図書紹介
令和5年
国の守りと自衛官の矜持~備えに隙はないか~
服務の宣誓はアンパンマンの決意
国の守りと自衛官の矜持
~備えに隙はないか~
元陸将・北部方面総監
千葉德次郎 著
(全国防衛協会連合会常任理事)
現役時代、防衛庁(当時)高官に「警察や消防と、自衛隊では何が違うのか」と問われた著者は、「宣誓が違います」と即答したという。
自衛官の服務の宣誓には、「事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえることを誓います」とあるが、このような自己犠牲を前提とした宣誓は、他のどの職業にも見られないからだ。
自衛官の「矜持」の源ともいえるこの宣誓は、古代の防人から、武士、軍人、自衛隊に至るまで連綿と受け継がれてきた精神性を象徴しており、「これはアンパンマンと同じ」と著者は語る。
著者は幹部自衛官として要職を歴任し、退官後も後輩自衛官へのボランティア講話を精力的に続けている。
本書は、その講話内容を元に、防人以来の国防の歴史、時代の流れに対応する隊員教育、処遇改善のための憲法改正の必要性等を解説しており、自衛官や家族の心情を理解し、これからの国防のあり方、自衛官のホンネを知る格好の一冊である。
平和を守るために、いささかの隙もないことを見せつける「抑止という静かな戦い」に励む自衛隊、そして、斃れた隊員。国民一人ひとりが正しい理解に基づき、国を守る気概を養うために、是非本書をご一読頂きたい。
発行:㈱明成社
定価:990円(税込)
デンジャー・ゾーン
好戦的な中国の脅威に対する警鐘
デンジャー・ゾーン
迫る中国との衝突
奥山真司 翻訳
米中対立は激しくなるばかりで、アメリカでは対中強硬姿勢に超党派の合意がある。バイデン政権はどこに向かっているのか、本書を読めばわかる。昨年8月の原著刊行後、ワシントンDCの外交安保関係者に衝撃が走り、必読書といわれた。その後のアメリカの対中政策は本書の主張通りに展開している。内容を要約すると、経済減速と人口減少、戦略的包囲網に直面する中国共産党にとり、時間が味方だった環境は急速に終わりつつある。中国の国力は今がピークで、早く行動しないと台湾併合のチャンスは失われる。過去の歴史は「ピークに達し下り坂を意識した大国」が最も攻撃的になったと教えるが、実際に今の中国は対外的にかつてないほど攻撃的になり、国内では抑圧的になった。歴史と現実の両方が、米中衝突は2020年代に最大の危機を迎えると示唆しているのだ。
中国との長期にわたる新冷戦を戦い抜くには、日米は直近3~5年の「短期競争」に勝たなければならないと冷戦史が専門の著者は述べ、あらゆる利用可能な資源をかき集めて対抗しなければ負けると警鐘を鳴らす。今そこにある危機への備えから30年後の最終的な勝利まで、あらゆるレベルの戦略を具体的にわかりやすく提唱する。台湾が中国の手に落ちる破滅的事態を抑止するために、ぜひ多くの方に読んでいただきたい一冊。
発行:㈱ワニブックス
ステルス・ドラゴンの正体
来るべき米中戦争に備える警笛の書
ステルス・ドラゴンの正体
―習近平、世界制覇の野望
宮崎正弘 著
ステルス・ドラゴンとは潜龍、すなわち〝中国共産党中枢〟のことである。
習近平独裁の台湾侵攻がカウントダウンされるなか、西側社会、何よりも日本にとって不都合な真実が明らかになってきた。ステルス・ドラゴンが画策する洗脳工作、「認知戦(SNSなどや情報を用いた浸透相手国民のマインド・コントロール)」の毒牙に台湾がやられていることである。アジア版NATOもない台湾は実質“孤立”している。もうひとつはウクライナの惨状である。戦争の泥沼化は台湾国民にとってみたくない現実を突きつけられた形だ。日本もその限りではない、そもそも、これまでの中国への多大な援助、日本企業の中国進出、技術提供も、日本人の間違った確固〝贖罪意識〟から端を発したとすれば、日本はすでに認知戦で中国の毒牙にかかっているのでないかと著者は喝破する。
「ステルス・ドラゴン」という中国の正体を見破り、他国を侵略する「見えない戦争」の地政学を可視化することが必須だと警笛を鳴らす書籍である。
発行:㈱ワニブックス
定価:1650円(税込)