中国の関心・思惑は日本とは異なると認識しておくことが肝心である。
中国が「領有権棚上げ論」を持ち出すタイミングはいつも絶妙であり、その言い振りも巧妙である。実効支配のプロセスが順調に進まない場合、中国は必ずと言っていいほど「領有権の棚上げ」を持ち出す。
中国は非常に強かな国である。そのことを十二分に認識した上で、喫緊の課題である偶発事故防止に関わる協議に臨む必要があるということであろう。実務関係者の奮起を期待したい。
Involving the People’s Republic of China 2014)
伊藤 俊幸(全国防衛協会連合会常任理事)
米海軍の空母は、一隻に60機以上の“戦闘爆撃機”を搭載でき、その空母を数隻集合させ、間断なく他国を空襲することで一国の意思を屈服させる、いわゆる“攻撃型”空母です。 しかしこれが可能なのは米海軍だけです。
ロシア、中国、フランス、英国なども空母を保有していますが、それぞれ15機程度の“戦闘機”しか搭載できません。戦闘機は戦闘爆撃機と違い、大した地上攻撃能力はありません。
海軍の艦隊にとって脅威の一つは航空機による“空襲”で、空母の第一任務は“艦隊防空”なのです。空母保有を家に例えるなら“屋根”が完成すること、といってよいでしょう。
イージス艦も優れた防空能力がありますが、それは“傘”を差している状態といえます。米国以外の海軍が空母を保有するのは、行動する艦隊上空の航空優勢を確保するためで、これは“防御型空母”ということができます。
日本は憲法解釈上、専ら相手国土の潰滅的破壊に用いられる攻撃的兵器は「自衛のための必要最小限度の能力」を超えるとされ、ICBM、長距離爆撃機及び“攻撃型空母”の保有はできません。
またよく報道されるF―35Bは爆撃機ではなく“戦闘機”です。しかも仮に“いずも”に搭載したとしても10機程度しか格納できません。 兵器が持つ本来の意味を正しく理解した上での議論が必要です。
松下 泰士(全国防衛協会連合会常任理事)
北の脅威が日増しに大きくなっているのに韓国は何故こんなに呑気でいられるのだろうという思いがあり、通訳の女性にそのあたりのことを聞いてみた。彼女曰く「韓国人にとって北の脅威って、日本人にとっての地震みたいなものではないでしょうか。」とのこと。建国以来、いつ何をするか分からない北朝鮮といつどこで起きるか分からない地震・・なるほどである。
そのような話をした後の11月16日、まだソウルに滞在中であったが、釜山の北でM5.4の地震が発生した。これは、観測史上2番目の大きさらしい。現地では死者こそ出なかったものの家屋の倒壊、建造物のひび割れなどがかなり見られたほか、日本のセンター試験にあたる試験が延期になったとTVが伝えていた。
我が国では、大きな地震に見舞われる度に建造物の耐震基準が厳しく精緻に設定され各地で大小の地震防災訓練が行われるなど地震対策が施されている。
片や韓国も我が国が地震に備えていると同様、北の侵攻に対して対策を講じている。非武装地帯の韓国側には、長い監視ラインに多くの兵士を配置し、首都防衛司令部や特殊戦司令部がその時に備えている。そして、ソウルの地下鉄とビルの地下には全ソウル市民が72時間籠城できるだけの水と食料が備蓄(60時間以内に反撃攻勢に転じる見積もりに基づく)されているという。
一方で、韓国では地震発生頻度が低く、起きても小さな規模であった。このため、建造物の耐震基準は甘く、地震防災訓練などは行われてこなかった。ところが、最近になって頻繁に揺れるようになり、大きな課題になりつつある。
翻って我が国はどうだろう。地震対策は良いとして、北朝鮮の脅威に対する対策は、韓国を呑気だと言えるほどのことが施されているのだろうか。弾道ミサイル以前からスカッド、ノドン、スカッドERなどは我が国の一部あるいはほぼ全部を射程におさめている。
弾道ミサイルを含め、これらに対し迎撃方法や策源地攻撃の議論はよくなされるが、ミサイル攻撃から市民を守る街づくりの話はあまり聞いたことがない。
平成29年
廣瀬 清一(全国防衛協会連合会常任理事)
相次ぐ北朝鮮のミサイル発射に対し、自民党の「弾道ミサイル防衛に関する検討チーム」は敵基地攻撃能力の保有について検討開始を求める提言を行った。
政府は「当面検討する計画はない」としているが、かつて1956年鳩山総理の時代に「座して死を待たない防衛政策として攻撃を阻むために誘導弾などで基地を叩くことは自衛の範囲に含まれる」と答弁し法的な解釈では敵基地攻撃は合法と解釈された。しかし実際に保有することはなく、またこれまで検討すら行ってこなかった。
日本は専守防衛を基本理念とし、他国を直接攻撃する能力のある装備はもたず、攻撃は専ら米軍に委ねる立場を堅持してきた。しかし他に手段がない場合、敵基地攻撃について引き続き米軍に委ねつつも、侵略事態の未然防止のため、また攻撃を受けた場合の被害極限化のため何が必要かを検討する必要がある。
即ち策源地攻撃能力を保有し、米軍の情報、打撃力とあいまった更に強固な日米協力体制の維持が求められる。
◆敵基地攻撃能力とは
一般的には敵基地や策源地を攻撃できる弾道ミサイルや対地攻撃用の巡航ミサイル、航空機に搭載する対地攻撃ミサイルや誘導爆弾となるが、爆撃機を有さない投下爆弾等は現実的でない。
また、一方で策源地情報の収集分析能力の構築、遠方まで出撃するためには様々な支援装備等が伴うことは言うまでもない。
先般、F―35に射程300㎞の空対地ミサイル(JSM)を導入する検討を始めたとニュースで報じられた。敵基地攻撃にも様々な手段や方法がある。
◆検討すべき課題
敵基地攻撃能力の手段や方法の検討の前にいくつかの課題がある。敵基地攻撃は何を目的とし如何なる効果を期してその能力を保持するか、またそのためにはどれほどの手段や能力を持つべきかを検討する必要がある。
抑止力の一手段としてその能力誇示する程度から本格的ミサイル抑止戦略まで検討すべき課題は多い。また当然多額の防衛費を担保しない限り飾り物になる。
また本格的な攻撃能力保持となれば米国との役割分担での調整や周辺国との関係においても課題は残る。何よりも専守防衛政策をこれまで固執し続けてきた日本国民の幅広い理解がないと実現は難しい。
◆情勢の変化に対応できる防衛政策
冷戦時代にできた各種の防衛基本政策は近年の情勢変化を受けあらゆる政策が見直されてきた。「敵基地攻撃能力不保持」もまさにこれまでの冷戦時代に出来上がった遺物となっているように思われる。
日本は日本独自の政策で日本の平和と独立を守ってきたが、時代の変化に対応できる柔軟な国であってほしい。先ず何事も議論を重ね検討をスタートすることが重要である。
千葉 德次郎(全国防衛協会連合会常任理事)
侵略・侵害を思いとどまらせるという、心理的効果を狙うものである以上、万が一脅威が及んだ場合には、これを速やかに排除できるという対処力(懲罰能力)が裏付けとして不可欠である。 防衛力は、相手の目に映りやすい対処力であり、シームレスな法整備や作戦機能、教育・訓練、部隊編成・配置等、特に、国境に配置される陸上戦力が不退転の国防意志として周辺国に示される。
また、防衛力は、その運用を演練することで実効性を示威し、抑止効果を更に増長する。米陸軍・海兵隊と離島奪回訓練をする陸自部隊、米海軍艦船の護衛任務に就く海自部隊、米戦略爆撃機を護衛訓練する空自部隊等あらゆる日米共同訓練並びに多国間訓練が抑止効果の拡大をもたらしている。
抑止は、あくまでも直接脅威が我が国に及ぶことを回避するためのものであり、「如何に引き金を引かせないか」という平和を守る戦いそのものである。平和とは、脅威に付け入る隙を見せない安全保障政策、特に防衛努力の収斂によって抑止状態を維持することであり、云わば、均衡のとれた「力いっぱいの綱引き」状態の継続ともいえよう。
その努力の身近な第一歩が、自分の国は自分で守るという愛国心を基本とした国家安全保障を支える社会的基盤の強化であろう。
石野 次男(全国防衛協会連合会常任理事)
それは、平成3年6月から平成7年12月までの約4年半もの間実施された雲仙普賢岳の火砕流に対する災害派遣の撤収行事における長崎県知事(当時)の挨拶です。「人の命は地球よりも重いと思っていたが、その人の命よりも、もっと大切な使命感というものがあることを初めて知りました。」と語っています。
あの荒れ狂う火砕流の中へ身の危険を顧みず決死の思いで飛び込み、人命救助に当たった自衛官の姿を見て感動し、使命感の大切さを言葉にせずにはいられなかったものと思います。
