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防衛時評

令和7年

常任理事 小川 清史                防衛協会会報第172号(7.10.1)掲載

ファクトチェック

 御巣鷹山の日航機123便墜落事故から40年が経過しました。航空機事故の再発防止を願い事故の事実を風化させないように様々な活動が行われています。その一方で、自衛隊が日航機をミサイルで墜落させ、事故現場ではその証拠を隠滅するべく自衛官が火炎放射器で現場一帯を焼き尽くしたと主張する方々がいます。当時、事故現場で活動した小職も、そうした「自衛隊による日航機撃墜と証拠隠滅」というフェイクニュースに対してファクトチェック活動をしています。

 この原稿を書いているのは8月ですが、またも新たなフェイクニュースが報道されました。「陸上自衛隊宮古島駐屯地司令が、8月6日、自衛隊の訓練に対して抗議活動をしていた市民に『許可を取ってからやって下さい』と恫喝的な態度で詰め寄ったとの8月8日の琉球新報の報道です。同紙は更に「動画を撮影した市民によると『拡声器で激しく抗議したわけではない。きれいな朝日に迷彩服は似合わないと語りかけたら、司令が飛んできた』、『体を鍛えた自衛官が自分の意に添わないからと恫喝、威嚇するような態度を取ったことに自衛隊の本質を垣間見た』と話した」と述べています。そして、同紙は「県宮古土木事務所によると、今回の訓練で同駐屯地からの使用許可申請は、口頭でも文書でも出されていなかった。(中略)特に使用許可の申請は必要ないとしている」と述べている。

 市民とは同紙によれば市民団体「ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会」の共同代表2名のことです。市民団体は「海の駅」駐車場で、訓練休憩中の隊員に拡声器で語りかけたとのことです。しかし、語りかけるのに拡声器が必要でしょうか。夜通しかけて35kmを徒歩行進した隊員が駐車場に到着したのは朝の6時過ぎです。拡声器を使用した抗議活動は周辺住民からすれば極めて迷惑な行為ではないでしょうか。自衛隊は公道を使用して集団訓練を行うので、警察等にその訓練内容を届け出て許可を受けます。道の駅の一般的な駐車場使用は、高速道路でパーキングを使用するのと同様で許可申請は全く不要です。これに対して拡声器による抗議活動は駐車場の使用許可は不要でも、公共の治安維持の観点から早朝の拡声器使用は警察に届け出ることが必要であると思えます。

 琉球新報の報道を受けて、ヤフーニュース、共同による配信後に大手の新聞や地方紙が一斉にネット報道をしました。そのうちの数社は駐車場における許可申請は必要ないのに、申請を取るように宮古島駐屯地司令が恫喝的な態度で詰め寄ったと報道しています。司令は、駐車場の許可を取るようにとは言っておらず、「手続きをしてから抗議活動をして下さい」と述べています。

 宮古島駐屯地司令の比嘉1等陸佐は、沖縄出身の防衛大学校第43期卒業生です。陸上幕僚監部防衛部防衛課に複数回勤務、第15旅団司令部(那覇駐屯地)及び沖縄地方協力本部での勤務など、防衛行政と沖縄での勤務経験が豊富で人望も厚い将来を嘱望された人材です。今回の偏った報道によってその評価が下がることは阻止しなければなりません。そうでなければ反対する団体によって同種事案が繰り返されることとなるでしょう。

 今回行われた訓練は第15旅団に配置された16名の新隊員に対する後期教育の一つです。行進訓練は同教育の集大成ともいえる35km徒歩行進後半の駐車場での休止中のできごとです。自衛隊に入隊して最も過酷な夜間の徒歩行進訓練を終えて自信に満ちて休憩しているところへ、自衛隊を否定する拡声器による妨害行為です。その隊員の体と心の健康を守るべき指揮官がとった行動について、報道は一方的な内容に終始しています。

 宮古島駐屯地が2019年3月に開設されてから6年が経過します。翌2020年には高射中隊が移駐し地対艦ミサイル中隊が新編され、2023年に業務隊が新編、2024年に駐屯する部隊改組など、2025年には電子戦部隊配備など、南西諸島防衛の一翼を担う駐屯地として充実してきました。駐屯地創立の記念行事では宮古島市長も参列され祝辞を述べられています。また多くの宮古島市民が記念行事に参加し市民からも温かく迎えられてきました。その一方で記念行事にあわせた駐屯地周辺での当該市民団体による抗議行動があり、また平素からは継続的な反対活動が行われています。

 自衛隊は、いかなる表現であろうともその表現の自由は守ります。宮古島駐屯地司令は、手続きをしてから堂々と抗議をしてくださいとの申し出であり表現の自由を封殺はしていません。報道では理不尽なことを威圧的に司令が発言しているような内容となっており、認知戦ともいえます。報道機関には事実をニュートラルに捉えた内容を報道していただきたいと思います。今後とも、偏向報道や事実を意図的に隠した報道に対して、ファクトチェックをしていきたいと思います。

 個人の自由や権利が守られる健全な秩序のある日本を守るため、正しい防衛意識を高揚すべく防衛協会会員とともに努力していく所存です。

(元陸自西部方面総監)

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