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特別寄稿

                      防衛協会会報第159号(4.7.1)掲載

「自分の国は自分たちで守る。

日本の総力を結集した力強い

安全保障力の構築を

前衆議院議員(元防衛省大臣官房審議官) 

井上 一徳

ロシアによるウクライナ侵略は日本の安全保障政策を根底から見直す契機となった。武力によって一方的に国際秩序を覆す事態がわが国周辺でも起こった場合に、これまでの安全保障政策で日本の平和と独立を守り抜くことができるのか、真剣に考えなければならない。今回のウクライナ危機で明らかになったように、安全保障はこれまでの外交・情報・軍事・経済といった分野のみならず、金融や人権問題などあらゆる分野に広がりを見せている。

「国家安全保障戦略」(2013年閣議決定)は、外交政策及び防衛政策を中心とした国家安全保障の基本方針として、わが国として初めて策定された。外交力、防衛力、さらには海洋や宇宙、サイバーなどの分野を含め、日本の安全保障力を高めることを目的にしたものであるが、期待された成果が達成されたとは言えない。米国は、軍事力に加え、産業基盤や経済力をフルに活用した強固な国家安全保障体制を構築している。そして中国は、国家安全保障戦略に沿った形で経済計画を作る「軍民融合戦略」をとっている。わが国でもサプライチェーンの強靭化や基幹インフラの安全性確保などを目的とした「経済安全保障推進法」が成立したが、民間の技術者等を対象にした機密情報の資格制度「セキュリティ・クリアランス」が盛り込まれていないなど課題も多い。

日本の安全保障力には総合力と力強さに欠けている。本年末には、「国家安全保障戦略」の改定が予定されているが、今回のウクライナ危機で生じた様々な事象を徹底的に分析した上で、日本のすべての政策を「安全保障」の視点から総点検し、日本の総力を結集した力強い安全保障力を構築する必要がある。

 防衛費の増額も急務である。ドイツのショルツ首相は、ロシアのウクライナ侵略を受け、「ドイツ連邦軍

を、確実に祖国を守ることができる近代的な軍隊に作り替える」と宣言し、503億ユーロ(6兆5390億円)だった国防予算を2倍に増やすこととした。日本の防衛予算はここ10年でほぼ横ばいであるが、ロシアは2.58倍、中国は2.44倍、韓国は1.7倍の伸びを示している。今や日本の防衛費は韓国とほぼ同じ規模となっている。

自衛隊の継戦能力(弾薬、誘導弾等の備蓄)や防衛施設の抗堪性の強化は喫緊の課題である。また、国内防衛産業からの調達額が減少していることから、防衛部門から撤退する企業が相次いでいる。国産の防衛装備品や国内の技術力は抑止力の一環であり、抑止力を高めるためにも十分な予算措置が必要である。

憲法第9条改正についても真剣な取り組みが求められる。憲法第9条が戦力不保持を規定しているため、自衛隊は自衛のための「必要最小限度の実力」であり、「戦力」にはあたらないとされている。しかしながら、自衛隊は万が一我が国が侵略された場合に武力をもって侵略を排除することが求められる組織であり、まさに「戦力」そのものである。国防組織は国の根幹であり、自衛隊は日本国の独立と平和を守る存在として憲法に明確に規定しておくことが必要である。

                                 (全国防衛協会連合会特別会員)

                        防衛協会会報第158号(4.4.1)掲載

「我が国の国防戦略」の転換についての一考察

参議院議員 宇都隆史


 現在、岸田政権ではあらゆる可能性を排除せず、我が国の防衛体制の見直しを行うとしているが、そのためには戦後長らく我が国の国防の基本姿勢として位置付けてきた『専守防衛』という誤謬の払拭を図らねばならない。専守防衛という用語は、昭和45年の中曽根防衛庁長官時に初刊行された防衛白書にて定義された。その内容は「①相手から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使し、②その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、③また保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限る」というものである。そもそも、専守防衛という用語は、軍事アレルギーの強かった戦後に、自衛隊違憲論を躱す(かわす)ために作られた政治的レトリックであり、この定義には軍事的合理性や国際社会のリアリズムは全く考慮されていない。「先制攻撃は行わない」という平和主義は多くの国民の望む政治姿勢であり堅持するとして、安全保障環境の激変に対し、この国防の基本姿勢の再検証が必要不可欠であると認識している。


 第一に「相手からの武力攻撃」に新たな領域である「サイバー攻撃や電磁波攻撃」が含まれるのか明確にする必要がある。またクリミア半島がそうであったように、武力の行使を伴わないハイブリッド戦により離島などを占拠されたような場合も想定した議論がなされなければならない。


 第二に、防衛力行使の態様について、必要最小限というものが定量的に証明できるかといえば、それは不可能である。軍事的合理性や経済的合理性に基づけば、自ずとそのレベルというのは決定されうるが、相手の意思や能力によっても、どの程度の物量を持って対抗するのが適切であるかは都度変化するはずである。


 第三に、保有する装備品の能力までも過剰に制限するのは防衛力の本質すら歪める事につながりかねない。政府は公式見解で『性能上専ら相手国国土の壊滅的な破壊のためにのみ用いられる、いわゆる攻撃的兵器を保有することは、直ちに自衛のための必要最小限度の範囲を超えることとなるため、いかなる場合にも許されません。たとえば、大陸間弾道ミサイル(ICBM)、長距離戦略爆撃機、攻撃型空母の保有は許されないと考えています』と答えているが、軍事の実態を理解していない素人レベルの解釈論である。ICBMにしても長距離爆撃機にしても攻撃型空母にしても、性能上専ら相手国国土の壊滅的な破壊のためにのみ使われているわけではなく、作戦(攻撃に用いるミサイルや爆弾の質と量)によっては抑制的な運用も当然可能である。憲法の精神を体して持つべきではない兵器を挙げるとすれば、それは相手国の国民(非戦闘員)までも巻き込む恐れのある大量破壊兵器「核兵器、生物兵器、化学兵器」に限定されるだろう。また無人機やAI等の技術の進歩に伴い自律型致死兵器システム(LAWS)が現実のものとなろうとしているが、これの扱いも検討しなければならないだろう。


 戦後の国防戦略を大転換するチャンスを生かし、自衛隊を取り巻く国内政治環境を真っ当な状態へと転換していくためにも、各会員皆様の政府与党に対する引き続きのご支援とご理解をお願いしたい。

                                 (全国防衛協会連合会特別会員)

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