自衛官の行動は東日本大震災時でも同様です。雪が降る中、胸まで水に浸かる状況下での捜索救助活動、多数のご遺体の搬送、高濃度の放射線量下での消火活動等、どれもこれも使命感という言葉を抜きにしては語れません。
この使命感は、日頃の厳しい訓練や先輩達の行動等を通して人の命の重さとその命を守ることの大切さを学びつつ醸成されてきたものです。平和安全法制の審議中、「自衛隊員のリスクが増える」として、平和安全法制の成立に反対していた先生方がいました。この先生方は「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に務め、もって国民の負託にこたえる」自衛官の使命感を正しく理解した上で発言していたのでしょうか。
自衛官の使命感に対する理解や敬意もなく、ただ法案の成立を阻止するためにだけ言っていたとすれば、自衛官に対する侮辱以外の何物でもないと思います。使命感という言葉の真の意味を理解しようとせず、右翼的だ、軍国主義だとして使用を躊躇う風潮が未だ残っていますが、長崎県知事のように、使命感の重要性、尊さを正しく理解し、その言葉が自然に使われるようになれば、自衛隊のみならず、警察、消防、海上保安庁等、使命感を発揮する人達に対する敬意も自ずと払われるようになり、隊員たちの士気高揚へと繋がるものと思います。
いずれにしても、国を守る、人の命を守るということは決して容易なことではなく、使命感があってこそできるものであり、使命感とはそれほど重要なものなのです。県知事の「人の命より、もっと大切な使命感がある」という表現は、正に的を射た表現ではないでしょうか。
松下 泰士(全国防衛協会連合会常任理事)
今回は、米国の大統領選についてではなく、この所謂レッテルやネーミングの持つ洗脳効果等について考えてみたいと思います。
世の中のあらゆる事項や事象を端的に表現する手段ではありますが、必ずしも適切ではない、あるいは意図的に実態と異なる印象を惹起させる表現もあります。それが単なる商品などでは詐欺程度のことですが、これが我が国の安全保障にかかわることでしたら大いに問題です。
先ず、最近の例では、「平和安全法制」を「戦争法案」とレッテル貼りした政党がありました。法案の内容をよく見ない多くの国民を意図した方向に誘導する目的をもって用いたのが「戦争法案」でした。
最今の「年金カット法案」というのも同様の効果を狙ったものでしょう。「生前退位」という言葉も使われていますが、この言葉には連続性を感じません。やはり「譲位」が正しいのでしょう。
これらは、まだ分かりやすいのですが、いつの間にか染み付いてしまった言葉もあります。例えば「国際連合」。英語ではUnited Nationsであり、どこにも国際を示す言葉はありません。この訳語のせいで、未だに敵国条項すら改正されない組織に日本人はどれくらいの幻想を抱いたことでしょう。もっとも加盟国も約200か国になり、「国際連合」と呼ぶにふさわしいものになりつつあるのかもしれません。
「中国」という呼称はどうでしょう。中華人民共和国を「中国」といい、シナ大陸を中国大陸といい、そこでの不連続な権力の盛衰史を中国4千年の歴史といいます。そうしますと、たかだか70年ほどの歴史しかない中華人民共和国が、シナ大陸における4千年の歴史を継承しているような錯覚に陥ります。また、その軍隊を我が国でも「人民解放軍」と呼んでいますが、チベット、東トルキスタンそして南モンゴルから民族の尊厳を奪った軍です。解放軍という言葉の欺瞞性に敏感であるべきだと思います。
最後に、気になるのは、「終戦の日」です。この日で戦争が完全に終わり、そのまま今に連なる戦後があると思い込まされているような気がします。日本軍が武装解除されてから1952年4月28日にサンフランシスコ講和条約が発効するまでの7年弱の被占領期は戦争状態という見方もあります。そして、被占領期間中に、その後の我が国の在りようの多くが決められたにも関わらず、この期間が終った日は、何らかの力で国民の意識から意図的に遠ざけられてきたのではないでしょうか。遠ざけるための手法が、4月28日にネーミングさせないことなのではないかと思います。
トランプ氏が大統領になれば、我が国は自主防衛に目覚めるという意見もありますが、この7年弱に何があったのかを見つめ直さない限り無理だろうと思います。そのためにも4月28日という日に明確な意味を持たせる努力が必要です。もっとも以前から4月28日を「主権回復の日」とする動きがあり、2011年には祝日法改正法案まで提出されましたが廃案になっています。2013年には、政府により「主権回復・国際社会復帰を記念する式典」が開催されましたが、沖縄県では、同日を「屈辱の日」としているなど難しい問題もあります。しかし、それはそれで7年弱の記憶が取り戻せるなら大いに結構なことだと思います。
平成28年
永岩 俊雄(全国防衛協会連合会常任理事)
対領空侵犯措置は、主として他国の軍用機を対象とする国家作用であり、空における領域主権確保の最後の手段として、状況によっては「必要な措置」(武器使用)を行使する場合がありうる。 過去の国会答弁ではその武器使用基準の根拠の一例として「正当防衛あるいは緊急避難というものがこの武器を使用するのに許されている範囲」(52.6.11 参議院内閣委員会答弁)という説明がなされている。
しかしながら「正当防衛あるいは緊急避難」は私人の行為の正当化の要件であり、国家機関が行う法的秩序維持のための武器使用基準には本来的になじまず、緊急時の私人の行為として補完的にこれを許すものと考えることが妥当である。
一方、最近の周辺国の航空活動は、意図的な威圧行動を含め極めて活発化し一時も予断ができないような状況となり、今や、東シナ海上空が極めて危険な空域となりつつある。
このような状況の中とて、我が国の空における領域主権確保は一寸たりとも譲るわけにはいかない。しかしながら、それらの挑発に徒らに乗って意図しない偶発事故など起こされることがあっては絶対にならない。
対象国の挑発的な行動を阻止するための良薬は、我が国の領域保全に関わる国家意思の覚悟を相手方に明確に知らしめておくことであり、加えて、領空侵犯措置に関わる対応の在り方に躊躇や曖昧さなど無く、状況によっては「必要な措置」(武器使用)を取りうることを毅然と示しておくことが肝要である。
現行第八十四条においてその裁量要素や権限規定が明確ではないとするなら、防衛大臣は我が国の空の領域主権を守るため「我が国を取り巻く国際環境や国際関係」「領空侵犯機の領空侵犯目的の見極め」「軍事技術の趨勢」「国際法への準拠」「軍事的・専門技術的知見に基づく合理的な判断」等を総合的に勘案しつつ、自衛隊の部隊に対して「武器使用の裁量要素や権限規定」を改めて明確にし、内外に国家主権確保の強い意志を示しておく必要がある。
廣瀬 紀雄(前全国防衛協会連合会常任理事)
還暦を過ぎて当協会の調査研究チームに参画し、「国のために戦う意識」が世界で最下位(15%)ということを知りました。
そして、調査研究を通じて、個人的には、戦後の公職追放で教育界・言論界に起用された「敗戦利得者」(渡部昇一氏提唱)によって、自虐史観と個人最優先の「戦後教育」が行われ、国への忠誠義務不在の「言論空間」が築かれ、これらがいわゆる「戦後レジューム」の推進機関と監視機関として機能し、独立回復後も無国籍的国民の拡大再生産が続けられたためとの認識に至りました。
昨今、教育基本法改正により「公共の精神を尊び、伝統と文化を尊重し、我が国と郷土を愛する態度」が教育目標に掲げられて「戦後教育」の呪縛から放たれつつあり、日本人の平和ボケをカエルの世界に喩えた百田尚樹氏の「カエルの楽園」がベストセラーになるなど「言論空間」にも変化が見られます。
現在、憲法論議が高まっておりますが、当協会の「防衛意識」及び「防衛政策」に係る小冊子(当協会HP掲載)が、会員の防衛意識の高揚にお役に立てれば幸いです。
澤山 正一(全国防衛協会連合会常任理事)
災害派遣を含む緊急事態発生時の自衛隊の活動については、活動の実績等から多くの国民から理解され、自衛隊は信頼される存在になっています。
一方、平時の自衛隊の活動については、警戒・監視及び教育訓練等が主体で国民の目に映りにくく、理解もされづらく、私が現職の時「普段、自衛隊は何をしているのですか?」という素朴な質問を受けた経験があります。
これと同様目に映らない重要なものとして、「防衛意識」とか「愛国心」等がありますが、これらは相変らず低調のままと言えます。
