定期総会
令和7年 防衛協会会報第171号(7.7.1)掲載
全国防衛協会連合会第36回定期総会
自衛官の名誉と誇りを尊重し、自衛官の退官時の叙勲を要望
全国防衛協会連合会(大宮英明会長)は5月21日、ホテルグランドヒル市ヶ谷(東京都新宿区)において第35回定期総会とその関連行事(表彰式、講演会、懇親会)を開催した。
総会に先立って表彰式を行い、協会の発展に功績顕著な個人・団体を表彰した(下段に詳細記述)。
総会には連合会役員及び都道府県防衛協会・自衛隊協力会等の会長ら約40名が全国から参集した。定期総会
総会では次の6項目の案件が審議され、全て原案通り承認された。
1 令和6年度事業報告
2 令和6年度収支決算書
3 令和7年度事業計画(案)
4 令和7年度収支予算書(案)
5 役員人事(案)
新任として9名の役員を新たに選任(副会長1名、常任理事4名、理事3名、監事1名)
【新体制は本ホームページの役員欄参照】
6 「令和7年度防衛問題に関する要望書」(案)
7年度の要望書は、「自衛官の処遇の適正化」について、特に、自衛官の名誉と誇りを尊重した在職間の叙
勲として、退官時に叙勲されることを要望【下に全文掲載】
令和7年度防衛問題に関する要望書
全国防衛協会連合会は、各都道府県防衛協会の連合体として「防衛意識の高揚」と「自衛隊への支援・協力」を目的に活動しています。共通の目的を持つ民間有志の集まりとして、国民としての目線から、防衛問題に関して要望するものです。
第一点 憲法改正
我が国を取り巻く安全保障環境が近年一層厳しさを増す中、関係者の努力は並大抵のものでないことを十分理解し、応援しています。その一方で国民の国防意識や自衛隊に対する理解は、残念ながら決して高くはありません。
そのため、国防に関する記述が欠落している憲法をできるだけすみやかに改正して、国防の中核たる自衛隊の位置づけを明確化することを要望します。憲法改正により、国民の自らの国を守るとの国防意識が高まるとともに自衛隊に対する理解が格段に進むものと確信します。
第二点 国防意識の高揚を図るための各種施策の充実
憲法改正と同様に、国防のさらなる充実を図る上で、国民一人一人が、国家に対する誇りと国防に取り組むことの重要性について、正しく理解することは、極めて重要です。
そのため、学校教育の場はもちろんのことあらゆる機会を通じ、国防意識の高揚を図るための各種施策の充実を要望いたします。これにより、自衛隊に対する理解もさらに促進するものと確信します。
第三点 自衛官の処遇の適正化
以上、要望します。
全国防衛協会連合会 会長 大宮 英明
講演会
総会終了後、ロシア地域研究(政治、外交、安全保障)等を専門とする防衛研究所・研究幹事の兵頭慎治氏による「ロシア・ウクライナ戦争の現状と展望」をテーマとした講演が行われた。まさに時宜を得たテーマであり、約100名が高い関心をもって聴講した。【下に要旨を掲載】
懇親会
講演会終了後は、懇親会が催され、中谷元防衛相をはじめ、小林一大防衛大臣政務官・森下泰臣陸幕長・齋藤聡海幕長等の防衛省・自衛隊の最高幹部、講師の兵頭慎治氏、友好団体の会長・理事長等の来賓約100名の参加を得て懇親を深めた。
懇親会では、大宮会長の挨拶に引き続き中谷防衛相と小林政務官による祝辞、来賓の紹介、表彰状・感謝状受賞者の紹介と進み、齋藤海幕長の挨拶で懇談がスタート。そして、宴もたけなわの中、全国防衛協会連合会青年部会の垣内猛会長による一本締めでお開きとなった。
大宮英明会長挨拶
懇親会に入る前に、先日のT―4練習機の事故によりお二人の隊員の方が行方不明になっていることは、痛恨の極みであり、一刻も早く発見されることを心からお祈り申し上げます。
本日は、全国防衛協会連合会の懇親会に公務ご多忙のところ、防衛大臣中谷元様、防衛政務官小林一大様、陸・海各幕僚長をはじめ、防衛省・自衛隊、友好団体並びに特別会員の皆様方など多数ご参加いただき誠に光栄に存じ、厚く御礼申し上げます。
先程の定期総会で、令和7年度事業計画及び収支予算と役員人事が承認され、令和7年度活動が本格的に始動することとなりました。
また、当連合会に貢献された会員である14名の方と1団体に表彰状を、連合会に対し貢献された1名の方に感謝状を贈呈させていただきました。
講演会では、防衛研究所の兵頭慎治研究幹事には「ロシア・ウクライナ戦争の現状と展望」と題して貴重なご講話をいただき、誠にありがとうございました。改めて、国防の重要性と防衛協会の役割の大切さを感じました。
