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防衛時評

令和4年

常任理事 山下万喜                防衛協会会報第158号(4.7.1)掲載

安全保障に関する
教育施策の充実

国家が危機に直面した時に国民の心構えが如何に重要であるかは、ロシアの侵略を受けたウクライナの状況を見ても明らかである。家族を国外に避難させた後に自らは戦場へと引き返す人、国の行く末を案じ戦場で武器を持たず戦車に立ちはだかる人、世界各国で自国への支援を訴える人、様々な形で自らの国を守ろうとする強い気持ちが伝わってくる。もちろん、報道だけでは何が真実であるかを見極めることは難しい

が、少なくとも国家を思う国民の強い気持ちがなければ、国の存続を危うくする可能性があることに疑念の余地はない。翻って、わが国の現状はどうであろうか?今日、中国による台湾への武力行使の可能性や、北朝鮮の核やミサイル開発など、不安定な安全保障環境による戦禍が現実的なものになる可能性も示唆されている。国の独立を守ると言う安全保障の根幹をなすものは国民の意識であり、国民一人ひとりの意識を確立させるためになくてはならないものが教育である。


 人は生まれながらに完成されたものではなく、この世に生を受けている間は常に何かを学び成長を続けるものである。この成長の過程において重要なことが教育であり、国の定めによる学校教育や、産まれ育った環境により影響を受ける家庭教育、あるいは人の生活環境に根付いた社会教育などその形は様々である。今日の社会風潮として、人間の多様性を広く認め自由を標榜する動きが顕著である。そのためか、日本の教育現場においては多様性の追求と言う名の下に必要な教育が放棄される傾向にありはしないだろうか。一般的に定型化され型にはめ込む教育は非難されて然るべきこともある。だからと言って、本来ならばしっかりと教えなければならないことまでも、自由と言う名を借りて教育しなくてよいことにはならない。 


 これら多様性や自由という点に注目した場合、日本においては伝統や文化に根付く作法や複数世代が同居する家族を中心とした家庭内での躾の崩壊が、自ら果たすべき義務を学ぶ機会の減少を招き教育を受ける環境を悪化させている。さらに、宗教や信仰による心の教育の機会も少なく、感謝の気持ちを表す「お陰様で」を忘れ、誰かの何かを非難して自らの義務を回避する「自分だけ」と言う驕りや妬みが社会に蔓延する傾向にある。社会の一員としての人、人が人として生きていく上で必要な権利と義務、その権利と義務を規範とする社会、その社会を形成する国家など、いずれも個人の自由を確保するために、逆に個人の自由を制限しバランスの中で均衡を保っている。人が自由を求める時、そこには自由の裏返しとして必ず制約がある。この基本的なことを教えず、自由を主張することにより自由が得られると勘違いするような教育を続けているのが、現在の日本の教育の現状ではないかと懸念される。

 

 教育はこれを享受する者への押し付けでその目的を達成することはできない。自分を取り巻くモノに対する畏れや感謝の気持ちは、それを醸成する環境を整えることで気付きの機会を与え、その中で自覚を促すのが最良の方法である。もちろん、ある程度の規範を事前に用意し、自覚を促す手助けをすることを否定しないが、規範だけの押し付けであってはならず、規範の内容を理解させる環境が整っていなくてはならない。つまり、教育はその環境と内容の両者が成立する場合に最大の効果を表すものであり、型にはめ込む教育は実を結び難いものである。そのためか戦後の日本の教育現場においては軍事に関する問題を避け、未だに国民が安全保障に関する教育を忌避する傾向にある。わが国が自国の安全保障に責任を持ち、地域と国際社会の平和と安定に貢献するためには、まずはこのような特殊な教育の環境を変えていく必要がある。視点を変えるならば、国民が安全保障に関心を待ち正しい知識を習得できる環境を構築することが安全保障に関する教育の第一歩であると言えよう。

 