これらは、教わったりして知識として理解するだけでなく、自ら関心を持ち日本の歴史・伝統・文化及び日本人の民族性等を自らの努力により学び身に着け。日本に対する誇り・愛着等を自覚して初めて血となり肉となるものではないでしょうか。
都会生まれで戦後育ちの私自身、愛国心等を学校で教わった経験がないのに、防衛大学校を受験する頃には、自分なりの愛国心等を身に付けていったのではと考えるのは、やはり日本の歴史・日本人について自らの努力で学んだ結果と思います。
「防衛意識の普及・高揚」を活動目的とする防衛協会として、目的達成の最良の手段は、国民の多くに我々の会員となってもらい、講演会・部隊研修等に参加して、「防衛意識」「愛国心」等に関心をもち、考える切っ掛けとなり、自ら考え自らの努力でこれらの考えを確立し、同じ認識・意識を持つ同胞を増やすことと思います。
こういう意味からも防衛協会の会勢の拡大に努力をしようではありませんか。
渡邊 元旦(全国防衛協会連合会常任理事)
昨年9月に「平和安全法制整備法案」が可決されましたが、衆参両院での審議において焦点になった一つが、自衛隊員の“リスクが増える、いやそんなことはない”という堂々巡りの議論でした。
これは抑止力の向上を目指した「日本の防衛に直結する集団的自衛権の限定的な行使」にかかわる法整備ではわが国が攻撃されるというリスクは軽減されますが、一方、国際社会の一員として国際平和に関わる法整備では、任務や行動範囲の広がりに伴いリスクが生じることがあるかもしれない、それらが切り分けられないまま議論されたためではないでしょうか。
そして、リスクが有るのか無いのかを議論することも大事ですが、わが国の平和と安全に繋がる国際平和のために行動する自衛隊員にリスクが生じるならば、それを如何に軽減するか、そのために国家として何をどのようになすべきか、という侃々諤々の議論がなされるべきだったと思います。
「駆けつけ警護」に関して明らかになった政府の考え方に、先ずは安心しましたが、法律に基づく種々の活動に必要な中身の充実に真剣に取り組んで欲しいと思います
平成27年
千葉 徳次郎(全国防衛協会連合会常任理事)
自衛隊は東西冷戦の渦中に創設され、一歩も領域を出ることなく、間接侵略及び直接侵略を抑止して、共産主義の脅威から我が国の平和と独立を守り通しました。
しかし、冷戦終了直後の湾岸戦争は、戦費供出のみで世界の平和回復に参加した日本国民の意識転換を迫り、平成3年のペルシャ湾への海上自衛隊掃海隊派遣を皮切りに、自衛隊も参加する国際社会の平和と安定の構築への道を開きました。そして、国内外から高い評価を得た海外活動は、平成6年成立の社会党村山政権下で「より安定した安全保障環境構築への貢献」として位置づけられ、今日の国際協調主義に基づく積極的平和主義に至っています。
国家安全保障戦略では、「自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配という普遍的価値やルールに基づく国際秩序」のもと、我が国の平和と安全のためには、アジア太平洋を始めとする国際社会の平和と安定が不可欠であると位置づけ、平和を維持するための抑止力の強化を第1の目標としています。
この平和の守り方の変化を、子供達に分り易く説明する際は、昭和時代の日本は、「自宅に放火された時のみ消火活動をする、近所や町内で放火事件があっても一歩も敷地を出ない、金だけ出します。」という姿勢だった。
しかし、平成以降は、「近所や町内で放火騒ぎが起きたら、町内の一員として危険を覚悟して一緒に火事を消します。町内の火事を協力して早く消さないと、最後は自宅が燃えるから。」と例えることができるかと思います。
また、放火という町内秩序が乱される事態を抑止するのであれば、町内会員が力を合わせて「隙の無い備えに万全を期すこと」でしょう。その為の①自宅周辺を片付け、消火器を備える。②町内防火組織の役割明示。③各家庭又は町内消火訓練の実施。④町内防火パトロールの実施などは現実的なものでしょう。
時代の変化とともに国の守り方も変わり、それを受けて防衛協会の活動も、部隊行事見学・研修、一部隊員との懇親・激励等から、広く一般国民を啓発し、一緒に国家の抑止力を強化するという活動に変化すべきかと思います
山崎 眞(全国防衛協会連合会常任理事)
2005年に米海軍作戦部長マレン大将は「もはや自国のみで海洋の安全を守れる国はない」として、同盟国・友好国の海軍を連携させる1000隻海軍構想を提唱した。ソマリア・アデン湾における多国籍海軍部隊は、このような構想の下に生まれた。
そもそも集団的自衛権は、実態としては戦前からあったが、国際法(国連憲章)で明確に規定されたのは戦後のことである。国連憲章では、「武力の行使は慎まなければならない」のが基本原則であるが、例外として次の三つの場合は武力行使が認められている。
①集団安全保障(安保理事会の決議)
②個別的自衛権の行使(自国に対する武力攻撃発生時)
③集団的自衛権の行使(密接な関係にある外国に対する攻撃発生時)
である。
集団的自衛権の行使は、なにも戦争へ突き進むためではなく、国連憲章に沿った武力行使の抑止に向かうためのものである。
一国平和主義はもはや国際社会では成り立たない。密接な関係にある外国との防衛上の緊密な連携により無用の紛争を未然に防ぐ。 これが集団的自衛権行使の本当の心である。
但し、自明の理ではあるが、たとえ同盟国との安保条約があり、集団的自衛権行使の決心をしても、まず自国で防衛する確固たる意志と行動がなければ、同盟国が助けに来ることは望めないことを銘記すべきである。
廣瀨 清一(全国防衛協会連合会常任理事)
昨年の調査では最も信頼される組織は自衛隊で国民からの信頼度は九割以上であった。一方、隔年に実施される自衛隊に関する世論調査では防衛問題や自衛隊に関心がないと答えている割合はこれまでとあまり変化がない。意識の上では戦後レジームは続いている。このところ防衛問題はマスコミで大きく取り上げられるようになったが話題の変化も極めて早い。注目されている防衛問題のトピックスについてコラム記事を掲載することとした。
◆イスラム国(IS)による邦人拉致殺害事件の教訓
去る二月にイスラム国で邦人二人が殺害された事件は自衛隊のイラク復興支援以来、久々に中東の情勢が日本の安全に直接関わりがあることを実感させた。結局日本政府は人質を救出できなかった。在外邦人の救出が話題となり、自衛隊の運用についても語られるようになった。
◆「在外邦人等の輸送」は可能
一九九四年朝鮮半島で生起した第一次核危機の際、現地在外邦人の安全確保や避難帰国が真剣に論議され、在外邦人を輸送ができる法案が成立し、はじめて自衛隊の運用が可能となった。この際、「邦人保護」の用語は先の大戦において在外居留民保護を口実に中国大陸へと戦線拡大したとして「邦人保護」ではなく「邦人等の輸送」の用語が使用された。武器の使用は正当防衛緊急避難に限るとされた。また一昨年のアルジェリアでのテロにより邦人十人が犠牲となったが、この時の教訓から航空機や艦船に加えて車両による輸送も可能とするよう法整備がされた。
◆在外邦人の「輸送」と「救出」は別次元
在外邦人の救出について一次マスコミで取り上げられたが、邦人保護における輸送と救出は次元の違う話である。領域国でテロリストの人質となっている邦人の救出ならともかく、今回の如きどこに所在しているか判らない邦人の救出は物理的に難しい。仮に法解釈上実施できるとしても、能力があるか否か、また実行するか否かは更に別次元の課題である。救出のためには相当な情報収集・支援体制並びに派遣先国との極めて密接な関係がなければ実行はできない。法解釈や法整備の課題と実行能力の課題が乖離してはならない。先ず必要なことはしっかりとした情報収集体制と派遣先国との外交軍事関係の確立である。
●129号 27.01.01 ひとりごと(シャッター)植田信行茨城県防衛協会 常務理事・事務局長
<平成26年>
●128号 26.10.01ひとりごと(集団的自衛権の思い出)戸田 量弘(連合会常任理事)
●127号 26.07.01ひとりごと(青年部の組織拡充へ)都丸和俊(連合会常任理事)
●125号 26.01.01ひとりごと(鏡開き)横田泰彦(京都府防衛協会常務理事)
<平成25年>
●124号 25.10.01ひとりごと(障子が閉まる)松本謙一(連合会事務局長)
●123号 25.07.01ひとりごと(全国各地の防衛協会と手を携えて)渡邊元旦(連合会常任理事)
