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防衛時評

令和6年

常任理事 岸川公彦                  防衛協会会報第166号(6.4.1)掲載

ウクライナ戦争の先行きに
ついて思うこと…
 

 ローマ教皇フランシスコが去る2月に収録されたスイスのテレビ局のインタビューで、ロシアの侵攻を受けるウクライナに対して戦闘での敗北を認め、和平交渉を始めるよう促したとする報道がなされました。ローマ教皇の発言は、侵略行為に融和的と受け取られかねない内容で、波紋を呼ぶ一方で、現実的な選択として歓迎する声も聞かれました。2年以上に及ぶ未だ出口の見えない戦争を受け、ウクライナや西側諸国では厭戦気運も見られる中、最善の選択肢はどこにあるのでしょうか。

  結論から先に述べれば、私の個人的な見解は、「ロシアは軍事的に優勢である限り、決して攻撃を止めないので、ウクライナには、戦う以外に選択肢がない。したがって、現状では、我々西側諸国は、ウクライナが引き続き戦えるよう、さらに支援を強化すべきであるというものです。

  以下、ロシアがなぜ戦いを止めないのか、そのような思いを持つに至った背景等について、少し述べてみます。

  今回のウクライナ戦争は、2014年に発生した「マイダン革命」後、クリミア半島やドンバス地方で起こった「クリミア危機」を発端とするものと言えます。2014年9月、ウクライナは、国土を失いつつも、停戦のためのいわゆる「ミンスク合意」に署名しました。本合意は、基本的に停戦を合意するものであったのですが、翌年2月に、いわゆる「ミンスクⅡ」が署名されました。

  なぜ、「ミンスクⅡ」が必要だったのでしょうか?「ミンスク合意」のポイントは、①停戦合意、②分離派支配地域に「特別の法的地位」を与えること、③外国軍隊(=ロシア軍)の撤退だと言われています。当時、ウクライナのポロシェンコ大統領は、この合意を守って、直ちに分離派支配地域に「特別の地位」を与えました。そうすればロシアは約束を守って、ロシア軍は撤退すると信じたからだと思います。ところがロシア軍は撤退するどころか、その冬に大攻勢をかけてきたのです。そこで耐え切れなくなったウクライナが、ドイツとフランスの仲介の下、苦渋の選択として結んだのが「ミンスクⅡ」です。「ミンスクⅡ」は、当初の「ミンスク合意」よりもさらにウクライナにとって不利な内容でした。

  このようにロシアは、「ミンスク合意」ではロシアの目的を達成していないので、停戦合意など無視して、さらに攻勢をかけてきたのです。その後、ドンバス地方はどうなったか。何度も「停戦」合意がなされたものの全てが一時的なもので、実際には殆ど毎日のように戦闘が継続し、ロシアの占領地域は少しずつ広がっていったのです。そして、ロシアのプーチン大統領は、2022年2月に「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の独立を承認し、ウクライナは同地を完全に失ってしまったのです。

 これらの事実が示す通り、ロシアとの間では「停戦」というのは一時凌ぎのものでしかなく、ロシアは戦う余力がある限り、目的を達成するまで戦闘を止めることはないと言うのが、少なくとも2014年以降の戦いが示すところです。
 さらに、プーチン大統領は、昨年12月の国民との対話でも、「ロシアの目的が達成されれば平和が訪れる
」と公言し、戦争継続の姿勢を鮮明にしていました。まさに、プーチン大統領にとってウクライナという国は「存在しない」と言っても過言ではないと思われます。

 これらのことから、ウクライナが、今停戦をしたとしても、それがすぐに破られて、プーチンは目的を達成するまで攻撃してきます。このことをウクライナの人たちは身を持って知っているのだと思います。もちろん、ロシアとの外交的な対話等が無意味であると言っているわけではありません。ただ、今最も大切なことは、ウクライナが引き続き強固な意志と能力をもってロシアと戦い続けることであり、そのためには我

々西側諸国は、ウクライナに対し、外交、政治、経済そして文化等広範囲にわたる支援と同時に軍事面での支援をしっかりと行うことであると確信しています。

 以上私見を述べてみました。世界には未だ力による現状変更を試みる覇権主義的な国家が存在すること、このように厳しい国際社会の現実を目の当たりにして、改めて自国を防衛する意思と力をしっかりと保持することが如何に重要であるかについて再認識することができたと思います。

 一日も早いウクライナ戦争の終結を心から祈るばかりです。

(元陸自中部方面総監)

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