 自衛隊は優秀な人材確保のための募集活動や、健全な組織を育成するための援護活動のため、様々な工夫の中で心を尽くし広報活動を継続している。現在もこの努力を継続しながら、その一方で、国民の安全保障意識の高揚を促している。また、最近の防衛白書を読み解くと、これまでの事実の列挙や考え方の羅列的な記述から、安全保障の重要性を国民に理解してもらうよう工夫していることが窺われる。このような努力は、まさに安全保障に関わる教育の基礎を築くものであり、かかる努力の結果が安全保障に関する国民の関心を高め、教育環境を整えて行くことが期待される。安全保障に関する形式的な押し付けの教育では、嫌悪感のみが残る無残な結末を見ることになる。不安定な国際情勢の中にあっても安定した国民生活が確保されている国家の存在、その根底にある安全保障の現状を国民が理解するためには更なる具体的な方策が必要である。

 

 その一環として、例えば日々生起している安全保障に関する事例を極力具体的に発信すべきであろう。今でも特殊な事案が発生し 特定の統計結果を定期的に発信してはいるが明らかに発信力不足である。米軍と同じとは言わないまでも、日々生起している事案や訓練、演習、あるいは研究開発案件など幅広く日々発信すべきである。さらに、現役の自衛官が教育の現場を訪れる機会を増加させるべきである。退職した自衛官が様々な場に呼ばれ過去の栄光を語る機会はあっても、現役の自衛官が自らの経験に基づき安全保障に関する事項を語る機会は少ない。やはり、退職者と現役との間ではその効果に大きな差がある。現役自衛官には現場に携わる者としての緊張感や責任感があり話を聞く者の心を動かす力強さがある。また、大学のセミナーや講義、あるいは公益の財団等の講話の機会に安全保障の時間が設けられるような枠組みを積極的に設定することも、発信力の強化としては有効かつ効果のある手段だと考える。また、災害対処訓練や危機管理教育の際に安全保障に関わるシンポジュウム等を開催することにより、自然災害のみならず国家間の争いが平素の生活を脅かすことへの危機感を国民に直接伝えることもできると考える。

 

 現時点で日本が安全保障上最も懸念すべきことは、ロシアのウクライナへの侵略が現実に起きたように、中国による台湾への武力行使も決して否定はできないということであろう。中国と台湾の関係を単純にロシアとウクライナに置きかえることはできないが、長期政権が続く独裁者が支配する国家が無謀な行動に出る危険があることを今回の事例は如実に示した。前太平洋艦隊司令官の発言によりこれまでも度々台湾有事が話題になってはいるが、今後は益々その可能性は高まるであろう。もちろん、このことが現実のものとなることを願うものではないが、中国と台湾、その先にある尖閣諸島に絡む中国との武力衝突に備えなければならない現実から目を背けてはならない。


 全国防衛協会連合会では例年防衛問題に関する要望書を作成している。今年度は「国防意識の高揚を図るため各種施策の充実」をその一つに加えることを総会で議決した。学校教育の場はもちろんのことあらゆる機会を通じ国防意識の高揚を図るための各種施策を充実する必要がある。今日の国際情勢を踏まえるならばその中でも特に教育に関する課題は最も優先されるべきである。自国の安全保障に対する国民の自覚を促すため、安全保障に関する教育環境の整備を含む具体的な施策の充実が急務である。

                                     (元海自自衛艦隊司令官)

常任理事 岸川公彦                防衛協会会報第158号(4.4.1)掲載

敵地攻撃能力について

 

1 前言
      政府は、本年末の改定を目途に「国家安全保障戦略」などの3文書  
   の見直しに向け、有識者を交えた懇談などを行いつつ、鋭意検討を行
   っているところです。その背景には、北朝鮮のミサイル開発や中国の
   軍事的脅威など我が国を取り巻く安全保障環境がこれまで以上に厳し
  さを増す中、科学技術の革新的な発展により、戦いの様相も大きく変化
  するなど、これらへの対応が喫緊の課題となっていることが考えられま
  す。  
     このような中、一つの論点となっているのが、いわゆる「敵基地攻 
   撃能力」です。ここでは、この「敵基地攻撃能力」を焦点に、何点か私見を述べてみたいと思います。