●122号 25.04.01ひとりごと(国際法上の軍艦としての価値)泉 徹(連合会常任理事)
●121号 25.01.01 ひとりごと(外国人の入国)大越 康弘(連合会常任理事)
<平成24年>
●120号 24.10.01 ひとりごと(国民として果たすべき義務)小柳 毫向(連合会常任理事)
●119号 24.07.01 ひとりごと(災いを転じて福となす)廣瀬 清一(連合会常任理事)
●118号 24.04.01 ひとりごと(発想の転換)澤山 正一(連合会常任理事)
●117号 24.01.01 ひとりごと(幼児期の教育の在り方)小柳 毫向(連合会常任理事)
<平成23年>
●116号 23.10.01 ひとりごと(中国の安全保障観)永岩 俊道(連合会常任理事)
●115号 23.07.01 ひとりごと(東日本大震災に思う)廣瀬 清一(連合会常任理事)
●114号 23.04.01 ひとりごと(武器輸出の国際常識)山崎 眞(連合会常任理事)
●113号 23.01.01 ひとりごと(領域警備の任務等)大北 太一郎(連合会常任理事)
<平成22年>
●112号 22.10.01 ひとりごと(お盆休み)田中 満雄(連合会事務局長)
●111号 22.07.01 ひとりごと(部隊・隊員の喜び・励み)澤山 正一(連合会常任理事)
●110号 22.04.01 ひとりごと(誇りある歴史認識)廣瀬 紀雄(連合会常任理事)
●109号 22.01.01 ひとりごと(研究開発の重要性)廣瀬 清一(連合会常任理事)
<平成21年>
●108号 21.10.10 ひとりごと(外交・安全保障の連続性)山崎 眞(連合会常任理事)
●107号 21.07.01 ひとりごと(チャンスの神様)廣瀬 紀雄 (連合会常任理事)
●106号 21.04.01 ひとりごと(若者達の意識)大北 太一郎(連合会常任理事)
●105号 21.01.01 ひとりごと(日本である理由)渡邊 元旦(連合会常任理事)
<平成20年>
●104号 20.10.01 ひとりごと(防衛力整備)廣瀬 清一(連合会常任理事)
●103号 20.07.01 ひとりごと(部隊・隊員を激励)澤山 正一(連合会常任理事)
●102号 20.04.01 ひとりごと(米大統領選挙)山崎 眞(連合会常任理事)
●101号 20.01.01 ひとりごと(創造性開発)廣瀬 紀雄(連合会常任理事)
<平成19年>
●100号 19.10.23 ひとりごと(虫の目・鳥の目)渡邊 元旦(連合会常任理事)
●099号 19.07.23 ひとりごと(海の安全と権益)山崎 眞(連合会常任理事)
●098号 19.04.23 ひとりごと(定時定点)廣瀬 紀雄(連合会常任理事)
●097号 19.01.19 ひとりごと(北朝鮮・核ミサイル)山崎 眞(連合会常任理事)
<平成18年>
●096号 18.10.23 ひとりごと(靖国参拝)大越 康弘(連合会常任理事)
●095号 18.07.23 ひとりごと(国を愛する心)渡邊 元旦(連合会常任理事)
●094号 18.04.23 ひとりごと(閑中忙と国を守る体制)廣瀬 紀雄(連合会常任理事)
平成27年
植田 信行(茨城県防衛協会 常務理事・事務局長)
昭和53年8月埼玉県桶川市の民間飛行場に飛行可能な零戦で唯一オリジナル発動機の零戦52型の展示飛行があり、この当時もシャッターチャンスを待ち1枚1枚大事に撮影をした。初めて耳にする発動機の回転音と軽快な飛行に感激をした。
その後 平成8年8月に同じ零戦が茨城県の龍ヶ崎飛行場に飛来して、アメリカのP―51ムスタングと肩を並べて飛行する姿にまたまた感激して大事にシャッターを切ったものだった。 平成26年8月また同じ零戦が所沢の航空記念博物館に展示されたので、零戦に興味の無い女房を食事で釣り、荷物持ちとして同行して撮影をして来た。時間の経過に伴い機体の劣化が始まり、飛行せずに発動機を回しタキシングするだけだった。
平成22年頃から私のカメラがフィルムからデジタルになり、この時のアップの零戦は事務所のデスクトップの背景となっている。 昨年10月に航空自衛隊百里基地で航空観閲式(自衛隊発足60周年)が行われFー15やF―4、F―2が飛び交い、ブルーインパルスが曲技飛行を披露した。時の流れからデジカメ(500㎜のズームレンズ)で連写するが、技術が伴わずシャッターチャンスもありゃしない、数撃ちゃあたる状態だった。フィルムと違ってデジタルは駄目ならすぐ“削除”気に入ったものだけ残せば良い。残ったのは3分の1だった。F―15のアフターバーナーでの垂直上昇が何とか画面の真ん中に入り一人悦に入っていると、昼食時だったので女房は配られる弁当の心配をしていた。
11月の新聞にリバースエンジニヤリングによりロシアで再生された零戦(22型)が日本に帰って来たとの記事が載っていた。組み立てれば飛行可能とのこと、飛んだら今度は上手に連写で撮りたいと思う。 新年早々まとまりの無い話で洵に恐縮ですが、子どもの頃の飛行機への憧れがそのままとなり、いつの間にか古稀を過ぎてしまった者の戯言としてお許しを頂きたい。
平成26年
戸田 量弘(全国防衛協会連合会常任理事)
今年の夏は、集団的自衛権が熱い。7月1日、安倍内閣は集団的自衛権の行使を限定的に容認する憲法解釈の変更を決断した。防衛政策の大転換である。
集団的自衛権と言えば、私は、連日国会審議への対応に追われた内局部員当時の仕事を思い出す。ソ連がアフガニスタンに侵攻し米ソの対立が頂点に達していた1980年のことである。
この年、海上自衛隊は、リムパックという米海軍を中心とし、豪州、ニュージーランドなどの環太平洋諸国の海軍が加わる多国間演習に初めて参加したが、これが集団的自衛権の行使につながるということで、政治問題化した。
陸上自衛隊、航空自衛隊は未だ日米共同訓練を行っていない頃のことであり、個別の防衛政策の是非が集団的自衛権との関係で議論された最初の例ではないかと思う。
当時の防衛庁の説明は、演習は集団的自衛権を前提にするものではなく、戦術技量の向上を目的とするもの、また海上自衛隊の艦艇は専ら米海軍と行動を共にし、豪州などの海軍とは行動を共にしないということで懸念解消に努めたがその資料作りに汗をかいたことが今では懐かしい。
今年の演習には、中国海軍も初参加したと聞く。今昔の感も一入である。
都丸 和俊(全国防衛協会連合会常任理事)
現在の全国防衛協会連合会組織も平成元年設立から25年の足跡を刻んだ。我が国の人口動態に等しく当協会の高齢化も否めない。 私が全国防衛協会青年部と関わったのが平成13年からで当時22都府県の青年部で設立され、現在33都府県の組織になった。組織拡大活動を体験した者として、様々な苦労や手弁当での活動費や莫大な時間を要す事は紛れも無い現実だ。しかし、我が国の防衛は国民一人々が自ら守るという志の仲間創りの青年部活動は、今こそ緊急の課題で集中的に実施するべきであると考えます。
今年2期目を迎える全国防衛協会連合会青年部会野々口弘基会長に期待するところは大きい。 行動力と統率力のある野々口会長の下、青年部が組織的に拡充できるように全面的に支援することが防衛協会の責務であり、今後の活動の基盤である会員組織の拡大に繋げなければならないと私は考えます。
岩﨑 啓一郎(全国防衛協会連合会常任理事)
また、本年正月には国家安全保障局も設置された。 日本政府は「国際協調主義に基づく積極的平和主義」を掲げ、各種活動を推進するとともに、集団的自衛権や武器輸出3原則についてもいずれ新方針を明示すると報道されている。
グローバル化が進む世界において、我が国が国際社会における主要なプレーヤーとしてこれまで以上に積極的な役割を果たしていくことが期待される。
防衛力についても「統合機動防衛力」をより具体的に実現するための部隊の体制変更にも言及された。 日本もやっと、一部の盲目的一国平和主義から脱し、現実的な世界平和への貢献の路線を歩むことで、我が国の平和と安全を維持し、豊かで平和な社会を発展させていくことができよう。
その為の基本方針が国家安全保障戦略であり、戦後約70年を経て作成された意義は大変大きい。
防衛協会もこの新しい風にタイムリーに対応して防衛意識の高揚、防衛基盤の育成強化、自衛隊の活動への支援・協力を更に精力的に進めていきたい。
横田 泰彦(京都府防衛協会常務理事)
