図書紹介
令和6年
ウクライナ侵攻の裏には何があるのか?
諜報国家ロシア
ソ連KGBからプーチンのFSB体制まで
保坂三四郎著
本書は、ロシアの行動原理を、KGBの極秘文書や資料、リーク情報から読み解いた一冊である。
2022年2月、ロシア はウクライナへの全面侵攻を行った。当時、その可能性は示唆されながらも、「さすがにそこまではやるまい」との見方も多かっただけに、その衝撃は大きかった。しかし、振り返ればロシアは、ウクライナに対して2013年からアクティブメジャーズ(政治・世論工作)を開始し、2014年にはクリミア併合、ドンバス地方への侵攻などを行っていたのである。
そこで表れる問いは、ロシアはいかなる行動原理で動いているのか、である。筆者は、その背景に、ソ連時代に国家の根幹を掌握し、かつてプーチンも所属した諜報機関「KGB」と、ロシア連邦でそれを継承した「FSB」があると指摘する。
本書は、ウクライナで近年公開されたKGBの極秘文書、反体制派やハッカーによるリーク情報、最新のインテリジェンス研究を駆使して、「諜報国家」ロシアの社会構造と行動原理に迫る。さらにアクティブメジャーズや偽情報など、その戦術・手法についても解説を行う。
筆者は現在、エストニアの国際防衛安全保障センターで、ロシアのインテリジェンスや、ウクライナの歴史的記憶について研究を進め、各国の防衛、外交関係者が助言を求める。ロシアの諜報機関についてここまでまとめられた書籍は欧米にもなく、組織の変遷や関係図は、ロシアの構造を知るためにも必見である。
発行:㈱中央公論新社
定価:1078円(税込)〔著者プロフィール〕
保坂三四郎(ほさか・さんしろう)
1979年秋田県生まれ。上智大学外国語学部卒業。2002年在タジキスタン日本国大使館、04年旧ソ連非核化協力技術事務局、18年在ウクライナ日本国大使館などの勤務を経て、21年より国際防衛安全保障センター(エストニア)研究員,タルトゥ大学ヨハン・シュッテ政治研究所在籍。専門はソ連・ロシアのインテリジェンス活動、戦略ナラティブ、歴史的記憶、バルト地域安全保障。17年ロシア・東欧学会研究奨励賞、22年ウクライナ研究会研究奨励賞受賞。23年『諜報国家ロシア』で山本七平賞を受賞。