2 いわゆる「敵基地攻撃能力」とは?
     これまで国会等における答弁等によれば、「我が国に対し誘導弾等による攻撃が行われた場合、その攻撃を
   防ぐための必要最小限度の措置として、敵の誘導弾の基地等を直接攻撃する能力」と解することができま
   す。政府は、これまで、1956年2月29日に衆議院内閣委員会で船田中防衛庁長官が代読した鳩山一郎首
   相の答弁を根拠として、専守防衛下でも保有出来るとの見解を示している一方、国内世論等を考慮し、その
   能力は保持しないとの立場を維持してきています。

3 弾道ミサイルへの我が国の対応
     1990年代以降、北朝鮮による弾道ミサイルの開発が進む中、我が国に対する弾道ミサイル攻撃などへの
   対応に万全を期すため、2003年に弾道ミサイル防衛(BMD)システムの導入が決定され、イージス艦
   とPACⅢから発射されるミサイルにより、飛来する弾道ミサイルを迎撃するという「防勢的なシステ
   ム」が構築され、これまでその態勢を維持・強化してきました。

4 中国、北朝鮮そしてロシアのミサイル能力
      このような中、中国、北朝鮮そしてロシアは、我が国領土を射程内に収める弾道ミサイル能力の向上に力
   を注でいます。中でも、中国は、我が国を含むインド太平洋地域を射程に収める中距離弾道ミサイルのラン 
   チャーを500基以上保有しているとされており、さらには既に「極超音速ミサイル」も装備化していると
   言われています。そして、これらが中国のいわゆる「接近拒否/領域阻止(A2/AD)能力」の中核を構
   成しているのです。
      なお、「極超音速兵器(ミサイル)」とは、通常の弾道ミサイルが、弾頭部がブースターから切り離され
   た後も弾道飛翔するのとは異なり、弾頭部が、ブースターから切り離された後もマッハ5以上の高速でかつ
   不規則な飛翔をするミサイルのことです。さらに、「極超音速兵器(ミサイル)」には、弾頭部が、推進力
   を有することなくグライダーのように飛翔する「極超音速滑空ミサイル」(HGV)とスクラムジェット・
   エンジンにより飛翔する「極超音速巡航ミサイル」HCM)という2つの種類があり、いずれも現状の我が
   国のミサイル防衛システムでは対処が困難と言われています。
      また、北朝鮮は、昨年9月以来、相次いでミサイルを発射しており、その中には、「極超音速兵器(ミサ
   イル)」の試験発射も含まれていると言われています。さらに、ロシアについても、今回のウクライナ危機
   においても実際に訓練の場で射撃を行ったように、既に装備化しています。
      一方、我が国の同盟国である米国は、かつてロシアとの間で締結していたINF条約の制約により、中距 
    離弾道ミサイルは保有しておらず、特に「極超音速ミサイル」の分野では未だに開発段階にあるのが現状で
    す。
       このように、我が国は、中国、北朝鮮そしてロシアの弾道ミサイルの脅威に対して、極めて脆弱な状態に
    あり、この現状をあらゆる手段をもって速やかに克服することが、我が国の安全保障上喫緊の課題となって
    います。

5 「懲罰的抑止力」としての敵基地攻撃能力の保持
       一般的に弾道ミサイルへの対応を含む防空体制 は、BMDのような防勢的な手段だけでなく、相手の弾 
    道ミサイル及び関連施設などに対するミサイル攻撃など攻勢的な手段をも含めたものです。
    他方、我が国はといえば、BMDに代表される通りもっぱら、防勢的な手段のみの体制となっているのが現 
    状であり、さらに、同盟国である米国も、この種のミサイル攻撃能力については、極めて脆弱な状況にあり 
   ます。まさに、我が国の現状のBMD体制では、万一の我が国に対するミサイル攻撃に対し、十分な対処を 
   することが困難であり、抑止力として極めて不十分な態勢にあると言えます。このような中、我が国に対す
   るミサイル攻撃を抑止するためには、これらに対する反撃能力すなわち「極超音速兵器(ミサイル)」を含
   むスタンド・オフ攻撃能力についても、抑止力の一部として保持することが、極めて現実的な選択だと思い
   ます。