徳川幕府では、三代将軍家光の忌日が二十日(慶安四年一六五一、四月二十日)であるため、承応年間(一六五二~一六五四)から十一日に改め、諸大名これに倣う。またこの風が全国にひろがり今日に及ぶ。 京都では四日に鏡開きを行う風あり。新潟県高田では「鏡ならし」と言い、士族の家では七日、又は九日に具足の餅をおろし、男が礼服で調理に任ず。鏡餅は刃物で切らず、手または槌で割る仕来りで、切ると言わず「開く」とめでたくいう。
古書に、「正月十一日、御具足の餅御祝なり、‥‥具足の餅は刃物にてたたず。具足に刃を立てるという語をいむなり。弓の弦にて餅をこはすなり」。以上は、新年俳句歳時記、平凡社刊を参考にして、今日生活習慣となっている鏡開きのもとであります。
甲午新年、四海波静。国も治まる時津風。枝を鳴らさぬ御代を祈念致します。 平成二十六年元旦
平成25年
松本 謙一(全国防衛協会連合会事務局長)
◆ウェポンの進歩は、隊員に対して機械のような正確な戦技を求める。理性と感性・感情のバランスを上手くとる術が求められる。チームプレーの精神、今も昔と同じく求められる。私が入隊した頃に比べて、自衛隊を取り巻く任務環境は大きく変化。今では海外勤務も当たり前。国民の自衛隊に対する思いも様変わり。期待も大きい。現役の頑張りには、頭が下がる。
◆防衛協会がスタートして約50年。半世紀が経過し、「変えてはいけないもの」と時流に即して「変化させていくもの」をレビューする時期なのか。「今しかないでしょう」か。協会は、隊員に対してどのような暖かさを提供しているのか。「障子の役目」を果たしているのか。和風建築に障子は欠かせない。国の守りに協会は欠かせないという存在たるか。自問する。
◆事務局もこの夏から新たな陣容で、「4S」をキーワードに、会員の皆さんのお手伝いに取り組むこととなった。システム、スピード、スマイル、シンプル。皆様よろしく。
渡邊 元旦(全国防衛協会連合会常任理事)
50年前と言いますと、昭和36~37年頃、自衛隊が発足して7~8年、昭和35年には日米新安保条約が制定される等世情が騒然としている時期であり、税金泥棒と言われつつも昭和36年1月の裏日本豪雪はじめいろいろな災害に黙々として救援活動に任じる自衛隊員の姿を見て、地域の有志の皆さんが「せめて我々だけでも自衛隊をしっかり支援・激励していかなくては」という熱い気持ちをこめて各地に防衛協会を発足していただきました。
昨今、自衛隊は処遇も良くなり、国民の間にもすっかり認知されているので、防衛協会の役目は終わったという意見もあるようですが、自衛隊について国内はもとより海外での任務がより拡大し、かつ、東西冷戦期のように米国の傘の下で「自衛隊は存在することに意義がある」としていた時代から、周辺からのゲリラ・コマンドウ攻撃や尖閣諸島での領域侵犯等などにもしっかり対処することが迫られている時代に突入した中で、国民の防衛意識の一層の高揚を図り、自衛隊が与えられた任務を十分に果たせるようしっかり支援していく防衛協会の役目は更に更に必要になっていると確信しています。
全国各地の防衛協会及び連合会が手を携えて、それぞれ防衛協会の更なる充実・発展を通じて、防衛協会の目的・役割を果たせるよう力を合わせていきたいと強く念願しています。
泉 徹(全国防衛協会連合会常任理事)
一方で同盟国である米国の国防費削減及びこれまでの我が国の防衛費の削減により、抑止力の低下とみられたのか、中国漁業監視船等公船の横暴ぶりも枚挙にいとまがない。しかし、これだけであろうか。我が国の法的な整備がなされず我が国の対応が遅れてきたことはないであろうか。公船に対する我が国内的法整備が望まれる一方で、我が国は国際法上認められる自衛艦の軍艦としての権限を国内法上認めていない。これまでの自虐的歴史観からかあるいは空想的平和主義のなせる技か全く分からない。
国際法上、軍艦としての要件は、①当該軍艦が所属する外部標識の掲揚②当該国の政府に正式に任命されその名簿に記載された士官の指揮下にありかつ軍規に服する乗組員が配置されていることである。自衛艦は、この軍艦としての要件を備えており、事実、遠洋航海等他国の寄港地においては軍艦として処遇されている。
国際法上、軍艦には国際水域(公海、EEZ及び接続水域)における海上警察権が認められている。その内容は、近接権、国旗、国籍確認のための臨検、無国籍船の臨検、奴隷の運送防止、海賊行為の取り締まり、無許可放送の取り締まり、その他追跡権である。
これらを全て乱用することは戒めなければならないが、領海に入る前の公海上において、種々の確認が出来るこれら権限を放棄する理由は全く見当たらない。
多くの事をお願いするつもりはないが、戦後67年が経過し我が国が他の国と同様、ただ普通の国になることを切望してやまない。
大越 康弘(全国防衛協会連合会常任理事)
世界がグローバル化していく将来に向かって日本の経済力、国力を維持発展させるためには、国を開き、世界の荒波の中で競争し、勝ち残っていかねばならない。そのためには、もっと外国人を入れて、日本に刺激を与え、活性化させるのがいいではないか。
日本に住む外国人は3%にすぎない。先進国に比べ少ない。外国人向けの生活環境・制度を整備した上で、教育水準、技術水準の比較的高い外国人を選別して入国をもっと自由に認め、必要に応じ国内で教育を受け、技能知識を生かして働いてもらう。そして日本の経済力、国力を高めるのに寄与してもらうことだ。
米国は移民を認め、優秀な頭脳を誘致して国を活性化させている。
親のスネをかじり気力のない青少年は淘汰される世だ。外国人の刺激を受けて活力ある若者が増えていってもらいたいと思う。
平成24年
小柳 毫向(全国防衛協会連合会常任理事)
戦前までは義務を強いる社会であり、義務を意識し果たす中で日本民族精神が培われてきたのかもしれない。 戦後権利が認められ今や義務よりも権利が声だかに叫ばれる。義務は責任を意識するが権利は責任を意識せずむしろいろんなことを要求する。東電が値上げは権利であるとの発言やNHKが料金不払い者に対し裁判に訴える、これも権利意識だ。生活保護もその範疇に入る。
今、社会保障と税の一体改革が検討されているが、保障は厚く負担は軽くでは社会保障という名の社会保護であり日本人の精神をスポイルする危険性がある。
無理が通れば道理は引っ込む、権利が通れば義務は引っ込む、これが日本の現状だ。
今こそ百年・二百年後の子孫のため国民として果たすべき義務を問い直さなければならないのではなかろうか。国を守ることも大事な義務と思うが。
廣瀬 清一(全国防衛協会連合会常任理事)
○東日本大震災以前とその後の政治論調は大きく変わった。以前は厳しい財政事情にあって、「年金問題」「高速道路無料化」「子供手当」等、国民が享受する富の分配に関心が集中していたが、それが今日では「消費税問題」、エネルギー政策における「原発再稼働」、領土保全に関わる「尖閣問題」、日米同盟の深化の視点での「沖縄基地問題」等の根本的な問題へと論点が集約しつつある。時には国民に負担を強い、日本国が進むべき方向を見極める重要な論議ができる機運に向かっている。
○「政治主導」とは細かい予算の査定や、煩雑なお役所仕事の監督ばかりではなく、重要な問題を整理して論点を明確にし、国民に解り易く説明し、最後は決断をすることである。民主主義は時間がかかるが、今日の様に変化の早い情勢にあって、時には反対意見が多かろうが決断すべきは決断する時代ではないかと思う。
○このように国内での論議が根本的な問題へと集約できる機運が生まれつつある。また国民が等しく日本の進路に関心を寄せ、あるいは日本人としての責任を強く思うようになれば、最大の政治課題である「憲法問題」へと必ず議論が進展し、本格的に動き出すことを秘かに期待しているのは私一人ではないと思っている。
澤山 正一(全国防衛協会連合会常任理事)
一つ例をあげてみますと、防衛協会の重要な活動目的として自衛隊に対する支援・協力がありますが、そのうち、災害派遣・国際貢献活動等に参加する部隊に対する協力として、先ず頭に浮かぶのは、部隊への激励として激励品等の目録を会長等が代表して部隊長に対し贈呈をし、これでもって支援はしたとしています。
これはこれでいいのかも知れませんが、問題ははたして本当に部隊がこの様なことを防衛協会に期待していたのかという事です。
こんな事より部隊が駐屯地を出発する時又は帰隊する時に多くの会員が参加し直接隊員に対し激励・慰労等の声をかけるとか、近くの災害派遣ならば、現地に直接出向き、隊員が黙々と頑張り活動している現場を見、隊員に声をかける等が、また、国際貢献ならば、心のこもった手作りの慰問品を送るという案もあると思います。
