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防衛時評

防衛時評

常任理事 小川 清史

                             防衛協会会報146号(31.4.1)掲載
 
          命令について
 
 自衛隊勤務の間「自衛隊の指揮・命令とは何だろう」という問いが、常に私から離れることはありませんでした。福沢諭吉の言葉を借りると「天は、人の上に人を作らず、人の下に人を作らず」のとおり、人は生まれるときには、境遇の違いはあれども、平等に生まれるということです。
 一方、自衛隊では、階級があり指揮官が存在し、部下が存在し、そこは指揮関係で律せらせており、部下は指揮官の命令に従う義務があります。平等な人間同士の間で、命令しなければならないこの組織は一体どういうことだろう。指揮官になったら、本当に部下に命令をしていいのだろうか。小隊長、中隊長、連隊長、師団長等の指揮官として勤務する機会に恵まれましたが、その際には、先ほどの疑問が常に頭の中にありました。
【小隊長勤務の20代】
 松本駐屯地勤務当時、日航機の御巣鷹山墜落事故があり、災害派遣現場で小隊を指揮しました。また、レンジャーの主任教官として要員養成教育にも従事しました。とにかく与えられた任務を遂行するために、いずれも過酷なことを部下に命令してしまった、という思いが今でもあります。
【中隊長勤務の30代】
 伊丹駐屯地勤務当時、阪神淡路大震災が発生し、100日にわたる人命救助活動では、過酷な任務を部下に課したという思いがあります。災害派遣の終了後は、頑張った隊員を休ませたいという思いと、中隊機能を回復させるため、災害派遣期間中に出来なかった各種訓練を早い段階で行わなければならないという思いとが、交錯していました。このときは、士気が高い内に中隊訓練を再開することを優先し、休暇は数カ月かけて交替でとることにしました。
このように、20代から30代は、義務感を優先して命令を出していたことを思い出します。
【連隊長勤務の40代、師団長勤務の50代】
 様々な勤務を経て、また、国の仕組みや機能についての理解も進み、指揮官としてのスキルも向上してきたと思います。そして、その頃には、義務感による命令よりも、妥当で正しい命令を下すべきとの考えに進化していました。
自衛隊においても、民主主義の理念は常に貫徹されています。指揮官といえども、人が人に対して、自由に命令してよいわけではないのです。自衛隊法等、その他訓令等の根拠によって、指揮官は命令する権限を付与されているのです。指揮官の行動の底流には民主主義の理念があり、その理念を土台として権限を与えられて命令することができるのです。それは、人が人に対して命令するという、本来はあまり好ましくないことを、権限を与えられて行うということです。ということは、指揮官は権限に基づき、徹底的に正しい指揮命令をしなければなりません。与えられた指揮命令の権限からはみ出してはならないのです。山本七平氏の述懐によると、旧軍指揮官には私的な命令、例えば「大隊長のタバコを購入してこい」と正式に大隊命令を出した指揮官もいたそうで、これこそ権限外の私的命令です。
また、権限を行使するにあたり、同時に指揮官には責任が発生します。部下が命令を遂行できないような状況になれば、指揮官は責任をもって、部下が任務を遂行できるように環境を整え、成功に導かなければなりません。また、部下に厳しい任務を命ずる以上、それに相応しい態度振る舞いも必要だと思います。(これは正しい命令を出す以上の努力と自己修練を必要とします)
 こうして今振り返ってみますと、軍事組織の指揮官を育成するためには、かなりの年月を必要とします。組織的な教育と自己修練の両方を、車の両輪のごとく推進していく必要があるのです。こうした人材育成も含めて、自衛隊で、命令を出し部隊を動かし、任務を遂行するためには、訓練等の多大な努力が必要です。しかし、こうした運用の下地となる話は表面化し難いかもしれません。世の中に伝わるのはPKOや災害派遣等の各種活動として、表立って見える部分です。
 スポーツでも試合だけで強くなるわけではなく、場合によっては弱くなることもあります。やはり基盤となる練習こそが、強くなるためには必要でしょう。自衛隊も、目に見える活動で成功するためには地道な訓練は欠かせません。
 こうした自衛隊の実情にご理解を頂いております防衛協会の皆様の常日頃の「防衛意識の高揚」と「自衛隊への支援・協力」の御尽力に改めまして深く感謝いたします。今後とも、宜しくお願い致します。
                                  (元西部方面総監陸将)