さて、我が国周辺では軍備増強が急速に進み、力による一方的な現状変更の圧力が高まっており、我が国は戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面しています。
このような中、自衛隊の皆様方は、我が国の安全保障という崇高な任務を遂行しつつ、国内外において災害派遣などでも活動されており、その献身的なご活躍は、国民の自衛隊に対する信頼と期待をますます高めることとなっております。
当連合会は、共通の目的を持つ民間有志の集まりとして、国民の目線から「防衛問題に関する要望」を行っております。その中にある「自衛官の処遇の適正化」は、石破総理のリーダーシップのもとかなり改善されて参りました。しかしながら諸外国軍人の処遇との比較では、自衛官の責任・使命に国家として十分に応えきれていないと言わざるを得ません。なかでも自衛官に対する叙勲の時期が退職後となっていますが、自衛官の名誉と誇りを尊重した在職間の叙勲として、本年度は退官時に叙勲されることを要望することといたしました。
当連合会としては、現下のウクライナが示すように国民一人一人が、「自分の国は自分で守る」という強い気概を持つことこそが肝要であり、それを啓発するのが、防衛協会の役割であると認識しております。
今後とも「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に務める」という自衛官の皆様の熱い心に応えることができるように、時代の風を感じながら前向きに活動し、会の目的である「防衛意識の高揚」と「自衛隊への支援・協力」を推進して参りたいと考えております。
最後に、防衛省・自衛隊及び各都道府県防衛協会の益々のご発展とご参会の皆様の益々のご活躍・ご健勝をお祈りいたしまして、私からの挨拶とさせていただきます。
講演会 講師 防衛研究所 研究幹事 兵頭慎治氏
「ロシア・ウクライナ戦争の現状と展望」(要旨)
30年近く露の安全保障について研究してきた。
平時は、露の文書上の基本政策と、実際の対外政策(行動)を突き合わせ、プーチン大統領の意図を読み解くのが典型的な露の動向分析手法。しかし、戦争開始後は、プーチン大統領の究極のフリーハンドで、その意図分析が困難になっており、これまでの経験則や経験知は適応し難い。
【停戦交渉に対する各国のスタンス】
◆トランプ大統領:露に配慮して早期停戦を目指す
◆プーチン大統領:米露主導、交渉細分化で時間稼ぎ
◆ゼレンスキー大統領:米との関係で合意受入
【プーチン大統領の意向】
①根本原因の除去(戦争目的・目標の達成が重要)
◆中立化:ウクライナのNATO加盟断念、NATOからの米国の切り離し
◆非ナチ化:ウクライナの大統領選挙、親露政権樹立
◆非軍事化:ウクライナ軍の規模縮小、米国の軍事支援停止
②領土(制圧地域の拡大)
◆クリミア半島と南部4州を露領と認定
③ビッグ・ディール(取引)
◆米露関係の正常化(外交・経済・軍事)
◆イランとの核交渉の仲介
◆中国を交えた軍縮(トランプ大統領の関心)
【日本を取り巻く戦略環境への影響】
◎この戦争は、欧州域内にとどまらず、東アジアの安全保障と密接にリンク
◆露朝同盟化(北朝鮮が露に派兵し参戦)の進展
◆核搭載可能な新型中距離ミサイル「オレシュニク」の極東配備の可能性(日本も射程に入る)
◆露と西側の緊張の高まりが東アジアにも波及(露が日韓攻撃対象リスト作成)
◎戦略連鎖:3つの戦域が相互に連動
◆欧州:露(北朝鮮、イラン、中国)Vsウクライナ(米、欧州)
◆中東:イラン(露)Vsイスラエル(米)
◆東アジア:中国・北朝鮮・露Vs日本、韓国、米
以上のことから、より広範囲な国際戦略環境認識をもって我が国の安全保障を考えていく必要がある。
表彰式
全国防衛協会連合会は、当連合会の目的達成に率先尽力するとともに組織の拡大強化に努め、当連合会の使命達成と発展に尽力され、その功績顕著な14名と1団体に表彰状、1名に感謝状を授与した。表彰式には、11名が出席された。
受賞者(敬称略) ※青太字は授賞式出席者
【表彰状:個人】
(故)伊藤 義郎(北海道)
引地 功侃(宮 城)
杉山 崇(群 馬)
橋本 洋子(埼 玉)
北田 豊(千 葉)
宮下 勝久(長 野)
石上 博道(静 岡)
石井 恭子(兵 庫)
梯 学(徳 島)
星加 隆夫(愛 媛)
渡瀬 隆二(鹿児島)
【表彰状:団体】
沖縄県防衛協会(平田 喜彦)
【感謝状:個人】
國仲 政人(沖 縄)