本当に部隊が防衛協会に望んでいるのは何かと確認したり(例えば、出動した部隊の隊員家族に対する留守業務への支援等余り考え付かないニーズもあるかも知れませんね)、今まで以上に喜ばれ・効果的に実施するにはどうするのが良いかという発想で案を出し議論をして、いろいろ見直してみてはどうでしょうか。
小柳 毫向(全国防衛協会連合会常任理事)
著者は明治6年に長岡藩の家老の娘として生まれた、今で云うところのお嬢様である。しかし今時のお嬢様と違うのは、小さいころから厳しい教育と躾を受けており、女として必要な料理、裁縫、お茶、お花のほか6歳から四書五経の素読をやらされている。勿論親の強制である。
文章は語り口調で書かれており実に上品で読むほどに心が洗われる。著者は結婚のためアメリカに渡り、夫との間に二女をもうけるも夫が急逝したため一旦は帰国するが、日本の生活習慣に馴染めない娘のため再び渡米し異国の地で女手一つで子供を育てる逞しさも持っている。天晴れな女性と言わざるを得ない。
幼児期に厳しい躾を受けた子供と自由気儘に育った子供では成長して差ができるのは当然のこと、統計では日本の人口は2050年に約9,500万人まで減少すると予測されている。急速に少子化が進む状況では少数にして精鋭なることが求められるが、残念ながら我が国はその逆に進みつつある。幼児期の教育の在り方を真剣に問うべき時代であるかも知れない。
平成23年
永岩 俊道(全国防衛協会連合会常任理事)
昨年6月、自衛隊の退役将官数名で中国を訪問し、現役の中国人民解放軍軍人らと周辺情勢等について意見交換したことがあったが、中国の安全保障観は日本のそれとは全く異なる。 中国は共産党一党独裁体制であり、その権力基盤を軍隊に置いている。
共産党自身の政権を長期に亘って維持しているため、その政策にぶれがなく、極めて長期的な展望に基づき強気の国家軍事戦略を展開してきている。 核や空母の保有についても戦略的である。
また、軍事大国であることを国威発揚の手段として考えている節もある。
総じて、中国の国家戦略は非常に重層的で精緻、かつ狡猾であり、強かでもある。「威嚇戦」「麻痺戦」「攻略戦」を強要する一方で、「世論戦」「心理戦」「法律戦」「外交戦」「エネルギー戦」「サイバー戦」等といった極めて多次元の戦略を巧みに操ってくる。
中国のような「力の政治」を信奉する国家に対しては、バランス・オブ・パワーのパワー・ポリティックス意識を絶対に欠かすわけにはいかず、「拒否的抑止力」の毅然たる提示と強かな外交が不可欠である。
我が国の安全保障上、ここ数年が自らの覚醒の正念場と認識しなければならないが、いやはや政局の混迷は目を覆わんばかりである。
廣瀬 清一(全国防衛協会連合会常任理事)
それほどに東日本大震災の被害が甚大で派遣の規模が大きかったばかりか、人命救助等の被災者救援から緊急物資の輸送支援、給食給水や瓦礫の除去等、また原子力災害派遣における様々な活動等、不眠不休かつ広範囲の活動は国民の自衛隊に対する認識を決定的に変えたと思う。 ☆かつて防衛大学校第一期生の卒業式において、当時の吉田茂首相は卒業生を前にして、『諸君はこの先、国民から感謝されるようなことはないだろう。その覚悟で臨め』と訓示したと言われているが、国民に感謝される今日の自衛隊の存在を誰が予想できたであろうか。
予備自衛官まで動員して行われた十万人規模の災害派遣は自衛隊の歴史に大きな足跡として残るであろう。この経験は今後の自衛隊の在り方を検証する上でも大きな教訓とならなければならない。
☆災害派遣のための予備自衛官招集を誰が予測できただろうか、即応予備自衛官約七千人、予備自衛官四万八千人、予備自衛官補四千人の体制で良いのだろうか。
予備役の動員とは、そもそも国家存亡の危機に初めて行われるものである。今回の招集は災害の規模が大きかったことの他に様々な意味を持っている。同時に現役自衛官の数は果たして現状で大丈夫なのか。
この際、定員や予備役制度全体も考え直す機会にしてはどうかと思う。
☆日本国民の自衛隊に対する認知度は間違いなく高まり、今日、国民の自衛隊として存在できるようになったが。国民の防衛意識は本当に向上しているのか疑問も残る。
自衛隊に対する認識度と国民の防衛意識とは別のような気がする。国民の防衛意識の現れがこの度の防衛大綱や中期防衛力整備計画であるとするならば、今一度、防衛大綱についても検証が必要である。
山崎 眞(全国防衛協会連合会常任理事)
欧米諸国では、産業のグローバル化が進み、防衛産業においても、武器等の共同開発生産・部品の共通化等が常態化しており、各企業は世界レベルの先端装備の提供に強い自信を持っていた。勿論各国とも武器輸出による外貨獲得も大きな国是のひとつになっている。
当協会も平成22年度研究の一貫としてこの問題を取り上げ冊子を配布した。そもそも武器輸出が禁止されると、どの様な問題が生じるのか。グローバル化が進んだ欧米の現状を踏まえて考えると、次の様なことが言える。
まず、世界レベルの技術から我が国が取り残される。技術交流はギブアンドテイクの世界であり、外国との共同開発が出来ない我が国は世界から取り残される。次に、自衛隊だけを顧客とする我が防衛産業基盤は弱体化する。世界の先進技術が我が国に入って来なくなるからである。最後に、日本独自仕様で開発生産することにより、同盟国や友好国との装備の共通性がなくなり、これが共同運用にも支障を及ぼす。
武器の輸出は悪ではなく、むしろ輸出をしないことにより、同盟国・友好国等からの信頼を得ることが出来なくなるのが国際常識である。これが、欧米で得た率直な印象である。
大北 太一郎((全国防衛協会連合会常任理事)
▼昨年九月の尖閣諸島沖事件では、次々に繰り出してくる中国の威嚇や恫喝に国民は歯ぎしりしました。命がけで警戒にあたっている海上保安官は、向こうから軍艦が来たらと思うとゾッとすると、最前線の緊張感を語っています。 ▼急場を救ってくれたのは、いち早く「尖閣は日米安保条約の適用範囲」と言ってくれた米国のお陰です。しかし尖閣を領土の一部だと主張する中国がこのまま黙っているはずがなく、巡視船が遠巻きに監視しているだけでは紛争はまた起きます。韓国による竹島不法占拠やロシア大統領の北方領土視察は許し難いことですが、実効支配を示すには尖閣にも人を置くべきです。
▼軍事大国を目指す異質の隣国とどの様に向き合えばよいのか。尖閣を含む日本の南西諸島海域が中国の内海にならないよう、新たな「防衛計画の大綱」のもとで、島々への自衛隊配備や平時から自衛隊にも領域警備の任務を与える法整備など、今年こそ領土・主権を守る国の本気度を見せて欲しいものです。
田中 満雄((全国防衛協会連合会事務局長)
私には、子供が二人いていずれも独立し、息子夫婦は練馬区に、娘夫婦は近郊の戸田にすんでおり、各々孫が二人ずつ(5,4、3,1歳)います。 目白が実家である我が家に限っていえば、帰省パターンは通常とは異なり、都会から田舎とはならず帰省ラッシュに巻き込まれることもない。
では、子供達が孫を連れて実家に帰って来た時はどうすれば良いのか、特に孫達が夏休みを楽しく過ごすにはどうすれば良いのかを愚妻と相談をした。
そこで、一、絶対に怪我をさせないこと 二、無理をしないこと 三、出来る限り孫達の希望を取り入れる、これらを頭に入れて老夫婦は豊島園、お台場、品川水族館、椿山荘、スカイツリーと浅草、鉄道博物館と大奮闘。
でも努力の結果、孫達のうれしそうな「笑顔」と子供達夫婦から「有難う」と感謝の言葉もらい、都会でも田舎のおじいちゃん、おばあちゃんに負けないお盆休みができたのではと自負しています。
それにつけても血の繋がった子供の可愛さはひとしおである。子供虐待の報道が連日新聞、TVでなされているが犬や猫にも劣る行為がなぜ、いつから起こるようになったのか悲しい限りです。
自分の孫達に限らず、よそ様のお孫さんも元気でスクスクと育ってほしいと願わずにはいられません。
平成22年
澤山 正一(全国防衛協会連合会常任理事)
▼ 大きく長期の災害でしたから「災害派遣当初は、日本中が注目し、多くの人々の慰問・激励をいただいたが、最近は殆どなくなった」のが着任時の状況でした。 それでも隊員たちは黙々と災害派遣の任務に服していたわけですが、数ヵ月後珍しく慰問があり、現場指揮官である連隊長が、島原城の現場指揮所で部隊を代表して慰問者にお会いすることになりました。
