外国人留学生文化研修支援
令和8年 会報第174号(8.4.1)掲載
令和8年1月17日(土) 外国人留学生文化研修支援(大相撲初場所観戦)
外国人留学生と家族、大相撲初場所を観戦 日本文化に親しむひととき
本事業は、平成11年度から毎年継続して実施されており、日本の伝統文化への理解促進と国際交流の深化を目的としている。防衛研究所等の幹部教育機関には、将来、各国の軍や政府において中枢を担うことが期待される優秀な人材が留学生として派遣されており、彼らが日本滞在中に国技の相撲を研修することは、文化的理解を深める貴重な機会となっている。
当日は「満員御礼」の垂れ幕が掲げられた両国国技館で、贔屓力士や郷土出身力士、さらには母国出身の力士に対する熱い声援が飛び交い、会場は大いに盛り上がった。留学生とその家族も観客と一体となって声援を送り、日本文化に根ざした相撲の魅力を肌で感じるひとときを過ごした。
この観戦体験を通じて、参加者の大相撲に対する関心と理解が一層深まり、防衛省・自衛隊が推進する国際交流の一助となることが期待される。
大相撲観戦感想文
カンボジア陸軍 ナロン・ペン中佐
はじめに
初めて足を踏み入れた両国国技館での体験は、一生忘れられないものになりました。初めての観戦で、最初はどのような雰囲気なのか想像もつきませんでしたが、日本の古き良き伝統に対する深い敬意を抱いて会場を後にしました。ここに、私の感想をまとめます。
素晴らしい座席レイアウト
まず驚いたのは、座席の配置です。アリーナの設計が非常に緻密で、土俵に近い伝統的な「枡席(ますせき)」でも、上方の椅子席でも、どこからでも遮るものなく迫力ある景色を楽しむことができました。会場全体に一体感があり、どこに座っていても土俵の熱気がダイレクトに伝わってきます。
唯一無二の文化的体験
地元の方々から観光客まで、多くの人々が一体となって力士を応援する姿に胸が熱くなりました。相撲は単なるスポーツではなく、日本文化の象徴なのだと肌で感じました。会場の空気は、熱狂的ながらも礼節に満ちています。お気に入りの力士に声援を送る観客の姿を見て、この伝統がいかに日本社会に深く根付いているかを実感しました。近代的な東京の中で、これほどまでに守り抜かれた文化を目の当たりにできたことは、私にとって大きな光栄です。
力士の強さと規律
力士たちの姿には心底圧倒されました。彼らは強靭なアスリートであると同時に、素晴らしい自制心(規律)の持ち主でもあります。
◆ルールの遵守:力士たちが相撲の規則を厳格に守る姿は印象的でした。取組の前後で見せる立ち居振る舞いには、武士道のような気高さが感じられます。
◆スポーツマンシップ:激しくぶつかり合う競技でありながら、対戦相手への敬意が随所に現れており、非常に清々しいものでした。
厳かな進行と審判
相撲の進行そのものも、非常に興味深いものでした。判定は極めて正確で、儀式的な美しさが実際の取組へと見事につながっています。
◆行司(レフェリー):伝統的な装束に身を包んだ行司の存在は、試合に歴史の彩りを添えていました。
◆独特の間:塩まき、四股、そして仕切りでの睨み合い。そのすべての所作が、観客の期待感を完璧なまでに高めてくれます。
結びに
指揮幕僚課程(CGS)及び全国防衛協会連合会(JDA)の皆様、この度は大相撲本場所への温かいご招待と、円滑な運営に心より感謝申し上げます。留学生一同、日本の伝統文化と武道精神を象徴する素晴らしい舞台を間近で拝見できたことを、大変光栄に感じております。
大相撲観戦は、私の東京滞在の中で最高のハイライトとなりました。激しい勝負の世界と、厳かな伝統が見事に融合しています。運営も素晴らしく、座席も快適で、これほど日本文化に深く浸れる体験は他にありません。日本を訪れるすべての人に心からおすすめします。「単なるスポーツを超えた日本文化」を体験したいなら、大相撲は絶対に外せません。
インド空軍 ラナ・ナブディップ中佐
1 はじめに
2026年1月17日、私は東京・両国国技館において開催された大相撲大会を観戦するという貴重な機会を得ました。航空自衛隊幹部学校及び全国防衛協会連合会のご厚意により実現したこの体験は、私にとって忘れがたいものでした。インド人の私は相撲を見るのが初めてでしたが、この経験は単なるスポーツ観戦にとどまらず、日本文化を深く理解する機会ともなりました。実は以前、相撲のチケットを取ろうとしたことがあるのですが、すぐに売り切れてしまい入手できなかったため、このような機会をいただけたことに大変感謝しております。
2 歴史の中に足を踏み入れて
会場に足を踏み入れた瞬間、相撲は単なる競技ではなく、日本の歴史的な文化が目の前で披露されるライブであるかのように感じました。場内は静かで秩序があり、厳粛ともいえる雰囲気に包まれていました。派手な演出はなく、そこにあるのは伝統、静寂、そして期待感に満ちた観客の姿でした。現代のスポーツは賑やかなものが多いため、静かに鑑賞することがルールの一部であるかのような会場は、私にとってとても新鮮でした。観客もまた規律正しく、まるで「歴史的な場で騒いではいけない」と誰もが自然に理解しているかのようでした。
3 力士たちの規律正しさ
今回の観戦で最も印象的だったのは、力士たちの所作の美しさでした。堂々たる体格とは対照的に、その振る舞いは落ち着いており、礼儀正しく、まさに儀式の一部のようでした。土俵への入り方から相手への礼に至るまで、すべての動きが厳格な型に基づいています。これほどの体躯を持つ力士たちが、洗練された自己制御を示す姿は非常に興味深く、少し意外でもありました。塩まき、四股、にらみ合いといった試合前の所作は、威圧というよりも、言葉を使わない正式な交渉のように感じました。試合自体は短時間で決着がつきますが、試合前の準備に時間をかけ、勝負は一瞬、そして品格は永遠に残るのだと感じました。
4 相撲から学んだこと
相撲は、日本の根本的な価値観(規律、謙虚、敬意、受容)を体現しているように感じます。勝利は過度に誇示されることなく、敗北もまた静かに受け入れられます。そこに自己顕示欲はなく、あるのは務めを果たしたという自認だけです。インド出身の私にとって、こうした姿勢はインドの伝統武術や哲学に通じるものがありました。力と同程度に節度と敬意が重んじられる点において、相撲は非常に日本的でありながら、どこか親しみ深くもありました。日本には寺院、最先端技術、鉄道、寿司等多くの分野で素晴らしいものがありますが、相撲は私に、それらとは別次元で日本人の魂と直接向き合う体験を与えてくれました。相撲観戦を通して私は、真の強さとは力そのものではなく、規律や伝統を守り、制御された強さにあるのだと感じました。私は力士たちへの深い敬意とともに、どれほど大きな力を持つ力士であっても、戦う前にはまず礼をするという事実に深く心を打たれながら、会場を後にしました。
5 感謝の意を込めて
大相撲観戦を手配してくださった全国防衛協会連合会及び航空自衛隊幹部学校に、心より感謝申し上げます。限られたチケット事情の中、個人では体験が難しい、日本を象徴する文化的体験の機会を提供していただき、ありがとうございます。このような取り組みは、異文化理解を深め、参加者に対し心に残る体験を与えるものだと思います。
(空自幹部学校第73期指揮幕僚課程学生)









