望映鏡
令和5年
防衛協会会報第164号(5.10.1)掲載
茨城県防衛協会 会長 関 正夫
2022年2月、ロシア軍がクライナに対する軍事侵攻に踏み切りました。ウクライナは劣性に立たされましたが、欧米諸国の支援を受け、激しい攻防が続くなか戦況は膠着し、戦争は長期化するとの見方が強まっています。圧倒的な軍事力を誇るロシア軍は、短期決戦で終えられると高をくくっていたようです。
しかし、現実は違いました。それを阻んだのは、欧米による武器をはじめとした強力な物的支援ですが、それだけでしょうか。それは、ウクライナ人の死闘の根底にある「自分たちの国を守りぬく」という気概であり、これは決して軽視できないものだと思っています。
仮に、同じ事態が日本に起きた場合、果たして敵から日本を守ることができるのでしょうか。昨年末、雑誌MAMORが10~30代の国民に向け、国防意識を問うアンケート調査を実施しました。「もし日本が侵略されたら戦いますか」という設問に、約7割が「戦わない」と回答しました。そして、「日本が侵略されたら戦う」と答えた人に、どのような態度をとるかを聞いたところ「自衛隊に入隊する。自衛隊を支援する」と回答した人が約6割もいたそうです。日本の若者は、戦争の実体験を持たず平和な社会で暮らしてきたため、戦争に対する意識が薄いのかもしれません。更に、歴史教育やメディアを通じて戦争の犠牲や悲劇について学ぶ機会もあり、平和と人道主義の価値を重視し、戦争を避けることを強く支持するのでしょう。
一方で、国の安全保障や国益を重視し、必要に応じては武力行使を容認する立場をとる若者もいました。きっと彼らは、国防や自衛の重要性を強調し、時には戦争が不可避な場合もあると考え、日本の安全と繫栄を守るために自衛隊に参加したいという強い意欲を持っているのです。
このアンケートにより、日本の若者にも「自分の国は自分で守る」という気概を持つ者が多くいることを知りました。彼らは主体性を重んじ、自らの行動によって国の安全を守る使命感を持っているのでしょう。このような気概を持つ若者の一部は自衛隊へ入隊し、自国を守るという意欲を胸に高い志を持ち、厳しい訓練に日夜取り組んでいます。「自分の国は自分で守る」という表現は意志を表すもので、けして戦争を肯定するつもりはありません。日本の憲法は、戦争放棄をうたった平和主義の原則を採っており、自衛のための最小限の武力行使は認めています。自衛官をはじめとする一人でも多くの若者が、外部の脅威に対して譲れない強い気概を持っていれば、国の安全と繁栄は続くことでしょう。
茨城県防衛協会は、自衛隊の皆さまが士気高く任務に邁進できるよう、支援・協力を更に進めていかなければならないと考えています。防衛協会会報第163号(5.7.1)掲載
部隊との交流や激励活動を強化
全国防衛協会連合会 副会長
徳島県防衛協会 会長 近藤 宏章
我が国の平和と安全、独立の維持のため日々任務にご尽力されている自衛隊員の皆様に対しまして、深く感謝申し上げますとともに、深甚なる敬意を表す次第でございます。
世界の安全保障環境は、特に昨年のロシアによるウクライナ侵略以来根本的に激変しました。世界平和を統制すべき国際連合とりわけ安全保障理事会は機能不全に陥っており、改善の兆候の端緒すら見えないまま今日を迎えております。
この明確なロシアの侵略に対しても、インドやアフリカ諸国を中心とするグローバルサウスの国々は、必ずしもロシアを支援する中国や北朝鮮、イランなどの活動に厳しい態度を取っている訳でもなく、世界の安全保障は、平和の方向に統一されてもおらず、国連の平和安全保障機能は、残念ながら混沌としています。
我が国周辺においても、近隣のロシアによる北方領土等での軍事行動、中国の南シナ海や台湾周辺での海軍力の飛躍的増強による力の誇示や示威行動、北朝鮮の度重なる弾道ミサイル等の発射や核兵器増産保持等の力による世界秩序の変更への行動は着々と進行しつつあり、台湾有事の危惧までも生じております。
益々緊迫度を増す我が国周辺に対し、我が国が防衛戦略3文書の抜本的改正を実行し、防衛体制の増強や運用の変更等の整備を急いでいる現状は、我が国の平和安全保障の観点から誠に悦ばしい限りです。
徳島県には、12年前までは海上自衛隊と地方協力本部の2個部隊でしたが誘致活動の成果が実り、現在は陸上自衛隊第14旅団所属の2個部隊が駐屯地と分屯地を開設し、4個の陸海部隊が所在しております。私共の徳島防衛協会を始めとして、徳島県隊友会や徳島県家族会と各部隊の協力会、OB会等合計10個の協力団体が連携を取りながら防衛環境の整備や部隊等への支援・協力を実施しております。
防衛協会の目的は「防衛意識の普及高揚と、自衛隊を激励支援し、自衛隊と県民との相互理解の向上を図る。」ことであり、徳島県防衛協会においても、ここ3年間は、世界的なコロナ禍により活動等に制限を受け、部隊の皆さんとの交流や激励活動も各種制約の中で実施しましたが、この間にあっても、徳島県内防衛協力団体の中核として、他の協力団体を牽引しつつ防衛意識の普及向上、入隊・入校予定者の激励会の実
