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一筆防衛論

一筆防衛論

そもそも日韓GSOMIAってなに?

 「GSOMI(軍事情報包括保護協定)」とは、報道でいわれているような日韓両国が軍事情報を「直接交換する枠組み」ではありません。相手国から知った軍事情報を他国に漏らさないという「情報保全を約束」した協定です。そもそも同盟ではない日韓間に、秘密情報を直接やり取りするシステムはありません。日韓が相互の情報保全を約束したから、米軍の情報システム上でミサイル発射後の情報などを、日米韓三カ国はタイムリーに共有できるようになったのです。それ以外に、日韓が情報を直接共有できる機会は、日韓防衛首脳会談のような会議などの場しかないのです。
 このように日韓の軍事情報共有は、北朝鮮が「核実験や弾道ミサイル発射」した後の「分析や評価」に必要なのであり、いわば研究作業といってよいでしょう。日本「防衛」に必要な、発射後のミサイルを「探知・追尾」し、要すれば「撃墜」するという一連の対処においては、日韓GSOMIAは必要ないのです。
 ただ外交や経済も含めた「安全保障」という観点からみるならば、「日米韓三カ国」の枠組みは対北朝鮮抑止に有効な構図であり、協定はこれに実質的意味を与えたものだったのです。国防大臣など韓国軍の強い反対を押し切って行った文大統領の協定破棄は、これを自ら崩した愚かな判断だったのです。 
(元海自呉地方総監)

「専守防衛と文民統制を考える」

  常任理事 廣瀨精一
 防衛協会会報第147号(1.7.1)掲載
 
 1957年に閣議決定され、日本の防衛政策の基本として「専守防衛」「文民統制」等が定められた。長く日本の防衛の基本施策として踏襲されてきた。
 「国防の基本方針」は2013年に「国家安全保障戦略」に改められ、今日に至っている。国防の基本方針は日本の防衛政策の基本であり、専守防衛や文民統制等の基本政策は今日も引き継がれている。
 時代が変遷し、日本国民の防衛に対する意識は大きな変化を遂げている。各種の統計を見ても国民の防衛に対する関心や認識は激変している。
 しかしながら果たして防衛の基本施策や防衛に関する用語等が正しく国民に理解されてきたか疑問に思うことも多い。また、政策の変化に応じた解釈の変化も必要ではないかと考える。
専守防衛:専守防衛は字のごとく専ら守りに徹する政策であり、攻撃をしないとしているものではない。  
1956年の鳩山内閣時の国会答弁でも敵地攻撃は法的には許容されると答弁されている。攻撃をしない防衛は本来なりたたない。 
 また、主要装備品は基本的に攻撃用である。専守防衛を国防の基本施策としている国は多い。お隣の中国も専守防衛施策をとっている。
 この様に政策と装備の能力を混同し、用語が独り歩きして攻撃的装備を批判する議論は未だに多い。護衛艦「いずも」にF35が艦載機となることへの批判もまだまだ多い。言葉の意味と政策としての用語の解釈は区別して議論されなければならない。
文民統制:昨年の国会における審議で南スーダン派遣のPKO部隊が撤収された。日本のPKO活動はこれで一つの区切りを迎えた。 
 撤収の決断に至る段階でPKO部隊の日報が問題となった。所謂「日報問題」である。防衛大臣以下、制服幹部が更迭される事態を招いた。ここでも「文民統制が正しく機能していない」とマスコミ等からも多くの批判を受けた。
 「文民統制」を評価するためは、政治と部隊運用の適切な管理に関する正しい理解が必要である。日報の表現や文書公開への対応の不備等を「文民統制」の問題にすり替えた議論が目立ち、文民統制の言葉による批判が目立った。文民統制は武力集団の管理で重要な原則であるが、様々な教訓から生まれたものであり、様々な深い意義が込められている。
 用語として「政治が軍事を管理する」意味だけでなく「政治と軍事が一体となり、最良の判断のもと適切に運用される」等の重要な意味での理解を外れ、「文民統制の危機」等の批判が先行する記事には違和感を覚えた。先の大戦が残した教訓の反動は大きい。
 (元陸自幹部学校長) 

