特別寄稿
防衛協会会報第173号(8.1.1)掲載
これからのリーダーシップのあり方
― サーバント・リーダーシップの可能性 ―
常任理事 兼 事務局長 川嶋昌之
最近、自衛隊においても指揮官によるパワーハラスメントが問題視されるようになり、各級指揮官が部隊の指揮・統率に萎縮しているという声が聞かれるようになりました。こうした状況の中で、改めて「リーダーとは何か」「どのようなリーダーシップが求められるのか」を問い直す必要があります。
古代中国の兵法書『孫子』には、リーダーに必要な資質として「智・信・仁・勇・厳」が挙げられています。これは、知恵・信頼・思いやり・勇気・厳格さを意味し、現代においても通用する普遍的なリーダー像です。
また、自衛隊では「心服統御」と「威圧統御」という二つの統率概念があります。心服統御とは、部下がリーダーに信頼や尊敬を抱き、自発的に行動するよう導くスタイルであり、共感と理解を通じて「この人のために働きたい」と思わせることが目指されます。一方、威圧統御は、権威や命令によって部下を従わせるスタイルであり、短期的な統率には有効ですが、持続性や信頼構築には限界があります。
近年注目されている「サーバント・リーダーシップ」は、従来のリーダー像とは一線を画します。「サーバント(奉仕者)」とは、召使いや家来を意味する言葉ですが、ここではリーダーがフォロワー(部下)に奉仕するという逆転の発想を指します。
ロバート・K・グリーンリーフ氏の著書『サーバント・リーダーシップ』には「いかにもリーダーらしく偉そうに振る舞うと、リーダーシップを失う。逆にフォロワーに対してサーバントとして尽くす方が、皆に慕われ、信頼され、持続するリーダーになる」と述べられています。つまり、リーダーがフォロワーの成長や幸福を第一に考え、支援することで、自然と信頼と尊敬を得るという考え方です。
先日、ⅬAドジャーズがワールドシリーズで優勝しました。大谷選手や山本選手の姿勢は、まさにサーバント・リーダーシップの体現ではないでしょうか。彼らは自分の成績よりもチームの勝利を優先し、ドジャーズという組織に奉仕する姿勢を貫いています。その結果、チームは一体となり、勝利を掴みました。
これからの自衛隊、そしてあらゆる組織において、サーバント・リーダーシップの概念を取り入れることは、信頼と協力を基盤とした持続可能な組織運営に寄与できるのではないでしょうか。
これからは、威圧ではなく、心服によって人を動かすリーダーが求められています。
最後に、サーバント・リーダーシップを実践するための「10の気づき」を紹介します。
『傾聴、共感、癒やし、気づき、説得、概念化、先見力・予見力、執事役、人々の成長に関わる、コミュニティーづくり』です。