施、可能な部隊行事等への参加や激励等を実行して参りました。
令和5年度以降の今後は、新たなわが国の防衛力強化への環境情勢の向上に更なる努力を傾注するとともに、制限が解除される部隊との交流や激励活動を強化して参りたいと思っております。
防衛協会会報第162号(5.4.1)掲載
発展と強い経済力が必須」
福岡県自衛隊協力会連絡協議会
会長 谷川 浩道
福岡県は、中国大陸や朝鮮半島に近接する地理的条件により、古来、アジアと我が国との交流の玄関口として、また九州の政治経済の中枢としての役割を担っております。
当県には、陸上自衛隊第4師団司令部、航空自衛隊西部航空方面隊司令部をはじめ、陸上・航空の各部隊や地方協力本部、病院を含め、総勢約9万6千人の自衛隊の皆様が、それぞれの地域と密接に連携しながら、国民の平和と安全を守るために日々厳しい訓練に励み、様々な任務にあたっておられます。
また、当県は、平成29年以降、5年連続で6度の自然災害に見舞われましたが、そのたびに、自衛隊の皆様がいち早く現場に駆け付け、人命救助や物資輸送など、多岐に渡る任務に懸命に取り組まれたたおかげで多くの命が救われました。近年は、全国的に自然災害が頻発化、激甚化し、毎年のように人々の生活や命が脅かされる事態が相次いでおりますが、その現場には、いつも自衛隊の姿があり、各地で身を粉にして救助活動に従事しておられる様子を目にし、深い感銘を覚えます。
さて、世界はいま、パワーバランスの均衡が綻び、国家間の対立構図が鮮明となる異常な状況が生じています。昨年2月に勃発したロシアによるウクライナ侵攻は、国際社会を震撼させ、我々人類が長きに渡り築き上げた国際秩序を根底から揺るがす事態となりまし
た。また、今回の戦争は、銃やミサイルなど火器による攻撃だけでなく、プロパガンダやフェイクニュースでの情報操作、支援国も対象とするサイバー攻撃など、「ハイブリッド戦争」が展開されている点で、これまでの戦争と大きく異なっていると感じております。
一方、我が国の周辺に目を向けると、核・ミサイル能力の開発・強化や急激な軍備増強、あるいは力による一方的な現状変更の試みなどの動きが先鋭化し、一層厳しさを増しております。
このような状況下で、昨年末には新たな防衛3文書が閣議決定され、今後5年間で防衛力を抜本的に強化する施策が打ち出されました。しかし、国の防衛力というのは、決して軍事力だけで強くなれるものではありません。自分の国は自分で守るという意識がしっかりと根付いた健全な社会の発展と、強い経済力の裏付け、国民一人一人の理解と支持があって成り立つものです。
防衛協会会報第161号(5.1.1)掲載
明けましておめでとうございます。皆様におかれましては
ご家族ともどもお健やかに、佳き新年をお迎えのことと、心からお慶びを申し上げます。
新型コロナウイルス感染症による政治・経済・社会への影響も落ち着きを取り戻しつつあり、今年こそ、その終息を切に願っているところです。
一方で、国際社会は、今、戦後最大の試練の時を迎えていると言われています。ロシアによるウクライナ侵略は世界を震撼させ、今もなお罪のない多くの民間人の命を奪っています。
このような力による一方的な現状変更は、武力の行使を禁ずる国際法と国連憲章の深刻な違反であり、欧州のみならず、アジアを含む国際秩序全体の根幹を揺るがしていると考えられま
す。
我が国周辺においても、中国は、尖閣諸島周辺において力を背景とした一方的な現状変更の試みを執拗に継続していますし、北朝鮮はICBM級を含む弾道ミサイル発射を繰り返して挑発を強化している現状で
す。
このように厳しさを増す安全保障環境のもと、我が国は、質・量ともに優れた他国の軍事的脅威に対し、実効的な抑止や対処を可能とするため、真に実効的な防衛力として、「多次元統合防衛力」の構築を目指すとともに、自衛隊は日夜、警戒・監視や訓練等に従事されているところであります。
また、近年、国内では大規模災害が頻発し、自衛隊の災害派遣活動は、その規模や形態を変化させつつ、被災者や国民に寄り添うことで、多くの国民からより一層の信頼を得ています。
私自身も、四国電力株式会社で社長を務めておりました平成26年には、陸自中部方面隊や海自呉地方総監部と電力会社との連携に関する協定の締結に携わり、同年の徳島県大雪害での停電復旧において陸自第14旅団から多大なるご支援をいただいたことで、自衛隊の活動に対する尊敬と感謝の念をより強く抱いたことが思い出されます。
昨年のロシアによるウクライナ侵略をはじめ、益々激動している国内外情勢の中、今こそ我が国の防衛の在り方について、憲法改正を含めた国民議論を活発化させる時ではないでしょうか。香川県防衛協会といたしましても、県所在の陸自第14旅団司令部や香川地方協力本部との連携を密にし、「国土防衛に寄与するため、防衛思想の普及並びに自衛隊の健全な育成発展に協力する」という目的をしっかり果たすため、時代の趨勢に応じた活動を実施したいと考えています。