▼ 慰問者は歌手のキム・ヨンジャさんで、「毎年欠かさず慰問にきていただいている」との事でした。 当日お会いして慰問品等をいだだきましたが、その際「なぜ、毎年欠かさず慰問に来ていただいているのですか」との私の質問に「軍隊が、国民のためこれだけ一生懸命頑張っておられる事に、国民として感謝の意を表し、慰問するのは当然です」(彼女の言による)とのことでした。
▼ 防衛協会の皆様の心もこれに通ずるところがあるのではないでしょういか。 近傍の駐屯地・基地又は災害派遣等の現場に赴き、「お疲れ様」「ご苦労様」と声をかけ励ます等の行事を企画・実行していただければと思います。それが部隊・隊員にとっては、何よりの大きな喜び・励みになるのですから。
廣瀬 紀雄(全国防衛協会連合会常任理事)
廣瀬 清一(全国防衛協会連合会常任理事)
▼専守防衛・非核三原則・武器輸出三原則等と自らの防衛基本政策に多くの制約を課していることを忘れ、何でも安価な外国の装備品にすることは如何なものかと心配である。官僚主導・装備開発=軍産複合の悪いイメージが先行する日本の世相にあって、研究開発のため日夜コツコツと努力している人々を忘れてはならない。
山崎 眞(全国防衛協会連合会常任理事)
▼ひとつ分かっているのは、インド洋派遣のような米国主導型の国際協力参加については反対と明言していることである。社会保障の財源捻出のために防衛費を縮小すると言う人もいる。また、強固な日米同盟があるにもかかわらず軸足をアジアに移すのが同党の本質的な方向性である。
▼心配なのは、仮にこのような政策を本当に施行した場合、我が国の外交・安全保障政策の連続性が保てるかということである。最悪、「無責任国家」のレッテルを貼られ、国際社会からの信頼を大幅に失い、同盟国である米国からも見放されることになりかねない。
▼今でも見放されるか否かの瀬戸際にある。安全保障の見地から見れば、米国は日本より韓国の方により信頼を置きつつある。一方、中国・北朝鮮から見れば「御しやすい政権」の出現により我が国から最大の利益を引き出せることになるだろう。一度このような事態に立ち至ったならば、これを現状に戻すだけでも10年以上はかかる。いや、国際関係の構造変化により二度と取り戻せなくなるかも知れない。外交・安保政策の連続性が求められる所以である。
平成21年
廣瀬 紀雄(全国防衛協会連合会常任理事)
▼戦には、戦機というものがあり、「チャンスの神様(カイロス)には前髪はあるが後ろ髪はない」とのことわざがあるように、事前にミサイル発射の兆候探知手段を講じ、平素から迎撃ミサイルによる初動対処能力を整えていれば、ピンチをチャンスに変えることが出来る。どちらを欠いても勝利は覚束ない。
▼今回の事案は、我が国が弾道ミサイルの探知手段を保有したこと、射程的に迎撃ミサイルの能力不足を明らかにした。当初、誤報となったが、起こり得るリスクである。報道によれば、1分後に誤探知と判明し、迅速に訂正されている。これは、平素から領空警備での経験が生かされている。
▼今回の教訓を基に、周辺国が核弾道ミサイルを実戦配備しているという現実を直視し、早期警戒衛星の保有や米国と連携した対処能力を担保する必要がある。
▼今回、マスコミの批判に拘わらず、麻生総理が、防衛省を励まされたことは、隊員の士気高揚に貢献したと思う。また、ゲーツ米国防長官の「自国への脅威でないミサイルには対応しない」との発言を重く受け止める必要があろう。
大北 太一郎(全国防衛協会連合会常任理事)
▼「戦後の日本の平和は、憲法第九条があったから守られたという意見ですか?」「第九条があったからとは思いません。自衛隊の方々の努力はもちろん認めますし、日米安保条約の力も大きかったと思います」。正月、大学生によるNHKテレビ討論「日本の平和貢献」の一コマである。
▼オヤッと思ったのは、いつもの不毛な対立ではなく、相手の意見にも一定の理解を示したことや、結論が「日本は戦えない国でなく、(力を持った上で)戦わない国を目指すべきだ」となったことだ。若者達の意識が世界の常識に近づいたのか。
▼米国大統領オバマ氏は、安全保障について就任演説の中で、安全と理想のどちらか一方を選択するのは間違いだと、理想を求めつつも力を背景にした現実対応の考えを明らかにした。
▼国際貢献が自衛隊の主任務の一つになって二年、ソマリア沖の海賊対策として新たに海自部隊が派遣された。混迷する政治状況の中で必要な法律さえ不十分なまま、任務達成は今回もまた派遣隊の努力に委ねられている。
▼今年、創立二十周年を迎える全国防衛協会連合会には、国民のさきがけとして更なる挑戦が求められよう。決意を新たに、日本のため自衛隊のため誇り高く進みたい。
渡邊 元旦(全国防衛協会連合会常任理事)
▼謹賀新年。今年の干支は“牛”ですが、“丑”とも書き、“紐”、即ち万物が厳しい寒冷の地中にあって、春を待ちながら忍耐強く鋭気を養い、活動に備え、力強く働き始める様子を意味するそうです。
防衛省・自衛隊の頑張りを大いに期待しています。
▼塩野七生氏の『ローマ人の物語』の3世紀前半(ローマの衰退期)のところに「ローマは、ローマである理由を少しずつ、自らの手で失いつつあったのである」、数行置いて「ローマ帝国のためにつくす人はすべてローマ人であり・・」という記述があります。
▼ローマ(人)を日本(人)に置き換えてみましょう。
「日本のためにつくす人はすべて日本人」とまでは言えませんが、「日本は、日本である理由を少しずつ、自らの手で失いつつある」とは言えるのではないでしょうか。
▼山海の幸や温暖な気候に恵まれた自然との共生、素晴らしい日本語、それらを背景とする歴史、伝統等、守るべき「日本である理由」はたくさんあると思います。
新学習指導要領に基づく教育が実施されつつありますが、成果が出てくるまでは今の大人が「日本である理由」を失わないように努力することが大切ではないでしょうか。
「子供さんやお孫さんと一緒に初詣!」してみませんか。
平成20年
廣瀬 清一(全国防衛協会連合会常任理事)
▼先般、「宇宙基本法」が成立し、防衛の分野でも宇宙利用が可能となった。しかしながら、宇宙に関する新たな装備構想などは一向に聞かない。政府の緊縮財政「骨太方針」が続く中、7年連続マイナスの防衛予算では、新たな装備開発構想等は難しいであろう。
▼一方、周辺国の国防予算は皆2桁で増加し続けている。特に中国は19年連続の増加であり、既に日本の防衛費を凌駕して近代化を進めている。
▼近頃は「防衛力運用の時代」と言われ、「国際平和協力活動」「統合運用」「組織改編」に関心が集まり、防衛力の整備充実や新たな防衛力整備の構想は全般に「軽薄短小」的で関心が低い。おまけに装備品調達に関連する不祥事が続き、防衛力整備の分野は氷河期を迎えている。
▼「運用」は長年築きあげた防衛力があってこそ可能である。益々軍事技術が進んでいく中で10年以上に亘る防衛力整備停滞のツケができることは避けたい。
▼気がついたら、技術大国日本の防衛技術が他国の後塵を拝することにならないよう、次期「中期防衛力整備」の議論で世論に訴えて頂きたい。そのための「省改革」における防衛力整備部門の一元化であれば意味がある。
澤山 正一(全国防衛協会連合会常任理事)
▼一方、忘れてはならない重要なことは、自衛隊は国の防衛はもとより、国際平和協力業務及び災害派遣等で立派に任務を遂行し、高い評価を受けているという事実です。殆どの部隊・隊員は日夜訓練に励み、与えられて任務を立派に果たしているという極めて「健全な組織」です。一部の事案で、全体がおかしいと判断したり、部隊・隊員の士気まで影響を受けているとすれば、悲しいことです。
▼自衛隊が逆境にあるのなら、この様な時こそ、我々防衛協会及び会員は、一般の国民に対しては自衛隊の「真の姿」をよく見てほしいと注意を促し、国家・国民及び世界平和のために、黙々と訓練に励み、任務を遂行している健全な部隊・隊員に対しては、「引き続き任務遂行に頑張ってほしい」と力強い激励を送ろうではありませんか。
山崎 眞(全国防衛協会連合会常任理事)
我々は、この選挙を次の大統領が日本に対してどのような政策をとるのか、更に言えばどれだけ我が国のためになる大統領なのかという目で見なければならない。スーパーチユーズデー後の情勢を見ると大統領候補は民主党のオバマ氏、クリントン氏、共和党のマッケイン氏の三人に絞られたようである。
オバマ氏は「チェンジ」を標語に掲げているが、日本をどの程度知っているのかについては全く未知数であり、政策についてもよく分らない。
クリントン氏は米国のある有識者に聞いたところでは少なくとも親日ではないが、親中でもない保護主義者だということである。