6 克服すべき課題
      このような態勢を構築するためには克服しなければならない多くの課題もあります。
  まず第一に、マッハ5以上のスピードで不規則な飛翔をする極超音速弾道ミサイルとその運用に必要な情報
 の収集、指揮・統制システムの開発は、現行のBMDシステムを大きく超える高度な技術が要求されます。そ
 してこれらは、偵察衛星や通信衛星など宇宙に大きく依存したものとならざるを得ません。さらにこれらのシ
 ステムをサイバー攻撃から防護する能力も当然必要となってきます。このように、敵基地攻撃能力の保持は実
 は我が国の防衛のあり方に大きな影響を及ぼすものであり、まさに我が国の防衛戦略のあり方を検討するプロ
 セスの中で検討されるべきものだと思います。
  そして、何よりも、このような装備を開発するためには国内防衛基盤の強化が喫緊の課題であり、まさに経
 済安全保障の問題でもあると思います。
  このような中、サプライチェーンの確保を主体とした現在の経済安保に関する議論を聞いていて、経済安保
 も「専守防衛の感」が否めない感じがしています。より積極的に我が国の経済力を政治・外交の一貫として、
 如何に防衛の分野にも生かしていくという発想が必要ではないでしょうか。
  米国防総省は近く示す国家防衛戦略で「統合的抑止力」との概念を打ち出す見通しと言われています。陸海
 空の伝統的な軍事力だけでなく、政治・外交力に加え、経済力を含めたあらゆる領域の資源を総動員して複合
 的に抑止力を高めると言った発想が必要なのではないでしょうか。今回のウクライナでの状況を見ていて改め
 て強くそう感じたところです。
7 結言
  以上、「敵基地攻撃能力」を焦点に日頃感じていることを書いてみました。いずれの課題も我が国の平和と 
 安全を確保する上で極めて重要なものばかりだと思いますが、他方で、これらの課題が本質的に我々に問いか 
 けているものは、厳しい安全保障環境の中、引き続き我が国の安心と安全を自らの力で守り抜いていくという
 我々の覚悟と気概ではないでしょうか。決して「敵基地攻撃能力」という新たな装備を導入するというだけの
 問題ではないと思います。
(元陸自中部方面総監)

理事長 金澤博範                  防衛協会会報第157号(4.1.1)掲載

年頭にあたって
 

 中国は、過去30年以上にわたり透明性を欠いたまま継続的に高い水準で国防費を増加させ、核・ミサイル戦力や海上・航空戦力を中心に軍事力の質・量を広範かつ急速に強化しています。

 このような作戦遂行能力の強化に加え、中国は既存の国際秩序と相いれない独自の主張に基づき、東シナ海をはじめとする海空域において力を背景にした一方的な現状変更を試みるとともに軍事活動を拡大・活発化させています。特に海洋における対立する問題をめぐっては、高圧的な対応を継続させており、その中には不測の事態を招きかねない危険な行為も見られま

す。中国はこのような行為を通じて力を背景にして現状変更の既成事実化を実現しようとしています。

 中国指導部は、わが国固有の領土である尖閣諸島に対する「闘争」の実施、「東シナ海防空識別区」の設定及び海・空軍による「常態的な巡行」などを軍の成果として誇示し、今後とも軍の作戦遂行能力の向上に努める旨強調しています。また近年、中国軍が東シナ海や太平洋、日本海といった我が国周辺などでの活動を急速に拡大・活発化させてきたことを踏まえれば、中国はこれまでの活動の常態化を意図しているのみならず質・量両面の更なる活動の拡大・活発化を推進する可能性が高いと思われます。こうした中国軍の動向は中国の国防政策の不透明さと相まって我が国を含む地域と国際社会の重大な懸念事項となっています。