それでいいのか韓国海軍

   常任理事 松下泰士
                       
                      防衛協会会報146号(31.4.1)掲載
 昨年末の韓国海軍駆逐艦「広開土王」による海自P―1へのFC(Fire  Control:火器管制)レーダーの照射事案関連の韓国側の対応をみていて、韓国海軍が表に出ていないことに気付くとともに、政府発表が結果的に韓国海軍を辱めていることに気の毒な思いさえした。そのいくつかを指摘したい。 
①「広開土王」は、FCレーダーの照射以前に、対空捜索用レーダー、ESM(Electronic Support measures:電波を探知・識別)、SIF(Selective Identification Feature:味方識別)は使用しなかったのか。対空捜索用レーダーは送信していなかった可能性はあるが、その場合も、ESMを使用して警戒するのが海軍艦艇ではないのか。まさか、P-1の初探知は目視ではあるまい。
②人道的な捜索救助作戦ならば作戦を秘匿する必要はなく、日本の哨戒機が付近を飛行していることが判れば捜索協力を依頼するのが普通である。従来から実施している日韓共同訓練は、捜索救難訓練が主であって、この訓練の成果を発揮する良い機会ではなかったのか。
③一般的に艦艇は、部隊外との初期連絡通信系を複数スタンバイしている。少なくとも国際VHFという船舶間の事故防止上最も重要な通信系すら運用できないということはないだろう。
④韓国側は、P―1の低空飛行が問題だと打ち返しの映像を公開したが、そのほとんどの映像は我が国が公開したP―1撮影のものだった。韓国海軍の艦艇の艦橋にはビデオカメラすら準備されていないのか。
⑤丸腰の友軍哨戒機に恐れおののくのか。普通は手を振る。
 私には、OBを含めて何人かの韓国海軍の友人がいるが、彼らもまた忸怩たる思いで今回の事案に対する韓国政府の対応を見ているものと信じたい。昨年の国際観艦式での海軍旗掲揚不可問題に続き、韓国海軍は自らの政府によって世界の海軍ファミリーに恥を晒されているのだから。
 海という共通の環境で仕事をするどの国の海軍も、世界屈指のファミリーに属していることを忘れないで欲しいものである。
 (元海自自衛艦隊司令官)

防衛大綱見直しと戦士の確保

  常任理事 千葉德次郎
                     防衛協会会報145号(31.1.1)掲載
 平成二五年十二月、我が国で初めての国家安全保障戦略が閣議決定され、我が国の平和と安全を如何に確保するかが国民に示されました。その目標は、①我が国に必要な抑止力を強化し、直接脅威が及ぶことを防止する。②アジア太平洋地域での直接的な脅威の発生を予防、削減する。③平和で安定し、繁栄する国際社会を構築するとしています。この戦略の具体化のために26防衛大綱が策定されましたが、近年の安全保障環境の急激な変化に対応するため、昨年末に見直しされました。その主要な課題は、①中国の法の支配を無視した現状変更及び軍事拡張、②ロシアの勢力拡張に対する隣接国との軍事的緊張、③北朝鮮の核・ミサイルの戦力化、④同盟関係に及ぼす韓国の軋み等であり、また、⑤宇宙・サイバー・電磁波が持つ軍事的影響の拡大と思われます。①~④は従来の施策の強化・改善で対応できる分野ですが、⑤は未知の戦場(領域)であり対応の困難が予想されます。
 新大綱では、陸海空に加えて宇宙、サイバー、電磁波を含めた領域横断作戦(クロス・ドメイン・オペレーション)に対処するとしています。この中でもサイバーは他の五つの領域に横断的に関係し、電子装置を使用するあらゆる防衛システムの機能に重大な影響を及ぼす可能性があります。人間に例えれば、神経系を人為的に遠隔操作され、思考や身体機能の自由が利かない状況をイメージしては如何でしょうか?
 昨年八月に、防衛省関係者の発言として「来年度にも日本で5本の指に入る情報セキュリティー専門家を事務次官級の待遇で迎え入れたい」との報道がありました。もとより、サイバー戦機能のみで国防は成り立ちません。しかし、他領域の戦力発揮には、攻防を含めサイバー戦能力の保有は不可欠であり、国を守るスキのない備えのためには喫緊の課題と言えるでしょう。自衛官候補生からサイバー戦士まで、防衛力の原点は人的基盤です。平和を守る戦いに献身する戦士の確保のためには、従来の背策を超えた破格の人事処遇を整備すべきと思います。               
(元陸自北部方面総監)
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