マッケイン氏は海軍軍人で、ベトナムでの長期の捕虜生活の経験を持つ英雄である。大統領になった暁には、知日派のスタッフを持つことになるであろうと言われている。
11月の本選挙までにはまだ相当の月日がある。十分な関心を持って眺めて行きたい。
廣瀬 紀雄(全国防衛協会連合会常任理事)
当時、グループに命題を出し、各自思いつくキーワードを複数出させ、似通ったものをグルーピングし、更にその要約について思いつくキーワードを出させ思考を発展させていく。これを繰り返していくうちに、他人の意見に触発され、一人では考え及ばなかった命題の解決策につながっていくというものであった。
これに関連して、最近、「得手不得手」、「持ちつ持たれつ」という言葉が思い出される。人間でも組織でも得意とすることと得意でないことがあり、相互に助けたり助けられたりすることにより、ものごとは発展的に進む。
現在の世の中を見てみると、相手の欠点をあげつらい、自己の考えのみを主張し、ものごとが一歩も前に進まないことが多い。数少ない経験においても、一人+一人が二人以上の成果を上げる職場や逆にマイナスになる職場を経験した。今日の内外情勢を見ると後者のような気がするのは私一人であろうか。
平成19年
渡邊 元旦(全国防衛協会連合会常任理事)
さて、物事を考えるのに必要なこととして「虫の眼」(現状・現場を見る眼)、「鳥の眼」(将来・大局を見通す眼)という言葉がよく使われる。国政において最も必要な視点であると思うが、今回の選挙は、結果として「虫の眼」特に国民の生活に直結した「眼」が曇っていないかが問われることになった。
一方、国防や教育などについてはどうであったろう。教育基本法が改正され、防衛庁が防衛省になり、更には 国民投票法が成立したということで国民も政治家も満足してしまったのかもしれないが、国防や教育という「国の行く末」を考える上で最重要の事柄について「鳥の眼」はおろか、「虫の眼」レベルでも論点にならなかったのは極めて残念である。
この11月1日に「テロ特措法」が期限切れになるが、 この法律は、わが国の防衛にも係わる重要なものである。民主党の代表は国会の始まる前から「絶対に延長させない」と公言し、政府・与党も国会が始まった直後に総理・総裁が交代するなど、混乱の極みにある。 国政を預かる政治家には「鳥の眼」はもとより、確かな「虫の眼」も持っていることを心から望みたい。
山崎 眞(全国防衛協会連合会常任理事)
貿易立国とは言っても、我が国に籍を置く外航商船は百隻にも満たず、日本人の外航船員は2,500人程度しかいない。我が国は食料の60%、そのうち穀物の80%、石油などのエネルギー資源に至っては99%以上を海路からの輸入に頼っているが、その殆どは外国の船と外国人の船員によって運ばれている。
また、この海路(シーレーン)は、冷戦終結後発生した海賊、海上テロ、不法行為などによって常に脅かされており、更に平時・有事を問わずシーレーンに脅威を及ぼす恐れのある200隻を超える高性能潜水艦の存在がある。
一方我が国は、多くの資源を内蔵し、世界第6位の広さを誇る排他的経済水域という重要な権益を有するが、ここも通告の義務を無視した海洋調査など、種々の不法行為により侵蝕されそうな気配である。
本年4月に成立した海洋基本法は、国家的海洋戦略が欠如していることにより我が国の国益が犯されている現状に鑑み、確固たる国家戦略をもって海の安全と権益を守ることを目的とする法律である。国が一体となって、強力な施策を進めることを期待し、見守ってゆきたい。
廣瀬 紀雄(全国防衛協会連合会常任理事)
また、陸自は富士総合火力演習において、砲弾の炸裂煙で見事に富士山を描いて見せた。
この陸・海・空自の秒単位の定時定点は、規模や性格が異なるとはいえ、いずれも周到な準備と組織的な連携、厳しい訓練や高い士気が無ければできない。
話は変わるが以前、上司から郷土の英雄「山本五十六元帥」(暗号解読され前線視察中に待伏せ攻撃され戦死)の例を引き、「時間を守らない人間は信用できない」と指導された。元帥出身の旧長岡藩(新潟県)では、今も良き伝統が受継がれているように思う。
今日、デートで30分や1時間の遅刻も携帯電話のやりとりで対応できる時代になった。しかし、このような時代でも、時間を守らない人間は信用できないということは生きているような気がする。私も最近、約束を失念したり余裕のない行動をとるようになった自分を戒め、定時定点は「自分の心構え次第」と反省している今日この頃である。
山崎 眞(全国防衛協会連合会常任理事)
シーファー駐日米大使は、先日の記者会見で「発射された弾道ミサイルが日本を標的にしていることを見極めるまでは迎撃しないのか。これは日米同盟の根幹に係わる問題だ。」と発言し、日本政府の考えを質した。正直なところ、こんな基本的な問題がまだ解決されていないのかという疑問を持つ。
わが国が、米国に向け飛んでゆくミサイルを探知しながら、本当にそのまま見逃すことができるのだろうか。尤も、北朝鮮、中国から米本土へ向かうミサイルは日本の上空を飛ばない。はるか北のカムチャッカ上空を飛ぶことになるのでわが能力では迎撃できない。
問題は、ハワイ、グアムへ向けて発射されたミサイルだ。これは、わが上空を飛んで行く。ハワイ、グアムも勿論米国である。故障、分解等によりわが国へ落下する恐れのあるミサイルを含めて、わが上空を通る弾道ミサイルは全て撃墜するという確固たる決心を早期にすべきである。
平成18年
大越 康弘(全国防衛協会連合会常任理事)
8月15日終戦記念日の小泉総理の靖国神社参拝は、自民党総裁選、アジア外交ともからみ大きな話題となった。国民の賛否も割れている。
総理が、国のために犠牲になった戦没者に慰霊するのは当然のことであり、外国からとやかく言われることではない、という意見がある。
他方、極東軍事裁判の判決の正当性に問題があるとしても、三百万人以上もの日本国民の尊い人命を犠牲にし、そして近隣諸国にも多大の苦痛と犠牲をもたらすことになった日中・太平洋(大東亜)戦争へ国策を誤って導いた国家指導者には心から慰霊する気持ちになれない、従って総理は参拝をやめるべきだという意見もある。
いずれにしても、総理の参拝について、国論が割れ、外交問題となって外国から乗ぜられることがないように、早急に対処、解決すること必要がある。
渡邊 元旦(全国防衛協会連合会常任理事)
陸自中部方面隊に勤務していた一昨年の暮れに、知人の紹介で、翌年早々にイラクへの派遣が予定されている隊員諸君の安全祈願のために該社に参拝する機会を得たが、その際に鈴木宮司から、「大神神社のご祭神、大神神社と伊勢神宮の関係」など、数々の興味ある話を伺うことができた。
以来、「三輪山の古代史」、「古代王権の神話」などの関連書を読んできたが、古代史の門外漢である私には難解な部分が多いものの、その内容は面白く、おぼろげながらも我が国の成り立ちや渡来人について、また、大神神社の関わりについて、はるか昔のことであるが、身近なものとして感じることができるようになった。
自分の不勉強を恥じるとともに、「地に足の着いた歴史教育」の必要性を痛感している次第である。
現在、教育基本法の改正が議論されているが、焦点の一つとなった「我が国と郷土を愛する心」を、日本の将来を背負って立つ子供達に如何に涵養していくかが喫緊であり、その具体策の一つとして、外国の史書に惑わされることなく、記紀をはじめとする我が国の歴史書や身近にある神社の由来などを通して、子供達に郷土を、ひいては国を愛する心を育んでいってはどうだろうか。
廣瀬 紀雄(全国防衛協会連合会常任理事)
現在、有事法制が制定され、憲法や教育基本法の見直しが政治課題となり、これらにより、一国平和主義という戦後民主主義の影響が直ちに解決するとは思われないが、ナポレオンが云ったという「戦いに敗れた民族は100年立ち直れない」という言葉に係らず、近いうちに日本は立ち直れると期待している。
私は、以前から「憲法が国を守ってくれるわけではない、しかし、憲法が国を守る体制を創りあげる」と考えてきた。「閑中忙」の言葉のように、この平和な時代、防衛力及び安保環境の整備と相俟って、自国及び関係国の歴史・伝統・文化の相互理解と尊重に基づく健全な愛国心を涵養し、物心両面にわたる国を守る体制の構築が大切である。
現在を生きる我々にとって、歴史の正しい教訓を踏まえて、我が国の平和と安全及び独立を保障する体制を子孫に遺すことが最大の責務であろう。