新春『防衛時評』

副会長兼理事長 金澤 博範

                    防衛協会会報145号(31.1.1)掲載
 
           「年頭にあたって」
 
中国の公表国防費はこの30年間毎年急速なペースで増加しており、その規模は1989年度から30年間で51倍、2008年度から10年間で2.7倍となっています。これによって中国は核戦力から通常戦力にわたる各般の軍事力の増強近代化に取り組み、今や世界有数の軍事大国に成長しています。
 核戦力及びミサイル戦力については、射程1500㎞の短距離弾道ミサイルから射程13000㎞に及ぶ大陸間弾道ミサイルまでの各種類、各射程のミサイルを保有配備しています。この中には我が国全域を含む東アジア地域を射程とするDF―3A、DF―26といった中距離弾道ミサイルも含まれています。これらミサイルには固体燃料推進方式で車両に搭載され、秘匿性即応性に優れたものも含まれています。
海上戦力については、国産の近代的な潜水艦、駆逐艦の開発配備を進め、大型の揚陸艦や補給艦の増強を進めています。空母については、「遼寧」が2018年僚艦とともに太平洋に進出し、艦載戦闘機の活動を含む対抗訓練を行いました。「遼寧」はウクライナから輸入したものを改造したものですが、中国は国産空母の開発も進めており1番艦が2017年に進水し2018年に海上試験を実施しました。中国は国産2番艦の開発も進めておりこの空母には、電磁式カタパルトが装備されると言われています。
航空戦力についても中国は増強近代化に努めており、戦闘機、爆撃機、早期警戒管制機、輸送機など各種多様な軍用機を自国で開発、生産、配備するようになっています。
海空戦力の増強に伴って、その活動も活発化しています。例えば2018年には尖閣諸島周辺の接続水域にフリゲート艦及び潜水艦が入域するなど活動をエスカレートさせています。また、我が国の先島諸島海空域を通過しての海軍艦艇及び軍用機の太平洋への進出も高い頻度で継続しています。
このような海上戦力及び航空戦力の動向は中国が自国の沿岸防衛、防空のみならず、より遠隔地に戦力を投射する能力の獲得を目指していることを示しています。
また中国は南沙諸島にある7つの場所において、急速かつ大規模な埋め立て活動を強行し、砲台などの軍事施設の整備を行い、軍事拠点化を推進しているほか、西沙諸島においても爆撃機の離発着訓練を行うなど軍事力を背景にした現状変更と既成事実化を行っています。
 中国のこれらの行動は、透明性の不足と相まって、我が国を含む国際社会の安全保障上の強い懸念となっています。  
北朝鮮は2006年に初めて核実験を実施しこれまで合計6回の核実験を行っています。特に2017年の第6回目の実験は推定される出力が広島原爆の10倍に及ぶもので、北朝鮮はこれを水爆の実験であったと主張しています。また、米ソや英仏の核開発においては、最初の核実験から数年で核兵器の小型化に成功していますから、北朝鮮の最初の核実験から10年以上経過した現在では、北朝鮮が弾道ミサイルに搭載可能な核兵器の小型化を達成している可能性は大いにあると見なければなりません。
 北朝鮮は核開発と並行して弾道ミサイルの開発にも取り組んでおり、2016年以降だけでも40発もの弾道ミサイルを発射しました。そのうち2017年に発射した17発のうち少なくとも3発は射程が5000㎞以上に及ぶICBMであったと見られています。
金正恩委員長は、2018年の「新年の辞」で南北対話に積極的な姿勢を示し、その後行われた南北首脳会談で非核化への意思を述べました。引き続いて行われた米朝首脳会談では、北朝鮮が朝鮮半島の完全な非核化に向け取り組むことなどにコミットすることなどを表明した上で、引き続き米朝間で交渉を行っていくことが確認されました。金委員長が、朝鮮半島の完全な非核化に向けた意思を文書の形で約束した意義は大きいものです。しかし、現在のところは北朝鮮が多数の弾道ミサイルと核兵器を保有しその運用能力を高めていることに変わりはありません。今後、完全かつ検証可能で不可逆的な方法による北朝鮮の大量破壊兵器及び弾道ミサイルの廃棄が実現するよう国際社会が結束して対応していくことが肝要です。
 最近トランプ政権はINF条約(中距離核戦力全廃条約)の廃棄を表明しました。これは1980年代後半に米ソ間で締結された条約で、地上から発射される射程500~5500㎞の弾道ミサイル及び巡航ミサイルをすべて廃棄するとともにその生産、実験も禁止するものです。その締結の背景には1970年代からソ連が欧州正面に配備した「SS―20 」と呼ばれる射程5000㎞で命中精度に優れた中距離弾道ミサイルの存在がありました。「米国には届かないが欧州には届く」という性質が米国とNATOとの間の拡大抑止の信頼性に大きな疑問を投げかけることとなりました。つまり米本土に届かないソ連のINFで欧州が攻撃された場合、米国は自国本土が攻撃されるリスクを冒してまで欧州の安全保障にコミットしてくれるのかという不安を欧州諸国に抱かせることとなったわけです。この意味でSS―20の配備は米国と欧州諸国とを分断(decoupling)する効果をもちました。
 上述したように中国と北朝鮮の弾道ミサイルの射程内に位置する我が国の置かれた状況は、SS―20が配備された当時の欧州諸国と似た状況にあるとも言えます。中国も北朝鮮もINF条約の締約国ではありませんからこの条約の制限を受けることはありません。INF条約締結に至る歴史的経緯を振り返ると、トランプ政権のINF条約離脱の動向は我が国の安全保障にも将来大きな影響を与える可能性があることに留意しておくことが必要です。
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