 北朝鮮はこれまで6回の核実験を実施したほか、近年、前例のない頻度で弾道ミサイルの発射を繰り返すなど、大量破壊兵器や弾道ミサイル開発の推進とその運用能力の向上を図ってきています。核兵器についてはすでに小型化、弾頭化に成功し、核ミサイルを我が国に投射する能力を保有しているとみられます。

 また北朝鮮は非対称的な軍事能力としてサイバー領域についての大規模な部隊を保持するとともに、軍事機密情報の窃取や他国の重要インフラへの攻撃能力の開発を行っているとみられるほか、大規模な特殊部隊を保持しています。

 加えて北朝鮮はわが国を含む関係国に対し挑発的な言動を繰り返してきており、こうした北朝鮮の動向は、我が国の安全に対する重大かつ差し迫った脅威であり、地域及び国際社会の平和と安全を著しく損なうものです。

 ロシアは、国際的地位の確保と核戦力における米国とのバランスをとるため、並びに通常戦力における劣勢を補うため核戦力を重視しており、その一部は我が国周辺の極東地域に配備されています。

 我が国固有の領土である北方領土において、ロシアは旧ソ連時代から地上軍部隊を配備しています。その規模はピーク時に比べ縮小しているとはいえ、現在でも1個師団規模の戦力を配備しており、2016年には択捉島及び国後島に地対艦ミサイルを配備し2020年には地対空ミサイルシステムを配備するなどその更新近代化に努めています。また従来から所在していた択捉島の天寧軍用飛行場に加え、2014年に開港した新民間空港を軍民共用としてここに新鋭戦闘機を配備しています。

 軍事面でのロシアと中国の関係を見ると近年両国は緊密の度を加えています。 

2015年にロシア製の新鋭地対空ミサイルや新鋭戦闘機の輸出契約を締結したほか、運用面でも関係を深めています。最近では2019年以降3年続けて両国の爆撃機が日本海、東シナ海及び太平洋で共同飛行を実施し、2021年には両国の海軍艦艇が大隅海峡を共同して通峡するなど我が国に対する示威行動とも受け取れる活動をしました。

 米国のトランプ前政権は安全保障及び国防の基本方針を明らかにした文書において、中国及びロシアを修正主義勢力と位置づけ、両国との戦略的競争を重視する姿勢を明らかにしてきました。トランプ政権は特に中国を抑止するためとし

て、インド太平洋地域の安全保障を最重視し、この地域に前方展開の軍事プレゼンスを維持し、米艦艇による南シナ海における「航行の自由作戦」や台湾海峡の通峡を繰り返し実施したほか、軍事転用の恐れがある技術分野の競争力確保や技術窃取の防止のための措置を強化するなど、対中抑止の姿勢を強化してきました。

 2021年1月にトランプ政権を引き継いだバイデン政権は、3月に発表した「国家安全保障戦略暫定指針」において、インド太平洋地域と欧州地域における米軍のプレゼンスを最重要視する方針を明らかにしています。中国については、安定し開かれた国際システムに対して持続的に挑戦する能力を秘めた唯一の競争相手と位置づけ、長期的に対抗していく考えを示しています。そして中国への対応に当たっては、強い立場を基盤とした取組みを重視し、国内の経済基盤の強化、国際機関における主導的な地位の回復、民主主義的価値観の国内外での擁護、軍事力の近代化、同盟関係などの再活性化により、米国の優位性を再構築し中国との戦略的な競争に勝利するとしています。

 その一環として、2021年9月ワシントンにおいて、バイデン米大統領、我が国の菅首相、モリソン豪首相及びモディ印首相によって日米豪印4か国会議(クアッド)が開かれました。この会議は対中戦略を念頭に設置されたもので今後毎年定例的に開催されることになっています。中国の膨張主義的行動に効果的に対応するためには関係国が歩調を揃えることが重要です。その意味でクアッドの果たす役割は今後大きくなると予想されます。本年のクアッドは日本で開催されます。 
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