本文へ移動

次へ
上記、【日本国憲法と自衛隊】は
1冊200円(税込み)で販売しています。
お問合せは、こちら
TEL:03-5579-8348
 
 
【ご協力・協賛】
 全国防衛協会連合会では、当協会の活動の趣旨にご協力・賛同いただける企業様・事業者様を対象に、当協会ホームページのトップページへのバナー広告掲載を募集しています。ホームページをお持ちの企業や事業者の皆様、PRやイメージアップのため、ぜひご検討ください。
 また、4半期に1回発刊の会報紙「防衛協会報」への広告掲載も募集しております。

 詳細は、全国防衛協会連合会事務局にお問い合わせください。
☎03-5579-8348
✉ jim@ajda.jp
2023年11月
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30

防衛時評

令和5年

常任理事(当時) 武内 誠一             防衛協会会報第164号(5.10.1)掲載

 『全ての隊員に光を!』


「どれだけ高度な装備品等を揃えようと、それを運用する人材の確保がままならなければ、防衛力を発揮することはできない。自衛隊員はまさしく防衛力の中核であり、その人材確保は、装備品等の整備と並び、防衛力の抜本的強化を支える車の両輪とも言うべきもの」これは、本年7月に公表された「防衛省・自衛隊の人的基盤の強化に関する有識者検討会報告書」に示された認識です。

その検討の柱は二つ。その一つは、「隊員のライフサイクル全般における活躍の推進」であり、もう一つは、「部外人材も含めた多様な人材の確保」です。この二つは補完的であり、隊員の活躍が推進される施策が機能すれば、有為な人材を多く確保することに繋がります。また、多くの多様な人材が確保されれば、組織内での人事運用に余裕も生まれ、隊員が活動しやすい環境を整えることができます。本稿では、前者に焦点を当てたいと思います。

報告書の中で、「ライフサイクル全般における活躍推進」について、「処遇の向上や生活・勤務環境の改善、育児・介護と仕事の両立支援、キャリア形成支援、再就職支援の充実により将来不安を解消し、自衛官の職業としての魅力を向上する」ことを提案しています。

このうち、「育児・介護と仕事の両立支援」について、更に具体的に以下の点を強調しています。

  • 年齢や性別に関わらず育児や介護を担うことが当たり前となってきている中、全ての隊員が何らかの制約を抱えていることを前提とした人事施策を講じるべきである
  • 隊員が育児休業や休暇の取得をためらわない環境とする施策を講じる必要がある

 「女性活躍推進」を強調するのではなく、全ての隊員を対象として、育児・介護と仕事の両立支援のための施策を講ずべき点に焦点を当てていることは、大いに注目すべきと思います。これまで防衛省・自衛隊が人材確保の面から「女性活躍推進」を掲げ、女性が働きやすい環境を整備してきていることは大いに評価できます。一方で、「女性活躍推進」施策を進める過程で、キャリアアップを目指す女性隊員に注目が集まりメディア等に取り上げられた結果、子供のいない女性隊員やシングルファーザーである男性隊員に対する配慮が不十分だったことは否めません。出産・育児、介護に限らず、病気や障害を持つ家族のケア等色々な課題を抱える隊員全てにしっかりと光が当たり、全ての隊員が居心地よく勤務できる組織であって欲しいと願います。

加えて、隊員が育児・介護等各種休暇やフレックスタイム等の制度をとりやすい環境を整備することも極めて重要です。そのためには、各種制度等を活用したいと思う隊員の上司や同僚の理解が不可欠です。中央では、一定程度理解が進んでいるようですが、地方では、地域社会の理解も十分でないこともあり、上級者の理解もなかなか得られないようです。特に年配者の意識を変えるため、組織を挙げて制度・施策の普及特に意識改革に取り組むことが重要です。誰でも制約なく、気兼ねなく制度を活用できれば、隊員の退職率も減り、また募集にも好影響を与えることになります。

ここで強調したいことは、自衛隊の即応態勢の維持についてです。育児休暇等を取得する隊員を補完するために、育児代替隊員制度(任期付き自衛官の採用)もありますが、予算や要員確保の面から限界もあります。これらの制約に対する一つの方策は、実はより多くの人材を確保するにあると思います。現在、定員と実員の差が1万6千人と報告書に記載がありますが、これだけの人員を確保できれば、出産・育児、介護、病気や障害を持つ家族のケア等のために即応できない隊員を補完し、現在の人員数で期待される即応態勢とほぼ同様の態勢をとることができると思います。即応性を強く意識している自衛隊員だからこそ、出産・育児、介護、あるいは病気や障害を持つ家族のケア等のために即応できない状況になった時、これらの制約を受け入れ、時として退職を考えることになります。そのような隊員をなくし、またより高い即応性を保持できるよう、定員と実員の乖離をなくす努力と、何より多くの人材確保が望まれます。

 防衛協会会員としては、防衛省・自衛隊の実情と各種施策を理解しこれらをより多くの方々にお伝えすること、募集・退職自衛官の雇用(特に即応予備自衛官・予備自衛官)に協力すること、企業内の即応予備自衛官等の勤務環境を整えること、育児・介護等の施設が十分でない地域でのサービス提供、あるいは関連施設・制度等の情報提供等ができればいいと感じております。

(元陸自富士学校長)

TOPへ戻る